その昔、アルバイトの時給が650円とかそこいらだった時代。
LPレコードを買おうと思ったら4時間以上の労働による汗と涙の結晶との対価交換となるわけでして、そりゃあもう真剣勝負でした。
でも、その分考えに考え抜いて吟味して買っているのでハズレの確率は低く、レコードの溝がすり減る位に聴き込みました。
CDが普及してくるとバブル景気もあって懐事情にも余裕が出てきて、結構CD購入時の品定めが雑になってしまいました。
買ってはみたものの、自分の琴線に触れる曲が1曲も無かったなんてことも起き始めました。
期待の大きかったアルバムがハズレた時の落胆度合いといったら、もはや奈落の底に突き落とされたような落ち込み様でしたね。
またやってしまった...。
もうB誌のあいつのレビューは絶対に信じない...。
とか八つ当たりしたりして。
今回ご紹介する 「Von Groove」なるバンド。
いかなる経緯で購入したかは覚えていませんが、今となっては「おいおい、これを買っているとはかなりのチャレンジャーだねえー!」と今更自分にハラハラしてしまう位のマイナーバンド。
でも、時には今回ご紹介するような一生忘れることの無い琴線鷲掴みされたような名曲に出会えるというのも、この音楽(HR/HM)を聴き続けている大きな理由の一つです。
Von Groove / House of Dreams どんな曲?
ベースがビンビンに響くメロディアス・ハードロックアルバム
カナダのトロント出身のメロディアスハードバンド 「Von Groove」。
1992年リリースのデビューアルバムに収録されているのが本曲「House of Dreams」です。
バンドはトリオ編成でボーカルがドラムを兼任してレコーディングされています。
サウンドは軽めながらエッジの効いた演奏を聴かせるメロディアス・ハードロックバンドで、演奏技術の高さが窺い知れます。
特徴的なのはベースがかなり前面にでてきてグルーブ感をアピールしまくってくることでしょうか。
トリオ編成バンドにありがち?、まさかバンド名を意識しての安直なミキシングじゃないですよね。
とにかくベースラインがここまではっきり聴こえるのは珍しいのでベース好きの人には絶対におすすめのアルバムです。
平均点楽曲群の中で突出したクオリティを誇る「名曲」
同じカナダ出身ということでハーレム・スキャーレムと近い匂いがしますが、こちらは少し湿度が低め。
どちらかと言うと爽快になり切れないアメリカンとい感じで、少し中途半端な音楽性というのが正直な印象です。
収録曲どれもが平均点以上の安定感と完成度を有しており、ボーカルもそこそこ器用な歌い回しで安心して聴けるハードロックという評価が得られそう。
しかしながら、それは悪く言ってしまうと似たり寄ったりの楽曲が並ぶインパクトに欠ける凡庸なアルバムという評価に陥る危険性も十分に孕んでいることを意味します。
器用貧乏とは良く言ったもので、文字通りデビューアルバムにしてはあまりにそつなく、隙もなく、フレッシュ感もなく、という既に課長の貫録を醸し出している新入社員といった雰囲気。
ドキドキもしなければ感動もしないという損なポジショニングに立たされてしまっている感じです。
そんな悪い予感が脳裏をよぎりながらも聴き進めること5曲目。
おっ!なかなか良い感じじゃないの?って感じでだんだん盛り上がってきた続く「6曲目」。
ガツンと脳天に落ちてきました。名曲隕石が...。
これは凄い、凄い曲が出てきました。
明らかにこの曲は他のどの曲よりも次元が違い過ぎます。
完璧です。
涙が出そうです。
全ての哀愁メロディアス・ハードロックファンに捧げる名曲です。
バンドメンバー
- ヴォーカル: マイケル・ショットン(兼ドラム)
- ギター : ムラデン
- ベース : マシュー・ジェラード(兼キーボード)
楽曲レビュー

デビューアルバムにしては既にベテランのような落ち着き払った隙の無い演奏を聴かせる職人バンド Von Groove。
平均以上でも以下でもない凡庸なアルバムなのかと不安が脳裏をよぎり始めたアルバム6曲目に突然やってきたのが本曲。
哀愁メロディアス・ハードロック史上に永遠に刻まれる名曲「House of Dream」。
フェードインのアコスティックからエッジを効かせながら適度に歪ませたリフ、名曲の予感しかしないヴォーカルの抑えた歌い出し。
「これは貰ったーっ!」と思わず叫びたくなるような完璧な展開。
サビ前の泣きメロの盛り上げ感も申し分なく一気に持っていかれます。
この手のバンドにありがちなぶ厚めコーラスのおっかぶせではなく、あくまで熱いヴォーカルで勝負したのが大正解!。
元々のメロディラインによる叙情性が更に熱いボーカルで増幅され、涙なしでは聴けない位の哀愁を帯びた楽曲展開となっています。
そして忘れてはいけないのがベース。
ここでもボンボン、ベンベンとこれでもかと言わんばかりのグルーブ感で攻めてきます。
なにはともあれ、この名曲に出会えたことに感謝。
この1曲のためだけでも十分に買う価値のあったアルバムだったと確信しています。