MASS / Voices in the night どんなアルバム?
不遇のクリスチャンバンドMASS。
バンドは1982年にデビューアルバムの制作に着手。
後にジューダス・プリーストをはじめ数々のバンドの作品を手掛けることとなる敏腕プロデューサーのトム・アロムが担当しましたが、バンドとレコード会社との折り合いが悪く訴訟にまで発展し「幻」と消えてしまいます。
その後、バンドは1985年にデビューアルバムを発売。シーンの反応はいま一歩でしたが、哀愁メロディアス路線に適度なパワフルさを見せるレベルの高い作品でした。
1989年にバンドはクリスチャン・メタルバンド代表格「STRYPER」のヴォーカルであるマイケル・スウィートに見出され、プロデュースを手掛けてもらうというビッグチャンスを手にします。
そうした話題性十分の状態で発売されたのが、本作『Voices In The Night』です。
どこかしこにSTRYPERっぽさを感じてしまうのは無理のないことですが、アルバム全体を通じて揺るぎないメロディセンスとポピュラリティ溢れる楽曲が散りばめており、眩いばかりの煌めきを放っています。
しかしながら、クリスチャン故の生真面目さが災いしたのかどうかは知りませんが、セールスパフォーマンスとしては「そこそこ」止まりに終わってしまいます。ビッグチャンスをものにして、一気にバンドの飛躍とまでは盛り上がれなかったのがバンドとしてもファンとしても何とも惜しいところです。
「いまいち」の評価で終ってしまった要因は?と考えてみた時に、先ず考えられるのがアルバムジャケットのデザイン。
それはヘヴィメタルアルバムらしからぬ、まるでブログに挿入されるフリー素材画像のようですね。
一体何を伝えたかったのか?。
この辺りの打ち出しの弱さ、押しの弱さは楽曲にも垣間見られ、折角の良いメロディを持った曲なのに「えっ?もう終わり?」といった淡泊な印象を受ける曲が数曲あるのも事実です。
結成から約40年が経過しようという現在も健在で活動を継続するバンド。
是非とも最後にもう一花咲かせて有終の美を飾ってもらいたいなと思います。
バンドメンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: Louis D’Augusta
- ギター : Gene D’Itria
- ベース : Kevin Varrio
- ドラムス : Joey “Vee” Vadala
【収録曲】
- Voices In The Night –3:51
- Nine Tonight –2:52
- Reach For The Sky –4:29
- Chance To Love –4:03
- Turn It All Around –3:39
- Carry Your Heart –3:49
- Miles Away –3:48
- Follow Me –3:11
- Call Out Your Name –3:44
- Staying Alive –3:31
- Still Of The Night –3:04
おすすめの楽曲レビュー
Voices In The Night
オープニングを飾るに相応しい、彼らにしてはヘヴィでスピード感のある楽曲。
終始ハーモニクスを効かし気味の地を這うようなギターリフが印象的。
そのトーンには一切の暗さはなく、ある意味能天気な感じです。
クリスチャンメタルという明確なカテゴライズがあるか否かは不明ですが、透明感のあるボーカルと多用されるコーラスにそれらしきニュアンスを感じ取ることができると思います。
ドラムは、スカッと乾いた音抜けの良いスネアと、ミュート気味のバスドラの音が個人的には好印象。
悪く言えばドラムがあまりに前面に出すぎて孤立しているようにも聴こえてしまいます。
youtubeなどでよく投稿されているアマチュアによるドラムカバーの動画を聴いているかのような錯覚に陥りそう。
そして欲を言えば、楽曲にもう一捻りの展開が欲しかったところ。
このまま一本調子で終るには勿体ない良い楽曲だけに惜しい。
ラストの突き抜けるハイトーンヴォーカルで少しは満足できましたけど…。
Reach For The Sky
DOKKENのパクりか?と思えるほどの良曲。
いきなり哀愁のサビメロから始まる展開はIN MY DREAMを思わせます。
一度聴いたら耳から離れなくなく素敵なサビメロと言えるでしょう。
しかし、悲しいかなここでも曲展開の工夫の無さが露呈しています。
途中でアコスティックに切り替わる展開はあるものの、基本的なメロディラインの展開はありません。
とにかく「寄り道」しないでお家に真っすぐ帰る良い子ちゃんなのが逆に困りものです。
会社帰りにちょっと一杯引っ掛けていくのが楽しみな(それしか楽しみが無いとも言う?)サラリーマンおやじにとっては、余計に物足りなさを強く感じてしまいます。
Follow Me
オープニング曲同様にノリの良いキャッチーな楽曲。
ライブでの盛り上がりが期待できる元気の出る楽曲です。
ライブではギターソロの後に客への煽り、掛け合いが見られるのだろうか?。
そんな事を考えて聴いていたら、あまりに淡泊でぶっきらぼうにエンディングとなってしまい目が点になってしまいました。
ちょっとー、頼むよー、マイケル・スイート。
STRYPERの曲もこんなに一本調子で淡泊だったっけ?。
と思わずクレームをつけたくなる工夫の無さ...。
それとも、発売当時から長年それなりに色々聴いてきたので、こちらの耳が肥えてしまって物足りなく感じてしまうのでしょうか。
とにかく淡泊の一言に尽きる感じです。
まとめ
その反動もあるのか、クリスチャン特有の真面目な性分なのか、全てにおいて余裕の無さというか不思議な焦りが伝わってきます。
ヴォーカルをはじめとした全てのパートが、一音一音を非常に丁寧にプレイしているのが聴き手に十分に伝わってくるのですが、逆にその丁寧さこそが本来HMに求められる躍動感やドラマティック性を阻害してしまっている印象です。
それぞれの楽曲における哀愁のメロディセンス、キャッチーなサビメロ、コンパクトで無難なまとまりは、逆に言えば全て聴き手の想定内でしかなく、予定調和を乱す驚きや感動に欠けるのです。
教科書通りというか、プロレスで例えるならばドロップキック~ブレーンバスター~バックドロップで3カウントみたいな…。
プロレスも場外乱闘や、トップロープからの飛び道具技や、投げっ放しのジャーマンスープレックスなんかが突発的にあるから皆ハラハラ興奮するわけで…。
かといって、電流爆破金網デスマッチのようなところまで行ってしまうと、もはやついていけなくなるオヤジなのですが…。
(とにかくメロディアスに大いに拘るストライクゾーンの狭いオヤジなので勝手なことばかり言っています。悪しからず。)
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