PRAYING MANTIS=蟷螂(かまきり)
「蟷螂」の日本名の由来は「1.鎌で切る」「2.鎌を持ったキリギリス」の2つの説があるそうです。
そんなカマキリにまつわる私の思い出は、小学生の頃に行った家族旅行の帰り。
家に帰宅した際の両親の絶叫!。
そう、兄が大事にしていたカマキリの卵が旅行の留守中に孵ってしまい、家中がカマキリだらけになっていたことでした。
そんなトラウマが影響したのかどうかは不明ですが、私に多大なる影響を及ぼした兄の膨大なレコードコレクションの中に「PRAYING MANTIS」は一枚もありませんでした…。
PRAYING MANTIS / A CRY FOR THE NEW WORLD レビュー
死ぬほど聴いたプレマン最高傑作
「A CRY FOR THE NEW WORLD」は1993年にリリースされたプレマン3枚目のアルバムです。
プレマンと言えば、1981年リリースの伝説のデビューアルバム「TIME TELLS NO LIES」で、叙情的でドラマティックな正統派ヘヴィ・メタルを披露し、NWOBHMの代表格としてIron Maidenとともにシーンでの注目を集めました。
しかしその後、レコード会社との契約問題やメンバー交代などにより不遇の時間を費やしてしまい、本来のバンドとしての活動が思うように出来なくなってしまいます。
約10年後の1991年にようやく2枚目のアルバム「PREDATOR IN DISGUISE」をリリースして息を吹き返した時には、往年のファンはみな咽び泣きました…。
そして迎えた本作3枚目「A CRY FOR THE NEW WORLD」。
結論から言ってしまいましょう。
これぞプレマンの最高傑作!。
もう本当に、このCDは何度再生したことでしょう。
再生しすぎて、レンズからの照射でCD盤面が茶色く焦げているほどです(嘘です)。
前作2枚目アルバムでやや不評だったデニス・ストラットンによるアメリカン志向の楽曲は、本作では却下。
原点回帰とも言える、湿り気十分の本来のプレマン節=哀愁泣きメロお涙ちょちょ切れ路線でシーンに帰ってきてくれました。
バンドに相応しいヴォーカルが遂に加入!
プレマンの真骨頂はやはりメロディアスなツインリードのギターと、他のヘヴィメタルバンドとは明確に一線を画す「美しいコーラスハーモニー」。
それらのバンドとしてのストロングポイントを活かす必要前提条件とも言えるのが、パワーゴリ押しではない「情感豊かに歌い上げる歌唱力のあるヴォーカリスト」の存在でした。
そしていよいよ、待望の「歌える」ヴォーカリストがバンドに正式加入することに!。
その名は当時のドラマーだったブルース・ビスランドの友人「コリン・ピール」。
泣きメロ総合商社の異名を持つプレマンの哀愁メロディに、ジャスト・フィットするこれまた切なすぎるトーンのクリアな声質。
初めて本作を聴いた時、オープニングの楽曲としての完成度と共に、ヴォーカルの上手さに涙がとめどなく溢れてきたのを思い出します。
そして心の底から喜びが湧いてきて「ありがとう!コリン・ピール」と呟いていましたね。
プレマン節は、日本人好みのわかりやすいメロディラインであることから、ややもすると「クサ過ぎ」とか「マンネリ」とか言い出す輩も多いようですが、言いたい奴らには勝手に言わせておきましょう。
「クサメロ上等!」
「軟弱メロディアス万歳!」
この美しくも儚いプレマンにしか紡ぎだせない正統派メロディアス・ヘヴィメタルは、唯一無二のものであり、その完成度を更に異次元に昇華させてくれたのがコリン・ピールの表現豊かな歌唱だと思います。
ぬか喜びに終わった儚い夢
歴代最高のヴォーカリストを擁して、さあ!ようやくこれからプレマンがその実力をシーンに知らしめる時が来た!と大いに盛り上がったプレマン信奉者。
しかしまたしても信じられない悲報が届きます。
「プレマンからヴォーカルのコリン・ピールが脱退」
「脱退理由は、自らの舞台俳優としてのキャリアを優先したため」
「チーーーン…」って感じでしたね。
これからと言う時に、なぜ?!。
期待が大きく膨らんでいただけに、この時はホント落ち込みました。
MSGにグラハム・ボネットが加入して「黙示録」という最高傑作を1枚だけ遺してすぐに脱退してしまった時と同じような喪失感…。
頼むからそんなところでファンを泣かせないでくれよ!プレマン。
って感じです。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: コリン・ピール
- ギター : デニス・ストラットン
- ギター : ティノ・トロイ
- ベース : クリス・トロイ
- ドラムス : ブルース・ビスランド
収録曲
- Rise Up Again – 4:10
- A Cry for the New World – 5:27
- A Moment in Life – 6:00
- Letting Go – 7:32
- One Chance – 5:30
- Dangerous – 5:28
- Fight to Be Free – 7:08
- Open Your Heart – 5:23
- Dream on – 5:34
- Journeyman – 6:59
- The Final Eclipse – 2:27
おすすめ楽曲
Rise Up Again
どうよ!
どうよ!!
どうなのよ!!!
この切れ味しかないプレマン節全開のオープニングは。
「再び立ち上がれ!」
立ち上がりますとも、思い切り拳を突き上げて。
危ないテンションで恐縮ですが、やっぱりこうなっちゃいますねプレマン好きは。
これはホントに泣きました~大号泣。
駆け抜ける疾走感、哀愁のヴォーカルとコーラス、キャッチーなサビメロ、美しいツインリード。
プレマンにしか成し得ない孤高の境地。
これぞNWOBHM正統派メロディアス・ヘヴィメタル・バンド「PRAYING MANTIS」の完成形です。
A Cry for the New World
続く2曲目は派手さこそないマイナー調の楽曲ですが、コリン・ピールのヴォーカルが際立ってますね~。
歌い出しから徐々に盛り上げ~サビで頂点に達する哀愁メロディもさることながら、クリアなトーンのギターソロも伸びやかなしっかりとした音像を残しています。
タイトル曲だけあって、美しい美旋律の洪水の中にも内なる情熱、パワーが秘められた名曲だと思います。
Letting Go
ここで迎える本作の個人的最高楽曲。
ツインリードが奏でるイントロ~ドラマティックなメロディ展開。
かつてこれほどまでにドラマティックなオープニングを演出する楽曲があったでしょうか。
これはもはや反則技、一撃必殺の禁じ手。
もう泣き過ぎて涙もとっくに枯れ果てました。
波状攻撃で押し寄せてくる泣きのイントロフレーズは、さすがわかってらっしゃるお約束の反復回数で大満足。
お腹一杯になったところで曲本編に突入すると、そこで待ち受けるはコリン・ピールのしっとりと歌い上げる美し過ぎるヴォーカル。
そして、歓喜に湧いた川崎の夜にも、いい歳こいたむさ苦しい男たちが一人残らず大合唱した「Letting Go」のサビ。
楽曲終盤ではライトな曲展開で変化をつける手堅い戦略も怠りなく、盤石のエンディングで終ります。
気が付けばあっという間の7分32秒の長大作の超名曲です。
Fight to Be Free
影の名曲と言われる「プレマン臭」「プレマン節」てんこ盛りで構成された「ならでは楽曲」。
隠れキリシタンのように人目を忍んで応援を続けてきたデビューアルバムからの古参ファンには、特に支持の厚い楽曲ではないでしょうか。
イントロや間奏ミニギターソロなどに、往年の泣きメロだけでないモダンなフレーズも取り入れられ、確実にバンドとしての進化も実感できる渋みを感じる名曲ですね。
Dream on
面倒くさがり屋の性格で集中力が無い人間のため、おすすめ楽曲であまりバラード曲を紹介することは無いのですが、プレマンのバラードだけは別格です。
映画を見ているかのような錯覚に陥ってしまうキーボードとアコースティックギターによる奇襲攻撃。
感情移入も甚だしいコリン・ピールの熱い歌唱、切なくも美しくサビへと導く珠玉のメロディ展開。
最上級の感動のバラードとはまさにこの曲のこと。
Journeyman
実質的なアルバムのラストを締める激しさを持った楽曲。
基本フレーズが何かの曲に似ているとかの議論はこの際置いておきましょう…。
弾き納めの如くギターがかなり弾きまくっていて個人的には大好きな曲です。
エンディングでのぶった切り終了は、知らなきゃ良かった悲しい結末を表現したもの。
この曲の内容を、ティノ・トロイがライナーノーツで語っています。
人類の暴挙により壊滅的な状況の地球以外に住める惑星は無いのか、宇宙を探索する使命を課せられた男が旅立つものの、その途中で既に地球自体が滅亡してしまうというもの。
当時あんまり真剣に読んでなかったのですが、これには「さすが社会派プレマン、当時の時点で既にSDGsの最先端を突っ走っていたとは…。」とビックリ!。
もちろん、将来の子供たちのために地球の未来を持続可能なものにしていかなきゃいけないんだけど…。
自分達のバンドの未来ももう少しサスティナブルにお願いします。
「さぁ!これから」って言う時に、ヴォーカルが居なくなっちゃうことは予見、予防できなかったのか???とか思っちゃいましたけど…。
まぁ、何事も過ぎ去った事をいつまでもくよくよ考えていても仕方無いですね。
前だけ向いていきましょう。
次っ!次っ!。
まとめ
伝説とも言われたデビューアルバムで、NWOBHMの代表格として特に日本では大きな期待が高まったPRAYING MANTISでしたが、契約問題や不安定なメンバー体制などにより、シーンから徐々に存在感が無くなりつつありました。
デビュー後約12年という気の遠くなるような長い時間を経てリリースされた本作3枚目のアルバム。
これまでの最大の課題だったヴォーカリストに実力者のコリン・ピールを招聘。
ストロング・ポイントであるメロディアス性、ドラマティック性溢れる楽曲に相応しいヴォーカリストの加入で、更なる高いレベルに昇華させたプレマン節として本作が完成しました。
疾走、ミディアム、バラードと全ての楽曲において一貫している泣きメロ総合商社としてのプライドと、新たな試みにも果敢に挑戦する姿勢を魅せた誉れ高きプレマンの最高傑作。
くれぐれも泣き過ぎによる涙枯渇~ドライアイには十分に注意されたしっ!