220VOLT / Eye To Eye レビュー
北欧メロディアス愛聴者には欠かせないバンド「220VOLT」
本作は北欧スウェーデンのメロディアス・ハードロックバンド 220VOLTによる1988年にリリースされた4枚目のアルバムです。
EUROPEに代表される上質のメロディアス・ハードロックバンドの名産地「北欧」から輩出された至宝のバンド「220VOLT」。
「北欧メタル」「北欧メロディアス・ハードロック」の歴史を語る上では絶対におさえておきたいバンドといえるでしょう。
北欧と言えば、最近は俄然フィンランドに勢いがありますね。
(私はあまり聴きませんが)「チルドレン・オブ・ボトム」など人気バンドが相次いで登場しています。
とにかく、国民一人当たりのメタルバンド数が世界で最も多いと言われています。
(確かサウナもそうだったような…。)
そんなフィンランドが台頭してくる以前は、やはりスウェーデンの一人勝ち状態だったのではないでしょうか。
何と言っても「イングヴェイ・マルムスティーン」の輩出や、前述のワールドクラスの成功を収めたEUROPEなど敵無し状態でした。
そんな往年の北欧メタル王国の一角を担う存在となるべく、メロハー愛聴者御用達アルバムとして期待が寄せられたのが220VOLTの本作でした。
マックス・ノーマンにより見事覚醒
1979年に結成された220VOLTは、1983年にデビューアルバムをリリース。
以後、毎年1枚のペースでコンスタントに新作をリリースしていましたが、内容ははっきりって「B級バンド」そのもの(嫌いじゃなく、むしろ好物ではありますが…)。
デビュー作では、なんちゃってジューダス・プリースト風やら、なんちゃってOZZY風やら、マイケル・シェンカー風の楽曲が続き、あまりの露骨なパクリ感で思わず失笑。
続く、2枚目、3枚目では当時のバンドがこぞって足を踏み入れようとしていた「LAメタル路線」に傾き、迷走ぶりが手に取るように伝わってきました。
そんな紆余曲折を経て、バンドが巡り合うことになるのが敏腕プロデューサー「マックス・ノーマン」。
OZZYやLOUDNESSのアルバムを手掛けたことで有名ですね。
マックス・ノーマンの辣腕ぶりによって楽曲の完成度とサウンドメイクが格段に進化した本作は、バンドが標榜する方向性が確立された印象。
哀愁とキャッチーなメロディが程よく入り混じった洗練された北欧メロディアスハードロックが見事に表現されています。
全楽曲を通じて印象的な哀愁メロディと透明感溢れるコーラス。
弾き過ぎない節度あるプレイのギター。
どの曲から聴いてもOKな全11曲、捨て曲無しの粒揃いのアルバム構成。
まさに大化け、見事な変貌を遂げた220VOLTの完成形の誕生ですね。
「メタルじゃない」とか「ポップだ」とか「軟弱だ」とかの批評はフル無視。
大日本軟弱メロハー愛好会会長として、胸を張っておすすめしたい至高の作品。
スコアチャート
メンバー・収録曲
【バンドメンバー】
- ヴォーカル: Jocke Lundholm
- ギター : Mats Karlsson
- ギター : Peter Olander
- ベース : Mike Krusenberg
- ドラムス : Peter Hermansson
【収録曲】
- The Harder They Come – 3:53
- I’m On Fire – 4:20
- Beat Of A Heart – 4:15
- Eye To Eye – 3:47
- Love Is All You Need – 4:09
- Live It Up – 3:38
- Dog Eat Dog – 3:11
- Dangerous – 3:34
- Still In Love – 4:08
- Money Talks – 4:01
- On The Other Side
おすすめ楽曲
The Harder They Come
どの曲がオープニング曲となってもおかしくないほどに粒揃いの構成なのですが、1曲目は本作の中ではハードな部類に入るこちらの楽曲で幕を開けます。
なかなか伸びやかな高音域を歌い上げるヴォーカルと厚みのあるバックコーラス。
個人的に北欧バンドのヴォーカルに抱いている負のイメージ「ぶっきらぼう」「ぶつ切り」「鼻づまり声質」とは無縁で、安心して聴いていられる安定感があります。
ギターも、前作までの「練習の成果を全部出したいギター小僧」のような、とにかく弾きまくりの自己主張プレイから一転。
急に成長した大人のようなプレイに変身。
あくまで楽曲の全体感を重視。
弾き過ぎない「引きの美学」をようやく体得したようで、下品な歪みも抑えられ上品な音色を奏でていますね。
前作までとはとても同じバンドとは思えない、良い意味での豹変ぶりにただただ驚くばかりです。
バンドってプロデューサーでこうも変わるもんですかね?。
マックス・ノーマン恐るべし。
Eye To Eye
4曲目に収録のアルバムタイトル曲。
こちらも完成度の高さが際立っていますね。
もはや大物バンドの風格のようなものすら感じる程に、気負いや垢ぬけなさは皆無で、余裕すら感じる落ち着きぶり。
サビメロのバックを流れるように追いかけていくギターフレーズが何ともたまらなく哀愁をそそります!。
Dangerous
まとめ
1988年リリース作品にして驚愕のこのクオリティ!。
当時のスーパーヘビロテアルバム。
いや、もはやスーパーの売り場でよく再生されている「いらっしゃいませ~、いらっしゃいませ~」の無限テープのように、何度でも繰り返し聴いていたアルバムです。
惜しくもバンドはこのアルバムをリリース後、大成を収めることなく解散してしまいました。
本当に惜しくて残念でした…。
その後、再結成し1997年には過去のお蔵入り音源を新作としてリリースされていますが、正直なところ今一な出来栄え。
本作の足元にも及ばずといった印象でした…。
2014年には「生存確認的」に新作をリリースするも、これまた鳴かず飛ばず状態。
せめてもう一枚くらい歴史に残るメロディアスハードロックの名盤を、未来のためにも残しておいて欲しいです。
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