BRYAN ADAMS / IN TO THE FIRE レビュー
最大ヒットの前作に肩を並べる「おすすめ名盤」
ブライアン・アダムスの最大のヒット作は1984年リリースの4枚目お化けアルバム「RECKLESS」。
メガヒット4曲に加え計6曲のヒットシングルを輩出した最高傑作については既にこのブログでもレビューさせて頂きました。
しかしながら、主にHR/HMをメインに苦節40年以上洋楽を聴き込んできた私にとって、今回レビューさせて頂く続く5枚目アルバム「IN TO THE FIRE」もまた、「RECKLESS」に勝るとも劣らないおすすめ名盤と位置付けております。
大ヒット作「RECKLESS」のリリースから3年後の1987年に、並々ならぬ期待とプレッシャーの中でリリースとなった本作「IN TO THE FIRE」。
そのオープニング曲を再生し始めておよそ30秒。
「よしっ!」っと思わず自分で自分にガッツポーズをしたくなる安堵感と、同時に熱い歓喜の感情がこみ上げてきました。
ハードロック大好きな人におすすめしたい硬質ロック
詳細はじっくりと後述させて頂くとして、総じて本作の最大の魅力は「より硬質化したストレートなロック感」と「深みから渋みの境地へと足を踏み入れたヴォーカルスタイル」ですね。
サウンドプロダクションはギターサウンドを最前面に押し出し、余計な装飾を一切取っ払っての正攻法な音音作りに終始。
ライブでの再現性を非常に高い精度で予測できる作品で期待が膨らみました。
そして、本作リリース年に28歳となったブライアン・アダムスのヴォーカルスタイルは、前作に比べ更に抑揚を効かせた「大人の雰囲気」を感じさせるようになり、早くも円熟の域に入ってきたかのようです。
そんなヴォーカルと絶好の相性で聴かせるギターフレーズも、透明感のあるトーンで哀愁感や爽快感を楽曲に応じて巧みに使い分けながら表現していますね。
意外にも、本作への一般的な評価は「地味」「売れなかった」などのネガティヴなものが多かったようですが、単純なセールスの絶対金額を除けば前作に全く引けを取らない内容の充実作であり、自信を持っておすすめできるアルバムだと思います。
より本格的なロックシンガーとしての脱皮、進化を遂げたブライアン・アダムスの目指している方向性と地底から静かに湧き出すようなエネルギーを感じさせる名盤です。
収録曲
- Heat of the Night
- Into the Fire
- Victim of Love
- Another Day
- Native Son
- Only the Strong Survive
- Rebel
- Remembrance Day
- Hearts on Fire
- Home Again
おすすめ楽曲
Heat of the Night
相変わらずのモノトーンのジャケット画像に違わない無骨なギターのコードカッティングで幕を開ける本作のオープニング曲にして早くも全開の最高楽曲。
楽曲の作りは至ってシンプル、素材の味をそのまま活かすとはまさにこの事。
まるでピーマン畑で摘み取ったピーマンをその場でむしゃむしゃ食べているかのような、ワイルド感しかないギターサウンドですね。
そして、主役のブライアン・アダムスの歌唱は、序盤は貧血を疑わせるほどにクールで渋く進行しますが、究極のサビメロで一気に大爆発!。
一瞬の迷いも感じさせずに熱く燃える魂の叫びは、前作まで垣間見せていた青臭さを一蹴した無骨な大人のロックへと進化しています。
シンプル極まりないサウンドとは言え、楽曲そのものが持つスケール感は前作同様、いやよりスケールアップしているとも言えそうなド迫力。
まさにドライブのお供、窓全開の爆音楽曲です。
Into the Fire
続く2曲目に収録のタイトルチューン。
オープニング曲に比べややアップテンポしながらギターが掻き鳴らされるイントロに、おのずと前のめりにになって期待が高まります。
しかしながら、蓋を開けてみればヴォーカルメロディは正反対の展開をみせ、こちらは序盤ハイテンション~サビメロでまさかのお通夜状態という予想に反した意外性の山倉楽曲。
一緒に歌い叫ぶというよりは、じっくりと味わいながら聴いていたい、大人の渋さが出てきたブライアン・アダムスって感じですね。
Native Son
前作の「HEAVEN」に一歩も譲らない完成度と哀愁に満ち溢れた究極バラード。
悲哀に満ちた歌詞もさることながら、朴訥としたブライアン・アダムスの等身大の歌唱が冴えていてストレートに心に響いてきます。
そして一音一音噛みしめるようにピッキングされるエンディングに向けたギターソロのフレーズも、もう堪りませんね。
ギターという楽器が持っている本来の音色の魅力に改めて気づかされる思いです。
Hearts on Fire
オープニングの最高楽曲をややマイルドに味変させた、こちらも個人的にはブライアン・アダムス史上屈指の名曲として位置付け。
前作の「SOMEBODY」にも通ずるヒット性を秘めた、キャッチーさのある誰もが聴きやすい間口の広い楽曲ですね。
キャッチーとは言え、必要以上にマーケットには迎合しない楽曲作りは、本作の音楽性に対して筋の通った一本の軸、ブレない強固な意志の現れですかね。
アルバム終盤でこの名曲に出会えるのも本作の憎い演出で、全曲通して聴かせる制作意図を感じます。
まとめ
前作「RECKLESS」でシングルでのメガヒットを連発、驚異的なセールスを記録して成功を掴み取った若きロックシンガー ブライアン・アダムス。
続く本作で表現したのは「前作の焼き直し」ではなく「自身の目指す音楽性へのブレない探求」でした。
無骨なギターサウンドを軸とした必要最低限のサウンドプロダクションをベースに、クールに哀愁を表現しながらここぞの展開ポイントでは熱い魂の叫びを轟かせるヴォーカルスタイルが、いよいよ型にはまってきた感がある充実作品。
絶対的なセールス数値では前作に遠く及ばないものの、ブライアン・アダムスが目指す音楽性をビシビシと体感できるおすすめの名盤です。