Harem Scarem / Harem Scarem(1st)レビュー
名盤あるある? バンド「最高傑作」論争
私のような単細胞で気が短い人間は、面倒くせぇぇ、どっちも最高で良いじゃんよー、っと言いたくなるのが、名盤とされる作品の「どっちが最高傑作だ?」論争。
これは名盤と言われる作品そのものが持つ宿命なのか、名盤を複数輩出するような実力を持つバンドの悪戯か、はたまた自身の主張を絶対に譲らずひたすら承認欲求を満たそうとする自己満ファンのエゴのぶつかり合いか、と言ったところでしょうか。
どうでも良いですね…。
人それぞれ趣味嗜好は無論、感受性やこれまでに聴いてきた音楽のバックボーンも違うので色んな考え方があって当然。
自分が良いと感じたら良いんだし、そもそも順位つけることに全然意味が無いと思っているので、当ブログでは「ランキング」という表現は殆ど使用しておりません。
但し、一応頑張って書いているブログを少しでも読者の方の目に触れるようにアピールするために、「最高傑作」「歴史的名盤」などの強調表現を使わせてもらっています。
なので、「最高傑作」としたものについてはあくまで「バンドの作品の中で私の個人的な好みにたまたま合致したもの」程度の基準でしかなく、世間一般の評価基準と異なるケースも出てきてしまうことはご容赦下さい。
そんな最高傑作論争が巻き起こる典型例の一つが、ハーレム・スキャーレムの本作1stと2ndの2枚の作品ではないでしょうか。
結論から言ってしまいましょう、私にとってのハーレム・スキャーレム最高傑作は本作1stではなく2ndです。
ズコっ!
(って、2ndなんかぁあああーい!散々前置きしといてぇええ!)
デビュー作らしからぬクオリティを誇る名盤
1987年にカナダで結成されたハーレム・スキャーレムは、透明感、爽快感を全身に浴びれるようなとにかく聴いてて気持ち良くなれるバンドとして日本での人気は絶大でした。
私のようなメロディアス愛好家にとっては、名実ともにメロディアス・ハードロックバンドの代名詞ともいえる位置付けのバンドで崇拝しておりました。
美しい清流のように流れるメロディ、安定感と渋さも備わった演奏テクニック、サウンドプロダクションや楽曲展開の高い練度と完成度、どれをとっても実にハイクオリティでしたね。
(過去形で書いてますが、まだまだ現役活動中なので頑張って欲しいです!。)
1991年リリースの本作は、デビューアルバムらしからぬ驚きのクオリティでファンを更なる虜にしました。
というのも、日本では2ndアルバム「MOOD SWINGS」が先にリリースされてしまったので、多くのファンは2nd⇒1stという後追い状態で本作と接することになりました。
2ndアルバムの方が音像がややヘヴィだったので、バンドに対するヘヴィなイメージが浸透した状態で本作1stに接すると、やや拍子抜け、あら随分マイルドね、と言った印象をもってしまうかも知れません。
本作1stで聴ける音楽性はもはや上質のハードポップに近い、メロディ最重視のシンプルな楽曲作りの方向性だったことが解ります。
このように、先にリリースされた2ndから入った人は本作に若干物足りなさを、本来の順番通り本作から入った人は2ndはよりヘヴィになって格好良くなったなぁと思うことでしょう。
すなわち、この対決では2ndの方に若干分がありそうですが、まあ、それぞれに良さがあるということで…。
いずれにしても、本作はデビューアルバムにしてとんでもなく完成度が高いアルバムであることは間違いなく、琴線をビシビシ刺激してくるメロディラインと巧みなコーラスワークが際立っています。
キャッチーな歌メロを思わず一緒に口ずさんでしまう、そんな親しみやすい楽曲が粒揃いの極上のハードロックアルバムと言えるでしょう。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ハリー・ヘス
- ギター : ピート・レスペランス
- ベース : マイク・ジオネット
- ドラムス : ダレン・スミス
収録曲
- Hard to Love
- Distant Memory
- With a Little Love
- Honestly
- Love Reaction
- Slowly Slipping Away
- All Over Again
- Don’t Give Your Heart Away
- How Long
- Something to Say
おすすめ楽曲
Hard to Love
ハーレム・スキャーレムのアルバムでは、オープニング曲がいきなりの最高楽曲となることが多いですが、本作もご多分に漏れずやってくれてます。
出し惜しみする、小出しにする、おびき寄せると言った小細工とは無縁の潔さに惚れ惚れします。
やはり男たるもの直球勝負を目を瞑って1、2、3でバットを振る位の思い切りの良さがないといけません。
(ちょっと何言ってるかわかんないですけど…)
文句なし、満場一致の№1楽曲ですね。
哀愁のメロディライン、キャッチーなサビメロ、美しいギターソロの構成もお見事!。
ハリー・ヘスの深みのあるヴォーカルが、五臓六腑の毛細血管の先端にまで沁みわたるようです。
With a Little Love
ハーレム・スキャーレムらしさが凝縮されている楽曲ですね。
優しく憂いのあるメロディラインをエモーショナルに歌い上げるヴォーカル。
それに更にダメ押しとばかりに厚みをもたらす分厚いコーラスワーク。
決して出しゃばり過ぎず楽曲の流れを汲みながら構成されたギターソロ。
それらが全て不思議な上質感、贅沢感を伴って伝わってくるのは、バンドが無意識に放つ落ち着いたムード、必要以上に力んでいない平常心によるものなのでしょうか。
All Over Again
オープニング曲と甲乙つけがたいですねぇ~。
自称軟弱メロディアス愛好家の私にとっては至福の境地の名曲です。
イントロからサビに至るまでの流れるように美しいメロディラインは、ホントに見事としか言いようが無く作曲能力が光っています。
この曲でもギターソロは計算しつくされた心洗われるようなフレーズを、余裕綽々で滑らかに楽曲に織り込んで全体の完成度を高めていますね。
まとめ
1990年代のグランジ・オルタナ系の興隆により劣勢に回る一方だったメロディアスハード系。
そんな逆風吹き荒れる中で、ハーレム・スキャーレムはまさに救世主となって日本のハードロック/ヘヴィメタルシーンでの支持を集めました。
しかし、悲しいかなハーレム・スキャーレムをもってしても時代の大きな潮流変化には逆らえず、その後、3rdアルバムから音楽性に変化が生じ始め、メロディアスハード支持層の離反にさらされることとなります。
更にはメンバーチェンジやバンド名の変更に至るまで、負のスパイラルにどんどんはまっていくといった過程をたどることになりました。