DIO / HOLY DIVER レビュー
大御所DIO主宰のバンド~デビュー作にして最高傑作
ロニー・ジェイムス・ディオが主宰のバンド「DIO」の1983年リリースのデビューアルバム「HOLY DIVER」。
RAINBOWの初代ヴォーカリスト~BLACK SABBATHなどのBIGバンドを経て、小さな巨人ロニー・ジェイムス・ディオが辿り着いた初めての自身の率いるバンド「DIO」。
「DIOの最高傑作を選べ」と言われたらおそらく多くの人が迷うであろう本作と2ndの2枚のアルバムですが、私にとっても本当に難しい問題でした。
優劣のつけられない位に拮抗した内容の2枚の内、今回本作を最高傑作に選んだポイントはただ1点。
愛してやまない名曲「DON’T TALK TO STRANGERS」が収録されている作品であることでした。
もちろん、より各楽曲の練度の増した2枚目アルバム「THE LAST IN LINE」にも「WE ROCK」はじめ名曲が揃っていますが、個人的に「DON’T TALK TO STRANGERS」は別格の位置付けです。
ヴィヴィアン・キャンベルも華々しく表舞台にデビュー
かつてはディオ自身もRAINBOW創設時のリッチー・ブラックモアにその才能を見出されたように、バンドDIOのデビューに伴い白羽の矢が立てられたギタリストがヴィヴィアン・キャンベルですね。
同郷のゲイリー・ムーアにも大きな影響を受けた北アイルランド出身。
当時はまだ無名に近かったヴィヴィアン・キャンベルが華々しくシーンの表舞台に登場したのも本デビュー作でした。
さすがにこの時代のサウンドプロダクションの限界もあり音像は頼りなく線の細さは否めませんが、千載一遇とも言えるチャンスを確実に手中に収めるべくルーキーならではのフレッシュなギタープレイを聴かせてくれてます。
バンドの主宰であるディオの大仰な世界観を具現化するためアルバム全体的に楽曲はミドルテンポが中心。
血気盛んなルーキーギタリストにとってはなかなか表現が難しい舞台設定だったとは思いますが、随所にオリジナリティを織り交ぜながら自己主張していますね。
ディオのヴォーカリストとしての力量と表現力はもはや万人が認める既成事実。
そんな中でルーキーのヴィヴィアン・キャンベルに要求される「リスナーの既存の世界観、様式美のイメージをどれだけ昇華させられるか」という難題。
本作におけるギターリフの斬新さやギターソロの構築美は、上記難題に対するヴィヴィアン・キャンベルによる模範解答であり、見事に大役を果たしファンのハートを鷲掴みしたと言えるでしょう。
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ロニー・ジェイムス・ディオ
- ギター : ヴィヴィアン・キャンベル
- ベース : ジミー・ベイン
- ドラム : ヴィニー・アピス
【収録曲】
- Stand Up and Shout -3:18
- Holy Diver -5:53
- Gypsy -3:40
- Caught in the Middle -4:17
- Don’t Talk to Strangers -4:54
- Straight Through the Heart -4:35
- Invisible -5:26
- Rainbow in the Dark -4:14
- Shame on the Night -5:29
おすすめ楽曲
Stand Up and Shout
機関銃のような古典的リフで幕を開けるアルバムオープニング曲。
始まったら最後、ブレーキの壊れた自転車で急な下り坂を走っているかのように最後まで同じリフで突っ走る工夫の無さがルーキーっぽくて潔いですね。
今度時間のある時に一体何回繰り返しているのか数えてみたくなります。
そして大御所ヴォーカルの威厳と風格は言わずもがなですが、特筆すべきはリズム隊の存在感。
まるでトタン屋根に激しく降り注ぐ雨あられのようなスネアで、無理やり気味のおかずを割り込み運転のように入れ込んでくるヴィニー・アピス。
一方対照的にジミー・ベインのベースラインは、まるで賢い盲導犬のようにビタッと完璧なサポート役に徹っしています。
気が付けば、ヴォーカルやギターの花形パートを差し置いて、2人のリズム隊が最前線に踊り出んばかりの鼻息の荒さです。
Holy Diver
2曲目に収録のタイトル楽曲。
不気味なSE音からして「はいはい、始まりましたね大袈裟ディオ劇場」と身構えてしまいますが、意外にも肩こりせずに聴ける心地よいハードロックで何だか拍子抜けしたのも当時の正直な印象です。
どうしても当時は「元BLACK SABBATHのディオ」というバイアスが頭の中で勝手に働いて、おどろおどろしい系の楽曲を想像してしまっていたのですね。
今想えば、デビュー作のこの2曲目までで「DIO」というバンドの音楽的方向性が既に明確に示されていたのだなと感じます。
Caught in the Middle
自称、メロディアス・ハードロック愛好会会長としては本作で2番目に大好きな楽曲なのであります。
ヴぇ~!こんな曲もやってくれちゃうのですか~と、西の空に向かって拝みたくなってしまう程です。
初めて聴いた時は、想定外の楽曲に完全にDIOの虜になってしまった瞬間でしたね~。
それにしてもヴィヴィアン・キャンベルのこのギターリフ。
う~ん、メロハー好きの嗜好を熟知した三所攻めとでも言いましょうか、琴線つかみ取り大会状態です。
そして、珍しくディオのヴォーカルもロングトーンで気持ち良く爽やかな歌唱を聴かせてくれている貴重な楽曲でもありますね。
Don’t Talk to Strangers
LPアルバムのA面ラストに持ってきた本作最高楽曲。
個人的にはこの曲でオープニングをかましたらマーケットも大爆発したのではないかと思えてしまう、破壊力抜群の名曲中の名曲です。
しかも、前曲で散々メロハーファンとしてのウィークポイントをいたぶられた後ですので、さらに容赦なく完膚なきまでにとどめを刺される感じになっちゃいますね。
まさに劇場型ドラマティック・ハードロックの決定版!。
誰一人が欠けても存在し得なかった、この4人のメンバーが揃ったことで生み出された奇跡の楽曲!。
いやぁ~、苦節40年以上の長いことHR/HMを聴き続けてますが間違いなくベスト20(笑)には入ってくる名曲中の名曲と断言しちゃいます。
静けさの中で囁き掛けてくるディオの歌唱。
静寂を一閃で切り裂くギターリフ。
雪山の大雪崩のように全てを飲み込んで進行していく楽曲の流れ。
ねじり鉢巻きにふんどし一丁で叩いているかのような暴れ太鼓状態のドラム。
当時の経験値では太刀打ちできない程にことごとく予定調和を裏切ってきたギターソロの見事なフレーズと展開の構築美。
これまでに何百回聴いたのか不明ですが、いまだにこの曲展開とギターソロには感動を覚えます。
凄い、凄過ぎる楽曲です…。