THE JAM / SETTING SONS パンクの域を超越したスタイリッシュ英国ロック

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スタイリッシュ・パンクバンド「THE JAM」のアルバムの中でも一番好きなアルバム「SETTING SONS」を今回はレビューさせて頂きます。

負傷した兵の両脇を二人の兵士が支える彫刻のインパクトが強烈過ぎるジャケットデザインがたまりません。

 

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THE JAM / SETTING SONS レビュー

個人的にはTHE JAMの最高傑作

1979年にリリースされたTHE JAMの4枚目のアルバム。

THE JAMは既にパンクロックのムーブメントが最高潮に達していたとも言える1977年に、ヴォーカル兼ギターのポール・ウェラーを中心に結成された3人組のバンドです。

当時のロックシーンではセックス・ピストルズ、ザ・クラッシュ、ザ・ストラングラーズ、ザ・ダムドといった名だたるパンクバンドが席捲している状態でした。

そんな中で、THE JAMはモッズスタイルのいで立ち、THE WHOを思わせる音楽性という、他のパンクバンドとは一線を画す雰囲気で異彩を放っていました。

デビュー以降、バンドの音楽性はアルバムをリリースしていく毎に変遷を遂げていきます。

奇才ポール・ウェラーの音楽センスがアルバムをリリースする度に如実に顕在化してくる過程を見る(聴く)ことができて興味深いですね。

そして、THE JAMとして発表された計6枚のアルバムの中で、私の一番のお気に入りが本作「SETTING SONS」です。

 

パンクの域など軽く超越したスタイリッシュな英国ロック

本作で体感できるのは研ぎ澄まされたような切れ味鋭い緊張感と、どこか朴訥とした望郷感のような相反する不思議な感覚。

バンドとしての円熟味を感じる楽曲の完成度、演奏、サウンドメイクの安定感は、もはやパンクの域を完全に超越し洗練された境地に達しています。

当時のスタイリッシュなブリティッシュ・ロックの生々しい息吹きを、モロにすっぴん状態で体感できるアルバムかなぁ~と思います。

私が個人的に THE JAM に惹かれる最も大きな要因は、ポール・ウェラーのヴォーカルです。

あくまで個人的な意見ですが、ASIAのジョン・ウェットンと同じ匂いのする声質と歌唱法に感じ、とにかく好み。

ただただ格好良いです。

そして、シンプルでキャッチーながらも、時にメロディアスかつ哀愁をも漂わせるギターフレーズも、ポール・ウェラーの音楽的才能、センスが垣間見える瞬間ですね。

THE JAMの突然の解散後、ポール・ウェラーはスタイル・カウンシルを結成。

文字通り、より洗練されてスタイリッシュな世界観、音楽性でファン層の支持を広げていきます。

当時のロックシーンの環境下で、若干21歳の若者が生み出した作品としては、本作は素直に評価されてしかるべきブリティッシュロックの超名盤と言えるのではないでしょうか。

 

メンバー・収録曲

バンドメンバー

  • ヴォーカル: ポール・ウェラー(兼ギター)
  • ベース  : ブルース・フォクストン
  • ドラム  : リック・バックラー

 

収録曲

  1. Girl on the Phone – 2:55
  2. Thick as Thieves – 3:39
  3. Private Hell – 3:50
  4. Little Boy Soldiers – 3:36
  5. Wasteland – 2:51
  6. Burning Sky – 3:32
  7. Smithers-Jones (Bruce Foxton) – 2:59
  8. Saturday’s Kids – 2:53
  9. The Eton Rifles – 3:58
  10. Heat Wave – 2:24

 

おすすめ楽曲

Girl on the Phone

一切の無駄な装飾を排除した至極シンプルなカッティング主体のギターが清々しいですね。

そしてトリオ編成ならではのベースの存在感あるプレイが何とも心地良いです。

多くのバンドでベースと言えば、意識して耳を凝らさないと判らないようなことさえありますが。

これだけまさに演奏の軸として主張してこられると、思わずベースもやってみたくなっちゃいますね~。

いやー渋い、渋過ぎます。

THE JAMの楽曲はパンクにありがちな一本調子の単調なものでなく、曲中で様々なアレンジメロディが絶妙に展開されながら捻りが効かせてあるのが魅力。

曲構成でもリスナーを全然飽きさせない工夫を感じますね。

 

Thick as Thieves

ライブで最高に映えそうなポテンシャルを感じさせるアップテンポで軽快な楽曲です。

バッキングヴォーカルと掛け合いしながらじわじわと盛り上げていく曲展開は、リスナーに息つく暇を与えません。

気を付けないと思わず聴いてるこちらが過呼吸に陥りそうです。

進軍を始めたらもう誰にもその勢いを止めらない兵士の行進のように、沸点にまで達した高いテンションを維持したまま独特の緊張感で最後まで一気に突っ走ります。

 

Private Hell

続く3曲目も、切れ味あるスピーディ&ドラマティックな名曲。

個人的には本作の中で一番のお気に入り曲です。

これぞトリオ編成のブリティッシュロックの真骨頂ともいうべき、グルーブしまくるベースライン。

鋭利な刃物のような攻撃的なカッティングギターとポール・ウェラーの「情感をあえて押し殺したような凄みのあるヴォーカル」が冴えわたります。

 

The Eton Rifles

この時代、当然ながらLP盤でのリスニングですので、どうしてもレコードをひっくり返すのが億劫でB面の収録曲は不利でしたね。

なので、お気に入り曲がA面に集中しがちとなってしまいますが、B面からも1曲チョイスしておきましょう。

この曲はシングルカットもされたキャッチーなサビメロが印象に残る楽曲です。

これまたベースのリフメロディが忙しく駆けずり回り、ギターとキーボードも時折パンク色を滲ませる曲展開となっています。

 

まとめ

私は兄の影響で幼い頃から自身のリアルタイム以前のブリテッシュ・ハードロックやパンク、プログレ、ディスコ等々色々なジャンルの洋楽に自然に触れられる環境に恵まれていました。

様々なジャンルの音楽を意図せず無意識の内に耳にしながら、やがて自身の好むジャンルが次第に固まってきたのだと思います。

今でも当時兄が好んで聴いていたバンドの楽曲は耳にこびりついており、ジャンルを超えた思い入れみたいなものを感じます。

特にこのアルバムにおけるポール・ウェラーのヴォーカル、ブルース・フォクストンのベースプレイは、後々の私の音楽の嗜好に思いっきり影響を与えているように思えてなりません。

上手く言えませんが、自然体で格好つけてない格好良さ風に見せる格好つけ(?)みたいな、他のパンクバンドには無いずる賢さが THE JAM にはあったように思えます。

 

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