Screaming For Vengeance どんなアルバム?
JUDAS PRIEST 全盛期の傑作!
1982年にリリースされたジューダス・プリーストの8枚目のアルバム。
(邦題:復讐の叫び)
1974年のデビュー以来、現在に至るまでの長きに渡るキャリアの中でもまさに脂の乗り切った絶頂期と言える頃の作品ですね。
本作と、1984年リリースの次作「Defenders of the Faith(邦題:背徳の掟)」の2枚のアルバムこそが、ジューダス・プリーストの甲乙つけがたい最高傑作であることに異論を唱える方は恐らくいないでしょう。
(世の中、色んな人がいるから意外とわかりませんが…)
因みに、当ブログでは既に次作の「背徳の掟」を断腸の思いで「最高傑作」としてご紹介済。
心情的には思い入れが強く、話の展開としてもしっくりくる本作「復讐の叫び」の方を最高傑作に選びたかったところですが…。
ヤラセを許さず(何のヤラセだ?)、自分に嘘をつかず、誠実と信頼を信条に運営しております当ブログですので正直に書かせて頂きます。
自分史上最高レベルの鋼鉄音に驚愕!
記念すべき初の自腹切りLPレコードは地元のレコード屋さんで購入。
LPレコードを買うと好きなポスターを1枚もらえるそのお店。
「どれにする?」と聞かれて咄嗟に選んでしまったのは「柏原芳恵(ビキニ水着)」。
消し去ることのできない黒歴史です…。
それにしても、数あるレコードの中からなぜに本作を選んで購入したのか?は、あまり覚えていません。
兄貴が持っていなかったバンドで、恐らくジャケットのデザインに惹かれたのでは?って感じです。
ともあれ家に帰ってわくわくドキドキの初試聴。
ヘッドホンで全神経を集中し、伊藤政則氏のライナーノーツを羅針盤に初航海のスタートです。
詳細は後にレビューさせて頂くとして、いきなりのオープニング「The Hellion」で受けた予想以上の「鋼鉄音」に正直少し怯んでしまいました。
既にIRON MAIDENのデビューアルバム「鋼鉄の処女」は体験し、重金属音楽への免疫も出来上がっていた筈でしたが、この「ナチュラルな歪み具合」と「音のぶっとさ」、「火花の散るような金切り音」の衝撃はホントに凄かったです。
「これは、チョッと凄いレコード買っちゃったな…。」と、若干引き気味の戸惑い感が湧きおこったのも束の間。
伝説の畳みかけ攻撃 「Electric Eye」~「Riding on the Wind」の荒波にあっさり飲み込まれもはや転覆寸前の放心状態に。
藁にもすがる想いで手にしたライナーノーツに必死に目をやると、飛び込んできたのはあの名文句でした。
「見事だ!、本当に見事だ!」の最高の賛辞。
この序盤の3曲を聴いただけで、「このアルバムを買って正解だった」と確信できた瞬間でした。
とは言え、もろ手を挙げて喜んでいたかと言えばそうではなく、初めて耳にする「ロブ・ハルフォード」の独特の金切り声には正直言って戸惑いを隠せませんでした。
今でこそ、「やはりジューダス・プリーストのヴォーカルはロブ・ハルフォードでなければ」思う自分ですが、当時は正直「ヴぇー」って感じでしたね。
幸いにして私は当時ギター小僧でしたので、どちらかと言えばヴォーカルよりもギターの方に神経を集中させて聴くようにして何とか持ちこたえることができました。
でも、やがてはハイトーンヴォーカルの神などと手のひら返しの信奉者となるんですけどね。
不満だったシングルカット曲
ということで、伝説のオープニングからの3曲をはじめとして、アルバムタイトル曲やその他の楽曲でもヘヴィメタル然とした鋭利で厚みのあるサウンドとパワフルなハイトーンヴォーカルの良曲が揃った本アルバム。
本国イギリスはもとより、アメリカでも好調なセールスを記録することになりますが、不満と言うか不思議だったのがシングルカット曲でした。
私の好みでは本作の中で下位に位置付けられる「You’ve Got Another Thing Coming」がシングル曲であることを知り、どうしても納得がいきませんでした。
あまりに攻撃的な曲はシングルカットには向かないにしても、それだったら「Fever」でしょうよ!。
などと思えて仕方なかったのです。
でも、結果としてシングル「You’ve Got Another Thing Coming」も好調なセールスとなりましたので、マーケット(特にLA向け?)を意識したウケが良い曲調ってこういうもんなんだなという感覚が少し解ったような気がしました。
バンドメンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ロブ・ハルフォード
- ギター : K. K. ダウニング
- ギター : グレン・ティプトン
- ベース : イアン・ヒル
- ドラムス : デイヴ・ホーランド
収録曲
- The Hellion
- Electric Eye
- Riding on the Wind
- Bloodstone
- Chains
- Pain & Pleasure
- Screaming for Vengeance
- Another Thing Coming
- Fever
- Devil’s Child
おすすめ楽曲レビュー
The Hellion
前述もしましたが、このオープニングの「圧の凄さ」には文字通り度肝を抜かれました。
とにかくこれまでに聴いたことの無い重金属音。
勇者?鳥獣?「Hellion」の登場シーンそのものと言った感じの荘厳さ溢れる様式美の世界感。
シンプルながらも絡み合うようなハモリフレーズで、飽きのこない絶妙の短さで余韻を持って終わる計算しつくされたかのようなオープニングメロディですね。
自信のコピーバンドでも何度も得意げに使わせて頂きました。
(私の大好きなバンドY&Tにも「From the Moon」という負けず劣らずのオープニングインスト曲がありますのでどうかよろしく)
因みに、1980年代リリース作品の中から本曲を含めた「インスト曲」をピックアップしてみた特集記事をご参考までに。
Electric Eye
オープニングの「The Hellion」が鳴りやまぬ中でメドレー式におっ始まる超攻撃的ギターリフ。
最も好きなアルバム1、2曲目の展開として迷わず即答する人も多い、伝説的な流れですね。
誕生からもうすぐ40年を経ようかというのに、その切れ味はまったく劣化することは無いHM史上屈指のリフと言って良いでしょう。
今でこそエフェクト機材も進化して簡単に色々なサウンドが創れる時代ですが、40年前の当時にして、この骨太かつ決して歪ませ過ぎて潰れていない輪郭のしっかりとした鋭利なサウンドが出せていることが驚きです。
出だしこそミステリアスに抑え気味のロブ・ハルフォードのヴォーカルも、サビに向けてはボルテージが最高潮となり聴いてるこちらも気合いが入ります。
そして、圧巻は何と言ってもギターソロ。
この曲ではグレン・ティプトン単独でのプレイですがそのフレーズはまさしく鳥肌物ですね。
そして誤魔化しのないハードピッキングの一音一音が重く鋭く突き刺さってくるように感じます。
Riding on the Wind
これまた前述の通り、伊藤政則氏もライナーノーツで絶賛していた畳みかけの3曲目。
前曲「Electric Eye」のエンディングのハウリング音が鳴りやむと同時に間髪入れずに展開される高速タービンのようなドラム。
そして、それに覆いかぶさるように刻み込んでくるHMの教科書的なギターリフ。
これを聴いて頭を振らずに平静でいられる人って多分いないよね?と思える位に格好良いです。
ここまでくるとロブ・ハルフォードのヴォーカルも曲頭から全開です。
脳天から突き抜けるようなハイトーンを出し惜しみせずに発射しまくっています。
ギターソロはツインリードの掛け合い的な感じですが、トリッキーに作り込まれた効果音が多いためバンドとしてコピーするのは断念しましたが、ライブでプレイできたらこれほど格好良い曲はなかなか無いんじゃないのと思います。
You’ve Got Another Thing Comin’
シングルカット曲。
こうして改めて聴いてみれば、明らかに他の楽曲とは異質ですね。
あからさまにノリの良い、シンプルで軽いイントロと、その流れに準じた緊張感とは無縁のメタル・ゴッドのヴォーカルメロディ。
もしかしたらこれは初めからシングルカット用に作り込まれた曲なのでは?。
(必ずしもバンドとしてやりたかった曲ではなく、やらねばならなかった曲?)
冷静に考えれば、リッチーブラックモア率いるRAINBOWも一足前の1981年リリースのアルバム「治療不可」でかなりマーケットを意識した曲作りに舵を切っていましたからね。
結局、好きなこと、やりたいことだけやっていては限られたパイの中だけで食い合っているだけで、HR/HM全体のマーケットボリュームが中々広がっていかないという事なのでしょうね。
Fever
哀愁のギターイントロと、これまた涙が出そうになる程に切ない情感溢れるヴォーカルメロディで始まる個人的にはシングルカットして欲しかった名曲。
後追いでしたが、過去のジューダス・プリーストの作品における名曲群と似た臭いがすると言うか、本作収録の楽曲の中では従来のジューダス・プリーストの音楽性を最も残した楽曲ではないかと感じます。
まとめ
NWOBHMムーブメントにより群雄割拠の様相を呈していたこのタイミングで、真のHMサウンドとは何ぞや?を明確に定義付けた伝説のアルバムと言っても過言ではないでしょう。
楽曲うんぬんの前に、まずもって「音」自体が衝撃的かつドラマティックな作品です。
加えて、荘厳かつ様式美を追求したイントロ曲~これぞHMというエッジの効いたリフを誇る疾走チューン2連チャンという、前人未到の大技を繰り出してきたジューダス・プリースト。
本作のマーケットでの成功によって「メタル・ゴッド・バンド」の称号をも確固たるものとしました。
そして、本作における成功要因をよりブラッシュアップさせた究極の進化作品を次作「背徳の掟」としてシーンに叩きつけることとなるのです。