TNT 【最高傑作】 Intuition 北欧メロディアスおすすめ名盤

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TNT【最高傑作】Intuition レビュー

ALL SEASON 全天候型の万能アルバム

ジャンルを問わず音楽全般に言えることですが、人間にとって音楽はその時の季節や天候、気分や体調など様々なシチュエーションに応じて、「癒し」「哀愁」「勇気」「感動」などを与えてくれるものですよね。

  • 春の新たな生命の息吹きを感じながら、新しい生活のスタートに自らを鼓舞するようにTNTを聴き
  • 夏の暑さのヘロヘロ状態を、少しでも癒そうと北欧の美しい森や湖を思い浮かべるTNTを聴き
  • 秋の哀愁にふけりながら、昔愛した人との思い出をこっそり一人で振り返りながらTNTを聴き
  • 冬の寒さに震えつつ、北欧の極感はこんなもんじゃないと意味不明の比較対照の為にTNTを聴き
  • 爽やかな晴れた日にはもちろん、どんより曇り、雨の日にもしっとりとTNTを聴き

まさに一年中365日、体調、気分を問わずリスナーに寄り添ってくれるバンドがTNT。

 

あらゆる面で「美しい」TNTの最高傑作

現在もその活動の歩みを止めていないTNTですが、個人的にはやはり本作がTNT史上における最高傑作ではないかと考えます。

そして、その理由は本作を語る上で絶対に外せないキーワード「美」。

TNTをどんな切り口で切ってみても、その断面から現れるのが「美」という文字。

切っても切っても現れる「美」の無限ループ。

これには、「美のカリスマ」IKKOさんも人差し指を立てながらいつもの雄叫びを上げていたとかいないとか…。

【北欧美旋律】

本作は1982年にノルウェーで結成されたTNTの、1989年リリースの4枚目アルバム「Intuition」。

既にヘヴィメタル・シーンにおいて「北欧メタル」「北欧メロディアス」は市民権、いやマーケットにおけるかなり大きな影響力を持つまでにカテゴリーとして確立。

私のような北欧信者は、アルバム評やCDショップで「北欧」の文字を見ただけで「ざわざわ」っと気持ちが動揺するパブロフ状態となっていました。

そんな中での本作との出会いはもはや必然。

そして当時むさぼるように身体全身が欲していた「北欧美旋律」が、まるで湯水のように湧き出て来る源泉かけ流し温泉のような贅沢極まりないアルバムでした。

既に前作3枚目アルバム「Tell No Tales」で、類まれなるメロディ・センスを「チョッとだけよ~ん(by 加藤茶)」とチラ見せはしていましたが、本作でいよいよその全貌を披露した感じ。

一切の曇りもなく磨き込まれた水晶のような煌めきの美旋律によって、心の底から湧き出てくるような高揚感と、心が浄化され雑念を忘れさせてくれるような透明感を味わえる作品。

もはや北欧云々の次元を超えたハードロック史上屈指の美旋律アルバムではないでしょうか。

これにはさすがのメガネクリンビューの橘屋圓蔵師匠もビックリ!。

「眼鏡すっきり曇りなし、料理すっかり食うものなし」ですね。

 

【アルバム構築美】

個々の楽曲・メロディは勿論ですが、本作で特筆すべきはそのサウンド・プロダクションとアルバム構成。

全10曲で僅か35分程度のコンパクト設計ながら、計算しつくされた各楽曲の配置、流れが完璧でアルバム全体に得も言われぬ様式美のようなものを感じます。

前作3枚目の方法論をより進化させ、極限まで洗練度を上げたと感じさせる大きな要因と考えられるのが、クリアなサウンド!。

失礼ながら読み方も存じ上げませんが、本作のプロデューサーはBjørn Nessjø(ビヨン・ネッショウ?)。

北欧メタル然とした叙情性を保ちつつアメリカ的なキャッチーさを巧みにブレンドさせながら、ひたすらにクリアなサウンドに拘った作品として仕上げた仕事ぶり見事の一言に尽きます。

洗練された誰でも聴きやすいハードロックとして、確実にファンの裾野をガバっと広げてくれた(特に日本で)作品となったのは間違いありませんが、レコード会社の怠慢でアメリカのマーケットでの評価が今一上がらなかったのは残念です。

その仕事ぶりには、なんでも鑑定団の中島誠之助先生も認めざるを得ず。

「いやぁ~いい仕事してますね~」「是非大切になさって下さい」と評価したとかしてないとか…。

 

【伸びやかな美声】

「美」をテーマとして語るうえで絶対に外せないのが、ヴォーカルのトニー・ハーネルの超絶ハイトーンな美声ですね。

名曲「TONIGHT I’M FALLING」におけるギターソロ前のシャウトは、個人的にはハードロック史上のハイトーン・シャウト・ベスト20選に確実に入るでしょう。

(とか言って、他にすぐ思いつくのはクイーンズライチとクリムソン・グローリー程度ですが…。)

ここまで散々「北欧、北欧」言ってきましたが、トニー・ハーネルはまさかのアメリカ人ヴォーカリスト。

でも、どこまでも伸びていく透明クリスタル感と爽やかなトーンで清涼感に満ちた美声はなぜか「北欧」そのものと言った感じで、良しとしましょう。

そしてその美声を更に引き立てながらヴォーカルに分厚さ持たせているのが、北欧メロディアスに欠かせない美しいコーラス。

盤石の体制です。

これには内山田洋とクール・ファイブも舌を巻いたとか巻いていないとか…。

 

【変態的センスのギター美技】

超絶ハイトーンヴォーカルとともにこのバンドの2枚看板と言えるのが、超絶テクニシャン・ギタリストのロニー・ル・テクロ。

その予定調和を思い切り無視した変態仮面のようなリフやフレーズは、個人的にはオランダのバンドELEGYのヘンク・ヴァン・ダー・ラーズと同じ香りがします。

恐らく本人的にはこれでも一生懸命に個性を抑えているのでしょうが、一般人にしてみれば相当の変態度。

変態センス爆発のテクニカルなリフ、高速ソロが随所に飛びだしてきて楽しめます。

個人的にクリス・インペリテリのザクザクとした硬質食感のプレイを称して「砂肝ギター」と呼んでおりますが、ロニー・ル・テクロのミュート感のあるバネ指のようなカックンカックンのギタープレイは「たくあんギター」と命名したいと思います。

 

【ジャケットデザインの様式美】

触れずにはおれないのがジャケットデザインの様式美ですね。

ショートケーキの苺は最後にとっておく派なので、先ずは裏面ジャケットで勿体付けましょう。

裏面画像には、メンバー4人の姿が風景と共に収められています。

 

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恐らく風光明媚なノルウェーのどこかなのでしょう、木々の葉が黄色く色付き始めた様子から季節は初秋と推測。

遠い背景には見るからに歴史を感じさせる古城のような建物が確認できます。

本来であれば、ノルウェーならではの深緑の木々に囲まれた静かな湖畔で、カッコーでも鳴いている感じでキメたいところだったのでしょうが、予算の関係なのかそうは問屋が卸さなかったようです。

ジャケットマニアである私の眼は誤魔化せません…。

ノルウェーという先入観もあり一見湖っぽく見えるものの、良く見れば周囲に柵があるわけでもなく、メンバーのすぐ足元付近から水際が始まる遠浅状態でまったくもって水深も感じられませんね。

いやぁー、あぶない、あぶない。

これは日本で言うところの「ため池」または「沼」、もっと言ってしまえば大きな水たまり程度のものといった感じでしょうか。

ルアー・フィッシングでもしようものならナマズあたりが釣れそうです。

さあ、それでは気を取り直して美の感動を味わえるジャケット表面に参りましょう。

 

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こ、こ、これは....。

「荘厳な佇まいの教会?」

「門の上部に設えられた窓の美しいステンド・グラス」

「全体を覆うライトブルーの光が醸し出す凛とした空気感」

通常はカラフルな多数の色で彩られたステンドグラスが一般的だと思いますが、赤とブルーの2色のみを用いたこの絵柄は非常に落ち着いた雰囲気でより品位を高めていますね。

かつてこんなに高貴で清らかなハードロック・アルバムのジャケット・デザインがあったでしょうか。

本作はこの美しくも気高いジャケットを眺めながらその楽曲を堪能するというのが、最も贅沢感を味わえる聴き方ではないかと思います。

 

メンバー・収録曲

メンバー

  • ヴォーカル: Tony Harnell
  • ギター  : Ronni Le Tekro
  • ベース  : Morty Black
  • ドラムス : Diesel Scan-Dahl

 

収録曲

  1.  A Nation Free
  2.  Caught Between the Tigers
  3.  Tonight I’m Falling
  4.  End of the Line
  5.  Intuition
  6.  Forever Shine On
  7.  Learn to Love
  8.  Ordinary Lover
  9.  Take Me Down (Fallen Angel)
  10.  Wisdom

 

おすすめ楽曲

A Nation Free

アルバムのオープニングを飾るスケールの大きな荘厳な楽曲。

約1分程度の楽曲ながら、このジャケットデザインに相応しい格調高い雰囲気十分です。

「歴史」「勇壮」と言ったイメージにドンピシャでマッチする、サーカーW杯の決勝戦の選手入場前にこの曲がスタジアムに流れたら、さぞかし格好良いだろうなと妄想を膨らませずにはいられません。

スタジアムを埋め尽くした大観衆の、地響きのような盛り上がる歓声を脳内で感じながら一人鳥肌をたててブルっている私です。

Caught Between the Tigers

そのままの流れで始まる2曲目で、早速の変態リフが炸裂。

渋さの境地に達した変態ぶりです。

変則的に進行する曲調に知らずのうちに引きずり込まれてしまう感覚。

この曲調に意も介さず歌メロを見事余裕で歌いあげるトニー・ハーネルもある意味変態的な歌唱力の持ち主。

もはや「集まれ!変態フェス」の様相を呈してきたなか、変態ラスボスによるギターソロが早くも大爆発します。

いやぁー、相変わらず安定の変態ぶり。

本作でも期待が持てそうですね~。

怪物級のミュート速弾きが、刻みたくあんのような状態になってます。

そして、ドラムのタメ感も良いですね~。

もう、こういう曲はズレるかズレないかギリギリ、スレスレまでタメまくって欲しいくらいです。

 

Tonight I’m Falling

変則的な渋い楽曲の後に一気に全開となる、爽快な透明感と哀愁の泣きメロ。

このギャップを狙ったアルバム構成にしてやられた感がある収録順ですね。

「美旋律」という 言葉はこの曲のためにあるかのような、個人的には完璧を極めたとも言えるハードロックの名曲中の名曲。

クリアなトーンのギター、それに負けじ劣らずの透明感のあるヴォーカル&分厚いコーラス、清流のように流れる美しいメロディライン、一緒に口ずさみたくなる皆に愛されるキャッチーなサビメロなど、文句のつけようがありませんね。

前述の、ギターソロ前のトニー・ハーネルの天空を突き刺すようなハイトーン・シャウトが衝撃的です。

 

Intuition

名曲「Tonight I’m Falling」と双璧を成す本作の代表曲で一気にアルバムはクライマックスへ。

適度なスピード感を持つ2曲の名曲の間には、一服的に静かで落ち着いたバラード曲を配置しているのも心憎い演出です。

このアルバムの世界観から計算して申し分のない歪み具合のギターが、エッジを効かせたリフを奏でながらの小細工なしの王道的展開。

シンプルながら叙情的な歌メロを美しくも力強く歌い上げていくトニー・ハーネルのヴォーカル。

不覚にも涙が溢れそうになるのをギリギリで必死にこらえます。

これを聴かずしてメロディアス・ハードロックを語るなかれ…。

そんな陳腐な常套句が頭をよぎる中、気が付けば鼻の穴は全開、握りしめた拳を突き上げながら頭が勝手に揺れ動き、一緒にサビを歌っている自分がいます。

さすがのロニー・ル・テクロも、あまりの楽曲の完成度の高さに自ら呑まれてしまったかのように、名曲2曲のソロでは破天荒ぶりを抑えて流れを重視した落ち着いたプレイを披露していますね。

 

Forever Shine On

北欧メロディアス・ハードロック史に語り継がれる名曲の後を受けての楽曲は、相当の足腰の強さが無いと務まりません。

ヘヴィで独特なギターリフと歯切れの良いバッキングで展開していくドラマティックな構成の楽曲がその大役を務めています。

ギターソロではもはや何がやりたいのか、私のような凡人には理解不能。

弾いている本人も意外と適当に弾いていたりして?。

と思えるほどについて行けない度が振り切られています。

 

まとめ

1980年代から90年代にかけて、シーンに大きな影響力をもった「北欧メタル」というカテゴリー。

その創世期を支えた元祖とも言えるのが、EUROPE や TNT 、 GLORY といったバンド達。

欧州独特の叙情性をもち、あくまでも正統派メロディアスの音楽性にキャッチーな要素を巧みに取り入れた楽曲で、中でも最も成功を収めたのが EUROPE でした。

本作を聴いて頂ければ一目瞭然で、TNT も大成功するポテンシャルとクオリティを十分に持っていたにも関わらず、レコード会社の腰の入らなさ加減が災いし、マーケットでの反応を得られたのは欧州と日本くらい。

アメリカを含めたワールド・ワイドでの成功には残念ながら至りませんでした。

さすがに本作のような名盤を作っても大成功までには至らずとなると、次作以降で迷いやブレが生じてくるのは致し方ないところ。

TNTもそのご多分に漏れず、次作以降で迷走状態に陥っていくことに。

どんなに良い作品でもタイミングや運によって成功を掴み取れるかどうかはわからないシヴィアな世界。

逆に言えば、いまだ現役で活動を続ける彼らにはそのチャンスが十分にあることにもなるので、是非頑張って欲しいですしこれからも応援し続けたいです。

 

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