JUDAS PRIEST / STAINED CLASS レビュー
アルバム毎に絶対的名曲が存在するJUDAS PRIESTの凄さ
今でこそ「ヘヴィメタルの象徴」的ポジショニングを不動のものとしているジューダス・プリーストの1978年リリースの4枚目のアルバム「STAINED CLASS」を今回はレビュー。
本作をレビューするにあたり、ジューダス・プリーストの凄さって何だろう?と、ふと考えた時に私の行きついた答えは「どのアルバムにも絶対的な名曲が存在する=毎回の作品に散りばめられている」といった点でした。
ジューダス・プリーストの作品の中で最高傑作は?と問われれば、既にレビューさせて頂いた9枚目のアルバム「Defenders of the Faith(邦題:背徳の掟)」。
悩みに悩み抜いた末に「総合点で1位」に挙げるものの、初期の作品も含めてどのアルバムをとってみても本当に遜色の無い作品に仕上がっていると思います。
そう感じる理由は、各アルバム毎に代表する象徴的、絶対的な名曲が2~3曲必ず収録されており、かつ他の曲もそれら名曲に追随するクオリティを持った楽曲なので、アルバムを通して非常に聴き応えがあるということかなと思います。
緩急自在の本作の名曲
本作においても、絶対的な楽曲として語られることが多い名曲が2曲。
後のヘヴィメタルシーンに大きな影響を与えたとされる疾走曲「Exciter」と、あまりにドラマティックで美しいバラード曲「Beyond The Realms Of Death」という、緩急、剛柔の対照的な楽曲という変幻自在のソング・ライティングで魅了してくれていますね。
もちろん、タイトル曲「Stained Class」をはじめその他の楽曲も、聴き応え十分なハードロックがてんこ盛り状態です。
ハードロックからヘヴィメタルへ進化?
本作についての音楽評論家の方やその他の方々のレビューでは、「この作品を契機にジューダス・プリーストはブリティッシュ・ハードロックからヘヴィメタルへと大きく舵を切ったと言える衝撃作」と口を揃えて語られていることが多いようです。
そしてこれまた面白いように右へならえ状態で「ヘヴィメタルとしてはサウンドの軽さは否めないが…」というご意見。
正直ベースをモットーに本ブログを書かせてもらっていますので率直に言いますと、「ちょっと何言ってるかわかりません」状態です…。
私の物差し(個人的主観)では本作は明らかに「ブリティッシュ・ハードロック」。
本作の持つ独特の湿気と時折魅せるただならぬ様式美といった雰囲気は、70年代のブリティッシュ・ハードロックそのものでしかないように思います。
よって、バスドラのパタパタ感も、時折驚かされるギターソロの素っ頓狂なトーンも、当時が故の納得のサウンドであり逆にそれこそが「渋さ」なんじゃないかなぁと受け止めています。
ジューダス・プリーストがヘヴィメタル・アルバムを明確に意識してリリースした作品は8枚目の「Screaming for Vengeance(邦題:復讐の叫び)」からなのではというのが私の整理です。
まあ、この辺は人それぞれ色々な思いや聴き方があると思いますし、私の感受性や音楽的知見の欠落もあると思いますので、あくまで個人的意見ということですが…。
1978年という時代感覚
余談ですが、1978年という時代感覚に少し触れておきます。
主な出来事としては、
・成田空港の開港~管制塔占拠事件 ⇒ 翌1979年にはRIOTが「NARITA」をリリース
・当時日本一の高層ビル「池袋サンシャイン60」が完成
・キャンデーズが解散~普通の女の子に戻りました
・レコード大賞はピンクレディー「UFO」
といった具合いです。
ご多分に漏れずに当時の私も能天気に頭の上に手をのせて「UFO!」とかやっていた頃、既にジューダス・プリーストは本作のようなハードロックの名盤を粛々と世に送り出していたという事実…。
冷静に振り返ると恐ろしささえ感じて寒気がしてきます…。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ロブ・ハルフォード
- ギター : K. K. ダウニング
- ギター : グレン・ティプトン
- ベース : イアン・ヒル
- ドラム : レス・ビンクス
収録曲
- Exciter – 5:33
- White Heat, Red Hot – 4:19
- Better By You, Better Than Me – 3:23
- Stained Class – 5:18
- Invader – 4:10
- Saints in Hell – 5:28
- Savage – 3:28
- Beyond the Realms of Death – 6:51
- Heroes End – 4:59
おすすめ楽曲
Exciter
本作から新加入のレス・ビンクスのドラムが張り切っている疾走チューン。
ジャケットデザインのように脳ミソをデスビームで射貫かれたような感覚に陥るロブ・ハルフォードのハイトーンヴォーカルが炸裂します。
序盤のギターソロでは思いっ切りすっとボケたトーンで開き直ったかのように微塵の迷いもなく独創的なフレーズを展開。
終盤のギターソロでは対照的に、ツインによる計算されつくしたようなハモリソロという様式的な構成が見事です。
そして極めつけはラストのロブ・ハルフォードの金切り声の大気圏突破という、もはや伝説的な名曲ですね。
Stained Class
オープニングのギターフレーズで一発でもっていかれ、続くリフでもとにかく格好良さしか感じないアルバムタイトル曲。
渋く刻まれていくリフに、官能的とも言える歌い回しのロブ・ハルフォードのハイトーン・ヴォーカルがまとわりつくように乗っかっていきますが。
意外にもサビメロはキャッチーかつやや哀愁感も感じさせメロディックという、聴き込むごとに新鮮な旨味がよどみなく滲み出て来るような楽曲ですね。
Beyond the Realms of Death
イントロの美旋律とロブ・ハルフォードの情感込めたヴォーカルがあまりに美しく心奪われていると、これまたヘヴィなリフに一気に持っていかれるドラマティックな曲展開。
油断も隙もありません…。
そして何と言ってもこの名曲のクライマックスは圧巻のギターソロですね。
ソロの出だしからして格好良過ぎ!。
続いて泣きメロの洪水のように押し寄せる長尺のギターソロには大満足のご馳走様状態。
更にダメ押し的にラストもギターソロとハイトーンヴォーカルで〆るという盤石の楽曲構成は贅沢過ぎます。
まとめ
本作のリリース以降、やがて1980年に入るとNWOBHMムーブメントによるヘヴィメタルバンドが続々と量産されてくることになりますが、それらのバンドに大きな影響力を与えたアルバムとしての評価には全く異論のないところです。
ですが、本作そのものをもってしてヘヴィメタルの原型とか必要以上に大袈裟に位置付けるのはいささか無理があるように思えてなりません。
(オープニング曲のExciterのみをもって、後出しジャンケン的に論じればそう言えなくもないかも知れませんが…)
特にサウンドメイクについてはその時代における技術的な限界もあり、当時の最新の音でも現代においては軽いだのチープだのという評価となってしまいますよね。
リアルタイムに作品を体感していない以上、避けては通れない道なのでしょうが、この手の議論は少し視野を広げて当時の時代背景、レベル感なども考慮しながら考える必要があるのかなぁと思いました。
ということで、本作は1978年にリリースされた当時の最先端をぶっちぎりで駆け抜けたブリティッシュ・ハードロックの超名盤とさせて頂きます。
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