Suzanne Vega / Luka
アメリカの女性シンガー・ソングライター スザンヌ・ベガの1987年リリースの2枚目アルバムからのピックアップ曲「Luka」。
アルバムタイトルは「Solitude Standing 邦題:孤独(ひとり)」。
このレコードを買ったのは、何かのTV番組で紹介されていたのを偶然見たのがきっかけだったと記憶しています。
ビデオクリップとともに紹介されたこの曲をTVで聴いた時の衝撃はすさまじいものがありました。
こ、こ、これはぁあああ!、何て透き通った透明感なんだぁあああ!。
何とも言えない、心が澄んでいく感覚とでも言うのでしょうか。
心理学や宗教的なことには全く興味はないのですが、自身の心の中にある邪念が消え去っていく感覚とでも言うか、心の底からの感動とでも言うか、まあ一言で言えば「心が洗われる」ということですかね。
当然のことながら、それまでスザンヌ・ベガなんて名前も聞いたことすらなかったのですが、今すぐ走ってレコード屋に行かなきゃ位の衝動に駆られてしまったのを覚えています。
それからというもの、このレコードは寝る前とかに数えきれない程によく聴きました。
ヘヴィメタルも良いけど、たまにはこういうのも良いんでないの?と思うのです。
楽曲レビュー
このアルバムのオープニングはいきなりのアカペラ曲「Tom’s Dinner」で始まります。
しかもそれは決して上手いとは言えない程に、音程も不安定、声質も弱々しいもので、普通の女性が家の掃除をしながら鼻歌で歌っている(呟いている?)かのようなクオリティなのに驚きます。
この質素極まりないスタイルこそがスザンヌ・ベガの飾らない魅力であり、多くの共感を獲得できた要因となっていると思うので、おすすめ曲「Luka」の前に紹介しておきます。
いよいよ本題の「Luka」です。
歌詞の内容は非常にシリアスで「児童虐待」がテーマとなっています。
しかも児童虐待を受けている側の少年の目線での歌詞となっているので衝撃的です。
もし夜中に物音が聞こえても
揉め事や争い事のような物音でも
何があったかは聞かないで
僕がドジだからいけないんだ
もっと静かにしてなくちゃ
きっと僕が悪いんだ
もっとお利口にしてなくちゃ
「どうしたの?」なんて聞かないで
「大丈夫?」なんて聞かないで
以上は歌詞からの抜粋ですが、、、。
何ともやりきれない思いがこみ上げてきます。
しかし重たいテーマとは裏腹に、曲調は決して暗さや鬱蒼とした感じはなく、むしろ澄み切った青空のような爽やかな感覚が広がっていくような不思議な感覚となります。
冒頭のアカペラ同様に、歌声は一切の気負いや装飾の無い淡々としたものです。
このスタイルはアルバム全編を通じて一貫しています。
そう、パンクのように楽曲の「攻撃性」や「熱」によって何かを訴えているわけではないので、彼女の本当の思いは淡々と歌い上げる楽曲の表面上ではなく、当然のことながら心の奥底にあるものなのだと思います。
この曲と歌詞を通じてリスナーが何を思うか、何を感じるかも個々に違う筈だし、違って良いのだと思います。
私がただ一つ伝えたいことは、本当に「良い曲です」ということだけです!。