90年代ハードロック アルバムを代表するおすすめ楽曲?選

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このブログを始めたきっかけは、苦節45年以上に渡りHR/HMアルバムを愛聴してきた私の体感を、これから聴き始める方々に少しでも役立ててもらえればという思いからです。

自称「軟弱メロディアス・ハードロック愛好会会長」の私の積年の音源コレクションを聴き直しながら、独断と偏見でおすすめする作品を基本的に「アルバム単位」でレビューしています。

昭和の昔と違って、現在は音楽サブスクの利用でその気になれば大抵の楽曲をいつでも自由に聴くことの出来る時代。

まさに濡れ手に粟状態でどんな音源にも気軽にアプローチできる反面、新旧合わせた気の遠くなるような数の音源から自分好みのバンドやアルバム、楽曲を掘り出すのも大変だと思います。

そこでこの記事では、HR/HMがまだまだ勢いのあった「90年代」の作品の中から、アルバム全体としておすすめというわけではないものの「一際光る一曲」「この曲だけはおさえておくべき」という楽曲を特集してみました。

メジャーで輝けずに散ったマイナーなバンドも登場してくることになると思いますが、当時の息吹きを体感していただき少しでも参考にしていただたらと思います。

(記載はあくまでも順不同なのでランキングではありません、また随時追記しながら更新していきますので、たま~に立ち寄って覗いて頂けると嬉しいです!)

 

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Von Groove / House of Dreams

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昔は新譜購入も真剣勝負でしたね…

その昔、アルバイトの時給が650円とかそこいらだった時代。

LPレコードを買おうと思ったらそりゃあもう悩みに悩んでの真剣勝負でした。

一旦購入したらレコードの溝がすり減る位に聴き込みましたね~。

いくらどんな駄作であっても、自身の選択眼の「負け」を簡単に認める訳にはいかず無理やりでも好きになるために…。

CDが普及してくるとバブル景気もあって懐事情にも余裕が出てきて、結構CD購入時の品定めが雑になってしまいました。

買ってはみたものの、自分の琴線に触れる曲が1曲も無かったなんてことも起き始めました。

期待の大きかったアルバムがハズレた時の落胆度合いといったら、もはや奈落の底に突き落とされたような落ち込み様でしたね~。

「またやってしまった…。」

「もうB誌のあいつのレビューは絶対に信じない…。」

とか八つ当たりしたりして…。

今回ご紹介する 「Von Groove」なるバンド。

いかなる経緯で購入したかは覚えていませんが「おいおい、これを買っているとはかなりのチャレンジャーだねえー!」と今更になって自分にハラハラしてしまう位のマイナーバンド。

でも、時には今回ご紹介するような一生忘れることの無い琴線鷲掴みされたような名曲に出会えるというのも、この音楽(HR/HM)を聴き続けている大きな理由の一つです。

 

ベースがビンビンに響くメロディアス・ハードロックアルバム

カナダのトロント出身のメロディアスハードバンド 「Von Groove」。

1992年リリースのデビューアルバムに収録されているのが本曲「House of Dreams」です。

バンドはトリオ編成でボーカルがドラムを兼任してレコーディングされています。

サウンドは軽めながらエッジの効いた演奏を聴かせるメロディアス・ハードロックバンドで、演奏技術の高さが窺い知れます。

特徴的なのはベースがかなり前面にでてきてグルーブ感をアピールしまくってくることでしょうか。

トリオ編成バンドにありがち?、まさかバンド名を意識しての安直なミキシングじゃないですよね。

とにかくベースラインがここまではっきり聴こえるのは珍しいのでベース好きの人には絶対におすすめのアルバムです。

 

突出したクオリティを誇る「名曲」

同じカナダ出身ということでハーレム・スキャーレムと近い匂いがしますが、こちらは少し湿度が低め。

どちらかと言うと爽快になり切れないアメリカンとい感じで、少し中途半端な音楽性というのが正直な印象です。

収録曲どれもが平均点以上の安定感と完成度を有しており、ヴォーカルもそこそこ器用な歌い回しで安心して聴けるハードロックという評価が得られそう。

しかしながら、それは悪く言ってしまうと似たり寄ったりの楽曲が並ぶインパクトに欠ける凡庸なアルバムという評価に陥る危険性も十分に孕んでいることを意味します。

器用貧乏とは良く言ったもので、文字通りデビューアルバムにしてはあまりにそつなく、隙もなく、フレッシュ感もなく、という既に課長の貫録を醸し出している新入社員といった雰囲気。

ドキドキもしなければ感動もしないという損なポジショニングに立たされてしまっている感じです。

そんな悪い予感が脳裏をよぎりながらも聴き進めること5曲目。

おっ!なかなか良い感じじゃないの?って感じでだんだん盛り上がってきた続く「6曲目」。

ガツンと脳天に落ちてきました。名曲隕石が...。

こ、これは凄い、凄い曲が出てきました。

明らかにこの曲は他のどの曲よりも次元が違い過ぎます。

完璧です。

涙が出そうです。

全ての哀愁メロディアス・ハードロックファンに捧げる名曲です。

 

メンバー

  • ヴォーカル: マイケル・ショットン(兼ドラム)
  • ギター  : ムラデン
  • ベース  : マシュー・ジェラード(兼キーボード)

 

楽曲レビュー

デビューアルバムにしては既にベテランのような落ち着き払った隙の無い演奏を聴かせる職人バンド Von Groove。

平均以上でも以下でもないありがちな凡庸アルバムなのかと不安が脳裏をよぎり始めたアルバム6曲目。

個人的には哀愁メロディアス・ハードロック史上に永遠に刻まれて欲しい位の名曲「House of Dream」。

フェードインのアコスティックからエッジを効かせながら適度に歪ませたリフ、名曲の予感しかしないヴォーカルの抑えた歌い出し。

「これは貰ったーっ!」と思わず叫びたくなるような完璧な展開。

サビ前の泣きメロの盛り上げ感も申し分なく一気に持っていかれます。

この手のバンドにありがちなぶ厚めコーラスのおっかぶせではなく、あくまで熱いヴォーカルで勝負したのが大正解!。

元々のメロディラインによる叙情性が更に熱いボーカルで増幅され、涙なしでは聴けない位の哀愁を帯びた楽曲展開となっています。

そして忘れてはいけないのがベース。

ここでもボンボン、ベンベンとこれでもかと言わんばかりのグルーブ感で攻めてきます。

なにはともあれ、この名曲に出会えたことに感謝。

この1曲のためだけでも十分に買う価値のあったアルバムだったと確信しています。

因みに、その後バンドは2年後に2ndアルバムをリリースしますが、デビューアルバムで見せたメロディアス性は大幅に後退し、ブルース色の強いアルバムに音楽性が変化。
チョッとごめんなさいって感じで購入は見合わせました…。

Renegade / Hold Back The Night

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北欧メロディアスバンドのデビュー作に収録の名曲

1993年リリースの RENEGADE のデビューアルバム「Time to Choose」のオープニングに収録の哀愁メロディアス・ハードナンバーです。

お店のアルバム紹介POPに「北欧メロディアス」とか書いてあるだけで、妄信的に反応してしまうメロディアスハード大好物の私にとって、スウェーデンの新星、RENEGADEのデビューアルバムは、そりゃもう半端なく期待が大きかったです。

しかも当時の発売レーベルは”安心と信頼”のZEROコーポレーション。

これはもう間違いありません。即買い決定でした。

アルバムのライナーノーツを伊藤政則氏が執筆という、新人バンドにしては破格の好待遇でデビュー作をリリース。

それだけでも期待せずにはいられない注目度抜群でのデビューでした。

 

アルバムの中での頭抜けた名曲

ツインリードのギターに加えてキーボードもいる6人編成の大所帯バンドですが、サウンドメイクはさほどの重厚さは感じられず、ハードポップバンドならではの軽さが印象的。

オープニング曲でこのアルバムへの投資は間違いではなかったことを確信。

期待通りの楽曲が炸裂し、早々と勝利宣言をしてはみたものの、その後の楽曲が個人的にはちょっと物足りず、そのままラストまで行ってしまうというチョッピリ残念なアルバムでした。

1曲目が良い曲だけに何とも惜しいですが…。

このギャンブル性があるから、当時のギター小僧にとってはアルバイト代がいくらあっても足りません。

1曲¥2500となるととてもじゃないけどやっていけません。

まあ、そんな苦い経験も今となっては懐かしい思い出であり、サブスクとかYouTubeとか、今の人達は恵まれているよなあとつくづく羨ましくて仕方ありません。

RENEGADE は翌1994年に2ndアルバムをリリースしていますが、さすがに購入には踏み切れませんでした。

後で他の人のレビューを見ると、メロディアス感が薄まりロックン・ロール色が強まっているとのことで、買わなくって正解だったなとホッと胸を撫でおろしました。

結局は波長が合ったのはデビュー作のオープニング曲だけだったということで。

 

バンドメンバー

  • ヴォーカル: マグナス・ターローカー
  • ギター  : マッツ・オットソン
  • ギター  : トーマス・カルマン
  • ベース  : ハーカン・ジャルドモ
  • ドラム  : フレドリック・グラン
  • キーボード: パー・ビレングレン

 

おすすめ楽曲

北欧の冷気と透明感を感じさせる美旋律キーボードのイントロに、突如切れ込んでくるピッキングスクラッチとスピーディかつキャッチーなリフ。

実際のスピードよりも体感的に疾走感を感じるのはバスドラの絶妙の刻み方のせいでしょうか。

メロディアスファンにとってはテンションMAXに到達してしまいそうな完璧なオープニングです。

そしてヴォーカルは、北欧独特の鼻につまったような、一歩間違えるとやる気が無いと勘違いされてしまうような声質と歌い回し。

そしてBメロ辺りからお約束のように徐々に登場してくるコーラス部隊という、北欧メロディアスハードの典型的な基本要素を全て持ち合わせたバンドとも言えます。

クライマックスのサビメロでは渾身のコーラスが爆発。

空間を突き抜けていくような奥行きのあるサウンドメイクを目指しているのが分かりますが、メインヴォーカルの表現力がそこまでの域に達していないのが惜しいところです。

ツインリードということでギターソロには大きな期待を持ちましたが、これまたフレーズ、テクニックともにこの楽曲のソロにしては正直拍子抜けの印象。

内容的には完全ビジュアル系LAメタルのバンドでももうちょっと弾くでしょ!位の淡泊さで勿体ない。

惜しいです。

そうこうしている間に、変調、展開もないまま楽曲はそのまますんなりエンディングへ。

演奏時間3:04という短さで淡泊に終了。

楽曲が良いだけに何とも名残惜しいです。

ということで、今回ご紹介の楽曲は「北欧」ブランドを引っ提げて鳴り物入りでデビューした RENEGADEのアルバムオープニングを飾った、あと一歩で伝説の名曲にも化けそうだった「何とも惜しい」名曲でした。

 

Shotgun Symphony / Highway to Tomorrow

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欧州感が漂う叙情的メロディと荘厳な展開

Shotgun Symphonyは、アメリカ・ニュージャージー出身の5人編成のメロディアス・ハードバンド。

1993年にデビューアルバムがメロハー御用達レーベル「ZEROコーポレーション」から発売され、恥ずかしながら当時パクっと喰いついてしまいました。

(B!誌の評価もそれなりに高かったような気がします。)

それにしても、バンド名に「Symphony」って付けちゃうのは自ら相当ハードル上げてしまうので、なかなかできない荒技だと思いますが、やっちまいましたね。

(しかも、Shotgun Symphonyですからね…。もはや意味が解らなくなっちゃってます。)

音楽性はアメリカのバンドらしからぬ、どちらかと言えば欧州的な叙情的メロディが素晴らしく、曲の構成、展開も巧み。

全体的に荘厳な(単なる大袈裟とも言う)イメージを漂わせています。

演奏陣の各パートの頑張りを、Symphonyを名乗った所以とも思えるキーボードが絶妙なバランスで包み込むかのように上手いことまとめ上げている印象です。

それはまるで、それぞれの具材と麺をバランス良く混然一体とまとめ上げる、いまは無き新小岩「力(りき)」の味噌ラーメンの味噌のようです。

因みに、私は目と鼻の先にあったいつも行列を作っていたつけ麺「一燈」なんぞよりも断然「力」派でしたね~。(どうでもいいか…。)

そして特筆しておくべきは何と言ってもヴォーカル!。

トレイシー・ホワイト(こちらも大物感のあるお名前で…)のクリアで伸びやか、ハイトーンながらも声質の太さを感じるヴォーカルが、メロディラインと相性良く絡み合って楽曲の完成度を高めています。

トレイシー・ホワイトの声質は誰かに例えるならば、STRYPERのマイケル・スイート似と言える感じです。

 

楽曲レビュー

おすすめ楽曲「Highway to Tomorrow」は、デビューアルバムのオープニングを飾っている楽曲です。

正直言いまして、このバンドではこの曲だけおさえておけば良いのかななどと思えてしまう程、バンドの特徴が網羅され、楽曲としても荘厳かつキャッチーというバランスの取れた楽曲だと思います。

イントロのSE効果音はまるで喜多郎の「シルクロード」を思わせるようなシンセサイザーの音色。

聴く者の脳にべったりへばりついて離れない粘着質で、もう掴みはOKです。

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そういえば、昔よく新宿の駅前とかで民族衣装みたいなの纏って外国人5~6人が横一列に並んで凄く綺麗な「横笛」の演奏してましたね。

幻想的な笛の音色の後は、ギターによる流れるようなリフメロが続きます。

そして独特なトーンでリズム隊が重なっていき、キャッチーなサビメロまでキリ揉み回転しながら一気にもっていくという非常に良く練られた曲構成が見事!。

この一曲について書けば書くほど、「他の曲はどうなんだ?」と突っ込まれそうですが…。

まぁ、それなりに良いです…。

バラードとかも非常に綺麗な曲ですし。

但し、おすすめ曲程の欧州感、疾走感、シンフォニック感は残念ながらありません。

いずれも上質ながら、ミドルテンポのアメリカンハード楽曲が多いので少々飽きてしまうかもしれません。

それでも、美し過ぎるバラード曲「Broken Promises」、どっかで聴いたことあるような「Running」など、聴き応えのある楽曲が多いので興味のある方は是非!。

 

STEVE PLUNKETT / Every Little Word

steve plunkett

 

 

 

 

 

 

 AUTOGRAPH のヴォーカル「STEVE PLUNKETT」

スティーヴ・プランケットは皆さま良くご存知の「AUTOGRAPH(オートグラフ)」のヴォーカルですね。

アメリカン・ハードロック・バンド「AUTOGRAPH」は1984年にデビューアルバム「Sign in Please」をリリース。

収録のシングル曲「TURN UP THE RADIO」でスマッシュ・ヒットを飛ばしました。

そのヴォーカルをつとめたスティーヴ・プランケットは、声質や歌いまわしに非常に癖があるヴォーカリストで、個人的には DEF LEPPARD のヴォーカル「ジョー・エリオット」に少し似ている印象です。

ジョー・エリオットが酒焼けしたような声と時折裏側にひっくり返る歌唱法には、当初は副反応を示しましたが私の身体にも十分に免疫が作られ、いつも間にやらむしろ心地よく感じる程に。

そんなスティーヴ・プランケットが、AUTOGRAPH の勢いに陰りが見えてきたタイミング(1992年)でリリースしたソロアルバムが本作「MY ATTITUDE」。

何のおまけも付いていないのに当時のアルバム価格としてはお高めの\3000ということで、少し購入を躊躇しましたが、なんやかんやで大好きな「AUTOGRAPHのヴォーカルのソロ作品」という揺るぎない権威性が私の背中を強力に後押しして結局購入することに…。

これが良いんですわ~。

当たりでした~。

ギターをこれまた AUTOGRAPH のスティーヴ・リンチが担当していることもありますが、はっきり言って「ほぼ AUTOGRAPH 状態」の音楽性。

明るく爽やか、軽やかで覚えやすい AUTOGRAPH の音楽性はそのままに、ミドル・テンポの楽曲中心でどれも似たような印象となりやや飽きてしまうという AUTOGRAPH の弱点を克服したような作品と言えます。

ハードなリフを聴かせる曲あり、美しい哀愁のバラード曲ありとメリハリの効いたアルバム構成。

今回はその中から「AUTOGRAPHイズムをしっかりと継承したミディアム・テンポの名曲」を選定させて頂きます。

おすすめ楽曲

これぞアメリカン・ハードロック。
そんなありふれた表現がしっくりとはまってしまいそうな、澄んだコーラスで幕を開けるアルバムの3曲目。
さすがは AUTOGRAPH でスマッシュ・ヒットを生んだソングライターだけあって、落ち着きはらっていますね。
全く気負いがありません。
歌い出しからサビに向かって、一歩一歩着実にステップを踏みながら盛り上げていく展開は、かつてヘアメタル界の大関クラスまで昇りつめた風格を感じる安心と信頼の証です。
まさに凡事徹底、商売に奇策無しと言ったところでしょうか。
(ちょっと何言ってるかわかりませんが…)
余計な装飾をそぎ落としたサウンド・メイクで、DEF LEPPARDのような洗練されたおしゃれ感はないものの、これはこれでシンプル・イズ・ベスト。
王道を突き進む潔さを感じます。
アルバム全般的に言えることですが、ギターのプレイはかなり控えめに抑えられており、ヴォーカリストのソロアルバムとは言えやや勿体ない印象ですね。
ともあれ、まだ未聴の方々には是非おすすめしておきたい楽曲(アルバム)なのでした~。

 

LEGEND / Light in Extension

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幻のバンド「LEGEND」…

LEGENDは1988年にキーボードのスティーヴ・ペインを中心に結成されたブリティッシュ・プログレッシブバンド。

女性ヴォーカルのデビー・チャップマンを擁して独特な世界観の音楽性を持っていました。

なかなか比較対照が難しいですが、あえてこんな感じと言えば「RUSH」辺りと言えるでしょうか。
(チョッと苦しいですが…)

プログレッシブと言っても決して難解さは無く、キーボードメロディを軸とした馴染みやすい楽曲が多いのが特徴。

かと言って、大仰なシンフォニックさ、かっちりとしたスタイリッシュさも無いという、掴みどころのないポンプ・ロック的音楽性といった感じです。

サウンドは、時に民俗的な風合いのメロディも織り交ぜながらキーボードが主導。

対称的に、やや安っぽい歪み具合で軽い印象を感じさせながらも、それなりに切れ味のあるギターサウンドが融合していきます。

そして何と言っても最大の特徴は女性ヴォーカルのデビー・チャップマンによるオペラのような(と言うには線が細すぎる)歌唱です。

まるで初舞台で緊張のあまり声が震えて上ずってしまっているかのような独特な歌い回しですね。

聴いているこちらの方が何だか過呼吸気味になりそうです。

 

バンドメンバー

  • ヴォーカル: デビー・チャップマン
  • ギター  : ポール・トムソン
  • キーボード: スティーブ・ペイン
  • ベース  : イアン・リース
  • ドラム  : クリス・ハスケイン

 

楽曲レビュー

今回選曲「Light in Extension」は、1991年リリースのLEGENDデビューアルバムのオープニング曲として収録されています。

本曲は本国英国以上に日本での話題性を高めることに。

その理由は、伊藤政則氏のラジオ番組「POWER ROCK TODAY」でのオンエアがきっかけでした。

オンエアの翌日には輸入盤ショップの在庫が一掃されてしまったという文字通り「伝説」の一曲。

それにしても、現代の情報過多、瞬時の拡散性などがよく話題となりますが、当時の限られた情報源への依存度とその発信力は現代のインフルエンサーの比じゃないですね。

後に、国内盤がリリースされた際のB!誌の巻末レビューも伊藤政則氏が担当していますが、「アルバムの中で光っていたのはこの1曲だけだったので、心が痛んだ」とも回想しています。

(いやいや、早く言ってよーん!)

アルバムジャケットは湖と思われる場所の水面から剣を持った腕が現れている様子。

これから現れようとしているのか(多分そうだと思いますが)、沈んでいっているのかは不明ですが、その腕を中心にして水面には波紋が広がっています。

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それにしても、随分と曇り空の日に撮影した感じですよね。

しかもジャケットの輪郭も同系色のネイビーにしてしまうという暴挙!。

あまりのセンスの無さに思わずこの画像を思い出しちゃいました
(全く関係ありませんが)

問題の楽曲ですが、LEGENDの最大の特徴である女性ヴォーカル デビー・チャップマンは正直言いまして歌が上手いか下手かって言ったら恐らく下手なんじゃないかと(極めて失礼ながら…)。

でも、それも含めての全体感として全てを包含してくれるような包容力に富んだ雰囲気で聴かせてくれるヴォーカリストですね。

楽曲はオープニングらしからぬ想定外に短いイントロの後に、いきなりヴォーカルが登場してきます。

叙情的かつどこか牧歌的なメロディ。

儚くも美しい声質。

あえて感情を押し殺しているかのような歌い出しです。

ブリッジ~サビにかけては、眩しすぎるくらいの光源を感じるような美しいコーラスとの融合。

決して無理をして必要以上にイキるようなことは勿論ありません。

終始落ち着いた雰囲気で粛々と歌い上げていきます。

ちょっと違うかも知れませんが、同様に一度聴いた瞬間に魂を揺さぶられたスザンヌ・ヴェガのような、不安定かつ表現力の欠如が逆に醸し出してくる得も言われぬ安心感、優しさに溢れる雰囲気を感じてしまいます。

↓↓↓スザンヌ・ヴェガのレビュー記事はこちらからどうぞ↓↓↓

Suzanne Vega 【おすすめ名曲】 Luka
おすすめの名曲! Suzanne Vega / Luka (1987年) 歌詞が児童虐待を受けている少年の目線というシリアスな内容にも関わらず、澄み切った青空を思わせる爽快感が得られる心洗われる楽曲。

しかしながら、ここで注意しておく必要があるのが「声と顔(容姿)」は必ずしも一致しないということですね。

この点については、ライブ映像にてご判断いただければと思います…。

ヴォーカル以外の演奏陣で特筆すべきはやはりギターですね。

主導するキーボードに負けじと絡んでいくスタイルですが、意図的にそうしているのかは不明ですがサウンドが安っぽ過ぎ。

操るギターは久々に演奏されている姿を見た気がする「エクスプローラー」モデル。

渋い。渋すぎる…。

このボディ形状、改めて見ても重くて滅茶苦茶弾きにくそうだなぁーと思わず余計なお世話を呟いてしまいそう。

それにしても、いくら化石的なギターで弾いているとは言えもうちょっとどうにかなったでしょ的な、安っぽい歪ませ方とスカスカのサウンド。

これは明らかに自身はもう少しハードに攻めたいんだけど、バンドの全体感を考えてこれで我慢しています的な悲痛な叫びのようにも聴こえてきます。

一方で、プレイスタイルはあくまでも積極果敢なアグレッシブ。

チョイチョイかましてくる演歌調のおかずに思わず吹き出しそうになりますが、中盤のソロではここぞとばかりにキメのフレーズを、終盤のソロでは全部出し切ります感が半端ない古典的な速弾きを披露しています。

奮闘するギターの足を思い切り引っ張っているのがドラムですね。

これは「打ち込み」なんでしょうか。

(あまりに酷すぎて「打ち込み」であって欲しい感じ…。)

よくわかりませんが、とにかくワンパターンな古典的おかずを執拗に入れてくるので本曲だけならまだしも、アルバムを通して聴いたような時は正直だんだん腹が立ってくるほどです。

極論してしまえば、このドラムではどんなに頑張って良い曲を書いてもメジャーシーンには縁遠かったと思います。

日本国内盤のライナーノーツを書いているキャプテン和田氏によりますと、「彼らは1988年の結成当時から叙情的なメロディを持つプログレッシブサウンドを目指していた」とのことです。

その後、2ndアルバムも国内盤としてリリースされていますが、そのままバンドは鳴かず飛ばず状態で消えて行ってしまいました。

残念ながら、本曲収録のデビューアルバムも伊藤政則氏の後悔の念の通り、本曲1曲だけが突出した出来映えで、この一曲のためにアルバムを買うかどうかは「あなた次第です」って感じ。

当時からHR/HM界におけるオピニオンリーダーとされていた伊藤政則氏の影響力に、見事してやられた私も思わず新宿の輸入盤ショップに走ったくちですが、これもまた「一曲の美学」「B級ブリティッシュの甘美な世界」をリアル体感できた懐かしい思い出です。

 

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