RATT / OUT OF THE CELLAR レビュー
モトリー・クルーと担ったLAメタルの双璧
1980年代に猛威を振るったLAメタル旋風。
その代表格として、モトリー・クルーとラットは将棋の飛車、角のように双璧を成していましたね。
私はリッチー・ブラックモアやマイケル・シェンカーに憧れて、下手くそでしたがギターをやり始めて友人とコピーバンドを組んでライブなどをしていましたが、今思えばラットの曲はコピーしたことがありません。
当時のバンドのメンバーは勿論、校内の他の多くのバンドでも不思議とプレイしていたのを見た記憶がありません。
そもそも、自身の中でLAメタルに対する軽度のアレルギー反応が起きていたのも事実。
モトリー・クルーなどは、レコードは購入したものの正直言ってあまり聴き込んだ記憶もなくそのままお蔵入りという状態でした。
一方、ラットについては2枚目のアルバム「Invasion Of Your Privacy」の方を先に購入。
キャッチーで粒揃いの楽曲が耳に心地よく、後追いでデビューアルバムである本作を入手した経緯です。
ということで、結局はバンドとしても個人としても、ラットの楽曲をコピーしてプレイしてみようという気は起こらず、私の周囲も同様でした。
当時は「ラットは聴くもの」という、言わば「カレーは飲み物」(ん?ちょっと違う?)的な空気感が蔓延しており、何でコピーしようと言い出す奴が誰一人いなかったのが、不思議で仕方ありません。
ホント、謎です…。
RATT 1st「情欲の炎」 バンド最大のヒット作
本作は1984年リリースのRATTのデビューアルバム(邦題:情欲の炎)。
全米7位、300万枚のセールスを記録したラット最大のヒット作です。
てっきり2ndアルバムが一番売れたのかなと思ってましたが、本作の方が売り上げは上だったのですね。
意外です…。
本作は全10曲収録で37分弱というコンパクトな設計のアルバム。
46分カセットテープ時代には丁度良いですね~。
A.B両面のテープの余り部分にはお気に入りの曲を入れてました~。
テープの残量を目視で確認しながら、レコード音源のボリュームを徐々に絞っていって綺麗にFADE OUTさせるのが拘り。
思ったより残量が無くて途中でブチっと切れたり、逆に余り過ぎて悔しかったり、一喜一憂でした。
2枚看板のギターが光る独特のバッキング
こうして今回改めて本作を聴き直してみると「あれっ?、こんなに良かったっけ?。」って感じで、意外とクセもなくてオーソドックス、かつチョッピリメロディアスという質の高さが再認識できました。
ギターの2枚看板であるウォーレン・デ・マルティーニとロビン・クロスビー。
リードギターはあくまでもウォーレンであったものの、楽曲構成上もう一本のギターは不可欠な作り。
ロビンの担う役割も超重要なものだったと思います。
サクッと聴こえるけど実は細かい味付けがそこかしこに施されていて聴いてて楽しくなりますね。
小気味の良いリフ、2人それぞれの異なるバッキングが合わさって一つに聴こえるプレイなどが印象的です。
余談ですが、私のお気に入りギタリストの一人である ジェイク・E・リーもラフ・カットを結成する前にラットに在籍していたという事実を、今回初めて知りました(赤面…)。
いやぁー、喰わず嫌いっていうか無関心でいることって恐ろしいです…。
メンバー・収録曲
メンバー
- ヴォーカル: スティーブン・パーシー
- ギター : ウォーレン・デ・マルティーニ
- ギター : ロビン・クロスビー
- ベース : フォアン・クルーシェ
- ドラムス : ボビー・ブロッツァー
収録曲
- Wanted Man
- You’re in Trouble
- Round and Round
- In Your Direction
- She Wants Money
- Lack of Communication
- Back for More
- The Morning After
- I’m Insane
- Scene of the Crime
おすすめ楽曲
Wanted Man
これぞLAメタル!と言わんばかりの教科書通りの楽曲。
ミディアムテンポのシンプルなリフがサクッと刻まれ、もたついているのか、タメているのか、ちょっと不明なドラムが、マイペースで淡々とリズムを叩き込んでいくという独特の基本スタイルは、聴いていて妙な安心感があります。
そしてヴォーカルもまた、単語中心の短いセンテンスをさほど広くは無い限られた音域の中で繰り返して歌うというお約束の正攻法。
聴き手の予定調和をあえて崩さない、LAメタルはやっぱり解りやすさが一番ですね。
Round and Round
3曲目にしてアルバム最大のヒットナンバーが登場。
この曲はオープニング曲とは違ってちょっと凝った構成になっていますね。
意図的に狙ったのか、偶然なのかは不明ですが…。
イントロのリフ、メロディライン、サビメロ、ギターソロと、いずれも「哀愁」と「爽快」メロディがセットで組み合わされているという不思議な感覚です。
私の大好物の「哀愁メロ」がキターーー!って思ったら、すぐさま変調して「はい、残念、実は爽快メロでしたーーー!」
てへ、みたいな…。
「何だい!結局そっちなのかーーーい!」と言った感じ。
まるで吉本新喜劇のような焦らされプレイが癖になってしまう曲ですね。
Back for More
前述の「ROUND AND ROUND」における「焦らし戦法」は、本曲ではより大胆不敵にエスカレートしています。
もの憂げな哀愁感漂わせるイントロ~リフで、「おっ!いよいよ遂にきましたかーーー!」と思わせておいて、歌メロで突然の「ザ・LAメタル節」が炸裂するという。
やっぱ、そっちなのかーーーい!のやられた感が強烈過ぎます。
とは言え、ラットというバンドの楽曲スタイルとしてはこれが普通なのでしょうけど…。
いけませんね、欧州、叙情、哀愁、様式美、メロディアスなる狭い嗜好内での「こう来る筈だ」みたいなパターンが、自分の中で凝り固まってしまっている証拠です…。
ストレート狙いで変化球に全く対応できなくなってます…。
まとめ
今回、懐かしのラットン・ロールを超久しぶりに聴き直してみましたが、まさに、喰わず嫌い状態でした…。
大いに反省です。
アルバムセールスが何よりも証明しているように、2ndよりもむしろ1stの方がサウンド的にも楽曲的にもシンプルながらしっかりとした「芯」みたいなものを感じます。
逆に言うと、2ndは少しコマーシャル過ぎてサウンドもいじくり過ぎてる感じですね。
スティーブン・パーシーのヴォーカルなんぞは顕著にいじくりまくってて「変」です…。
そして、何より惜しまれるのは既に他界してしまったロビン・クロスビー。
サイドギターという職責上、アルバムからだけではそのプレイぶりは解りませんが、2m近くあるルックスを誇る容姿だけとってしても、ラットというバンドにとっては必要不可欠な存在だったことは間違いありません。
それにしても、曲良し、テク良し、ルックス良しの3拍子揃った良いバンド。
デビューアルバムにしてこの完成度は「あっぱれ!」です。