IMPELLITTERI / STAND IN LINE レビュー
ヴォーカルにグラハム・ボネットが加入!
1988年リリースの初のフル・アルバムで日本においてはデビュー作となります。
バンドとしては前年の1987年に4曲入りEP盤をリリースしていますので、本ブログでは本作を2ndアルバムと記載させて頂きます。
デビュー作のEP盤では、ヴォーカルが「若気の至り」「常に全力」「血管切れそう」なロブ・ロックでしたが、本作ではグラハム・ボネットが加入!。
後発の利、年の功はあるにせよ、2枚のアルバムを聴き比べるとヴォーカルとしての表現力の差は歴然で、誰もが納得してしまうグラハム・ボネットのパワフルヴォーカルの健在ぶりが確認できます。
クリス・インペリテリとしては、グラハム・ボネットの加入により自身のルーツと公言するリッチー・ブラックモア率いるRAINBOWの方向性を標榜したのでしょうが、どうしてもギタープレイ(特にソロフレーズ)からはイングヴェイ率いるALCATRAZZにしか聴こえないのが悲しい現実。
払拭しようともがけばもがくほど、イングヴェイ沼にはまっていくといった感じがします。
何気に他のメンバーも凄い面子揃い!
本作では、グラハム・ボネット以外のメンバーも何気に凄いメンツが揃いました。
ベースには元QUIET RIOTのチャック・ライト、ドラムスに元TED NUGENT BANDのパット・トーペイ、キーボードには元DRIVERのフィル・ウルフェという豪華メンバーがレコーディングに参加しています。
この面子を維持してライブツアーを敢行することは難しかったようですが、少なくともアルバム制作においては、クリス・インペリテリも水を得た魚の如くギターを弾きまくっています。
前作のEP盤では「速いだけ」「弾き過ぎ」といった印象が否めませんでしたが、さすがにその辺りも(少しは…)進歩の跡を感じさせるプレイっぷりとなっています。
メンバー・収録曲
メンバー
- ヴォーカル: グラハム・ボネット
- ギター : クリス・インペリテリ
- ベース : チャック・ライト
- ドラムス : パット・トーピー
- キーボード: フィル・ウルフェ
収録曲
- Stand in Line
- Since You’ve Been Gone
- Secret Lover
- Somewhere Over the Rainbow
- Tonight I Fly
- White and Perfect
- Leviathan
- Goodnight and Goodbye
- Playing With Fire
おすすめ楽曲
Stand in Line
アルバムのオープニングを飾るタイトル曲。
モロにアルカトラズを想起してしまうようなメロディアスなハードロックで幕を開けます。
いやぁ~、前作のロブ・ロックの「聴いてるこちらもつかれちゃう」常に全力疾走のヴォーカルに比べると、やはりグラハム・ボネットの 歌唱はさすがですね。
聴きながら思わず「うんうん」頷いてしまいます。
もちろん、グラハム・ボネット向けにアレンジがなされた楽曲なのでしょうが、声質といいパワーのかけどころといいお見事!。
素直に格好良いと思います。
クリス・インペリテリのギターも、新作のオープニング曲に相応しく「景気づけの弾きまくり」状態で、これでもかと言わんばかりの神業を披露。
しかし、前作のような「嫌味」というか周囲が引いちゃうような「浮きまくり感」はなく、あくまで楽曲への濃い目の味付け程度の存在感で何とか踏み止まっている印象です。
CoCo壱番屋のカレーで例えるなら「2辛」程度でありましょうか。(???知らねえって…)
Since You’ve Been Gone
ここ2曲目で早くも持ってきました、往年の名曲!。
もはやグラハム・ボネットの代名詞ともいうべきヒット・チューンがアレンジされて登場です。
ここまでくるとメロディは同じでももはや別曲と解釈した方が良い、いや解釈しないとチョッと受け入れ難い往年のファンの方も多いのではないでしょうか。
先ずはイントロのリフからして「あの」まろやかなトーンや、どことなく感じる望郷感(個人的見解)は消えうせていますね。
まるでアマチュアバンドのディストーションバリバリの歪ませ過ぎの安っぽいトーン…。
色気も何もなく粗雑に刻まれるリフの展開に、少し悲しくなってしまいます。
赤提灯の焼き鳥屋に例えるならば、ゴリゴリであんまり味のしない「砂肝」と言ったところ。
一方、グラハム・ボネットのヴォーカルは、出だしこそいきなりのシャウトをかまして妙にハイテンションですが、さすがに曲中では安定飛行に入り安全ベルト着用のサインが消えました。
(むしろ、ヴォーカルだけを比較すればこちらの方がパワフルな感じで原曲より好きだったりします。)
そして、問題のギターソロは果たして…。
曲中のソロこそ最低限のアレンジで自重してはいるものの、エンディングに向けてはまさにインペリテリ・ワールド全開!ですね。
やっぱり一生治らないのでしょうねこの病は。
残念ながら、ここで聴けるギターソロは完全に楽曲の流れとはかけ離れた「ただ弾きたかっただけ」という印象です。
ただでさえ「弾きすぎ」評価をされているギタリストにとって、カバー曲を演奏することは並大抵の自重では済まされない、相当の忍耐力が必要なのでしょうね。
Goodnight and Goodbye
本作の中で「バンドとして」の曲と捉えた時に、私の中で最もしっくりと腹落ちした楽曲です。
適度なスピード・チューンで哀愁感も漂うメロディラインで進行します。
グラハム・ボネットのヴォーカルはアルカトラズ時代を髣髴とさせる力強さを感じ、クリス・インペリテリのギターも本作の中で最も楽曲の中に融合され上手く調和がとれているように感じます…。
そう思っていた矢先に突然のぶった切り終了!。
いやぁ、チョッとついていけません、クリス・インペリテリの世界観。
なんちゅう終わり方してんのよ!?。
昭和のプロ野球TV中継じゃあるまいし、「皆さん、この続きはラジオで、ご機嫌ようさようなら」って一番いいところでぶった切りしちゃあかんでしょ。
まとめ
速さへの驚きだけが残る印象
全9曲収録の本作ですが、2曲目と4曲目(インスト)はカバー曲。
9曲目はトニー・マカパインを髣髴とさせるギターインストの曲であり、実質グラハム・ボネットのヴォーカル入りの「新しい楽曲」は6曲のみ。
グラハム・ボネットという絶好の広告塔を得て、かつ技術、キャリア的にも申し分の無いメンツを揃えて勝負にでた作品としては、正直言って物足りなさを感じてしまいます。
もちろん、各楽曲のクオリティは高くグラハム・ボネットの存在感も大きいのですが、曲によっては後半全てがギターのみになってそのまま終わってしまったり…。
ドヤ顔して弾いている姿が目に浮かぶ「Somewhere Over the Rainbow」辺りも「砂肝感」満載ですね。
はっきり言ってクリス大先生には「引きの美学」や「渋さ」、「タメ」「間(ま)」と言った概念は全く感じられず、ただひたすらギターを速く弾くことに全てを掛けているような印象を持ってしまいます。
この感じ、上手く表現できませんが聴き終えた後に「凄いけど感動は無い」とでも言いましょうか…。
何がしたかったのかインペリテリ
全然難しいことや速弾きなんかしてなくても、聴いた後に粘っこく脳に焼き付いてくるフレーズを連発するギタリストがいる一方で、クリス・インペリテリは鼻息荒く懸命に超人的なプレイをしても、あまり多くのリスナーに響いていないとしたら悲しいことです。
(ましてや、何をやってもイングヴェイの二番煎じとか言われる始末でちょっと気の毒。)
結局、今回改めて本作を聴き直してみても、クリス・インペリテリはこのアルバムで「何がしたかったのだろう?」という疑問は自分の中では解けませんでした。
自らの名を冠としたバンドですので、やりたいようにやるというのが真意だとすれば目的は果たせたのでしょうが、「バンドとして」サスティナブルに活動を続け、マーケットにおける成果もそれなりに狙っていくのであれば、さすがにこの内容では厳しかったような気がします。
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