TAKARA / Taste of Heaven レビュー
北欧エッセンスも感じさせる叙情派メロディアス「TAKARA」
1995年リリースの2ndアルバムです。
こちらも確か当時のB!誌で高い評価だったことから即買いに走った記憶があります。
何と言っても、ヴォーカルがジェフ・スコット・ソートというのが購入の決め手。
カリフォルニアのバンドながら、北欧のエッセンス、叙情的なメロディセンスを感じるサウンドがたまらなく好きです。
発売レーベルが日本盤はzeroコーポレーション、海外盤がロングアイランドレコードという、メロディアスファン御用達の安心と信頼を誇る2社からのリリースとあって、最早それだけでも楽曲の良さにお墨付きをもらったも同然。
胸躍る思いで購入して急ぎ足で家に帰って聴き込みました。
「TAKARA」というバンド名の由来は不明ですが、ある程度最初から日本のマーケットを意識してのネーミングなのでしょうか。
確かに日本向けの楽曲のツボを押さえたサウンドメイクと哀愁メロディがふんだんに散りばめられた内容となっています。
中毒性の強いジェフ・スコット・ソートのヴォーカル
デビューアルバムに続き、正規メンバーではないジェフ・スコット・ソートがプロデュースとヴォーカルを担当。
TALISMANといい、TAKARAといい、実力派シンガーは引く手あまたの人気ぶりといったところですね。
本作でもその哀愁のヴォーカルスタイルは健在。
序盤のミディアムテンポのノリの良い曲では真骨頂の哀愁ボイスを織り交ぜながら、中盤の情熱的なバラード曲はしっとりと歌い上げ、終盤のスローテンポの渋い楽曲はパワフルにといった具合に変幻自在に歌いこなしています。
ジェフ・スコット・ソートはその後のアルバムでもヴォーカルを担当し続けていましたが、2001年リリースの4作目で遂にヴォーカルが変更となります。
楽曲の方向性は良くも悪くも全く変わらずの叙情派メロディアス路線を堅守しつつも、ジェフ・スコット・ソートが去ったことで可もなく不可もない「その他大勢の」普通のハードロックバンドになってしまったという印象です。
改めて、恐るべしジェフ・スコット・ソート…。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ジェフ・スコット・ソート
- ギター : ニール・グルスキー
- ベース : カール・デマルコ
- ドラムス : ボブ・ドゥーダ
収録曲
- When Darkness Falls
- Days Of Dawn
- Your Love
- December
- Last Mistake
- Taste Of Heaven
- Sacred Pleasure
- 2 Late
- Save Me
- Lonely Shade of Blue
おすすめ楽曲
When Darkness Falls
荒々しいとも言えるイントロリフでストレートに切れ込んでくるオープニング曲。
リフとは対称的にヴォーカルメロディは哀愁を帯び、バッキングヴォーカルが更に叙情性を助長していきます。
ギターソロは一生懸命感のある精一杯の速弾きを試みるも、誤魔化し感がちょっと気になる消化不良な印象で、微笑ましいですね。
Days Of Dawn
「勝負どころの2曲目」は抜群のメロディセンスとクオリティを誇る名曲。
イントロからコテコテとも言える哀愁感満載の衝撃的なリフが炸裂しています。
呼応するヴォーカルメロディも、サビにかけてのメロディは油断していると思わず涙してしまいそうになります。
ここでのギターソロは泣きに徹しておきたいところですが、どうしても速弾きに拘りがあるようで不安定な速弾きをここでも惜しげもなく披露。
このギタリストは自らを果敢に追い込んでいくタイプ?。
なかなかのチャレンジャーと言えるかも知れません。
早く実力・テクニックがその志に追いつくと良いのですが…。
Save Me
TALISMAN臭がプンプンするものの、テクニックとメロディセンスの差は歴然としていて、残念ながらTALISMANには遠く及ばなかったという楽曲。
いくらジェフ・スコット・ソートが歌ってもその差は如何ともしがたく、クリスチュアーノ・ロナウド一人で頑張っても周囲のパスを出すプレイヤーがいなければ勝てないのと同様ですね。
まとめ
アメリカンハードロックを基調とするバンドながら、北欧の哀愁メロディのエッセンスを織り交ぜながら日本のマーケットに挑んだ感のある「解りやすい」作風のアルバム。
メロディアスハードロック(ポップ?)を愛する者であれば、素直にその楽曲の良さに共感して応援したくなるバンドです。
しかも、極めつけとも言えるヴォーカル「ジェフ・スコット・ソート」というこれ以上ない看板を引っ提げているのですから、日本で売れない訳がありません。
(正直に言って、もっと売れて欲しかったですが…。)
アルバムを通して、いくつかの楽曲、そこかしこにTALISMANの面影を感じるメロディラインが見え隠れするのが面白く感じてしまいます。
TALISMANの良さを改めて実感してしまうと共に、もっとTALISMANの作品を聴きたいと思う状況に陥ってしまいます。
(ヤコブ亡き今となっては叶わぬ願いですが…。)