Night Ranger / 7 Wishes レビュー
賛否両論分かれたバンド史上最高セールスの名盤
デビューアルバム「DAWN PATROL」では新人らしからぬ完成度の高い楽曲とツインギターによるテクニカルな演奏でファンの度肝を抜き。
2枚目アルバム「MIDNIGHT MADNESS」ではジェフ・ワトソンの8フィンガー奏法、名バラード曲「SISTER CHRISTIAN」の大ヒットなど高い話題性によりシーンにおける注目度を堅持。
そして迎えた本作3枚目アルバムのリリース。
結果数値だけを見ればNIGHT RANGERで「最も売れた(成功した)アルバム」ですが、残念ながら本作をバンド最高傑作と評価するハードロック・ファンは少ないように思います。
前作の「SISTER CHRISTIAN」の大ヒットに味をしめた制作サイドは、本作3枚目アルバムではより売れ線狙い、ポップでキャッチー、ソフトなバラードのような楽曲を中心とした作品を作ることを要求したのでしょう。
その要求に造作なく応えられる、お釣りがくるくらいのバンドとしての能力をNIGHT RANGERは保持していたため、本作のような見事なヒット作品を生み出すことに成功しています。
大ヒットバラード曲となった「Sentimental Street」をはじめシングルヒットを連発させ、ハードロック・ファン以外の新たな層の獲得もそれなりに出来たことでしょう。
反面、デビュー時からのハードロック・ファンにとってはどうにも物足りない、不完全燃焼なアルバムとの評価を受けることになります。
NIGHT RANGERに求めていたもの
(お前だけだよと言われそうですが)当時のハードロック・ファンがNIGHT RANGERに求めていたものって、やっぱり2人のスーパーギタリストによるスリリング&テクニカルなリフやソロの競演、そして2人のヴォーカリストによるエモーショナル&ノリの良い歌唱だったような気がします。
それに対して本作ははっきり言って「宝の持ち腐れ」状態であり、非常に勿体ない感じ。
無論、卓越したメロディセンスによる完成度MAXに達したと納得できる各楽曲の仕上がりに対してとやかく言うつもりはありませんが。
ギターヒーローにはもう少し弾かせてあげないと、そしてもう少しハードロックしないといかんでしょって感じですね。
あと、これまた個人的な好みで恐縮ですがジャケットデザインもリアリティの欠片もなく、当時のシーンにおける人気ぶりを考えるとNIGHT RANGERの3枚目のアルバムには相応しいとは言えない感じがします。
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ジャック・ブレイズ(兼ベース)
- ギター : ブラッド・ギルス
- ギター : ジェフ・ワトソン
- ドラムス : ケリー・ケイギー(兼ヴォーカル)
- キーボード: アラン・フィッツジェラルド
【収録曲】
- Seven Wishes – 4:54
- Faces – 4:11
- Four in the Morning – 3:52
- I Need a Woman – 4:39
- Sentimental Street – 4:11
- This Boy Needs to Rock – 3:59
- I Will Follow You – 4:15
- Interstate Love Affair – 3:13
- Night Machine – 4:33
- Goodbye – 4:19
おすすめ楽曲
Seven Wishes
良いんです、良いんですよこの曲も。
でもやっぱり当時のシーンで飛ぶ鳥を落とすような勢いのあったNIGHT RANGERの待望の3枚目アルバムのオープニング曲としてはどうだったのか…。
どっこいしょ、よっこらしょ的な曲調でサビに向かって盛り上がっていく良い楽曲なんですけどね~。
地味に8フィンガーのソロも聴かせてるけど…。
個人的にはアルバムのラストを締め括る感じのドッシリとした印象です。
Four in the Morning
2曲目の出たがりケイギーのヴォーカル曲を経ての3曲目。
シングルカットされたメロディアスな名曲で、個人的には本作最高楽曲です。
哀愁が漂う抜群のメロディラインに乗っかって歌うジャック・ブレイズのヴォーカルはグッときますね~。
そして聴き逃してはいけないのがギターソロ。
テクニックを封印しての泣きメロに徹したソロフレーズは何度聴いても心が浄化される気分です。
ややパンチ力には欠けますが本曲をオープニングに持ってきても良かったのではと個人的には思ったりします。
Sentimental Street
「SISTER CHRISTIAN」の姉妹バラード曲にして最大のヒット曲ですね。
イントロは意外にも劇的な始まり~そのままの流れで陰気な湿気を感じさせない爽快なパワーバラード曲であるのが救いです。
それにしても、いくら求められたとはいえ、この完成度高いメロディのバラード楽曲をホイッと作っちゃうのは流石。
ブラッド・ギルスのソロも構成が見事でアーミングしまくってますね。
Goodbye
アルバムのラストを飾るカントリーっぽさもあるアコギで始まる名バラード楽曲。
既に登場済の「Sentimental Street」と同系統のザ・アメリカン・ハードロックバンドのバラードと言った感じで、ほのぼのとした郷愁こそ漂わせるも湿り気はなく、聴き終えた後はまるで青臭い映画でも一本見終えた直後のような爽快な気分にさせてくれる名曲ですね。
ここでもギターソロは楽曲との調和に徹した美しい流れるようなフレーズを聴かせてくれてます。
そしてラストのソロでは控えめながらもしっかりとブラッド・ギルスが爪痕を残していますね~。
まとめ
過去の2作での信じられない程の楽曲完成度とテクニカルで印象的な演奏で、一気にハードロック・シーンの注目を集めたNIGHT RANGER。
2人のスーパーギタリストを2枚看板として擁する人気バンドとして期待された本作3枚目は、よりマーケットを意識した完成度の高いポップな楽曲が中心となり、バンドとしての最高セールスを収める成功作となりました。
しかし反面、デビュー作からの延長線でのメロディアスなアメリカン・ハードロックを期待したファンの思惑とは大きなギャップが生じてしまい賛否両論が湧きおこったのも事実。
特に傑出した出来映えの名バラード曲を惜しげもなく2曲も配置したことにより、NIGHT RANGERはもはやソフトバラードバンドになってしまったとの落胆の声が多く上がりました。
NIGHT RANGER というバンドに対して求める音楽性とは何なのか。
バンド当人達もファンもが「選択」を迫られるような、大きな意味を持つ分岐点となってしまったアルバムと言えると思います。