SURVIVOR / WHEN SECONDS COUNT レビュー
メロディアス・ハードロックが好きで良かった~本作との出会いに感謝
アメリカン・ハードロック・バンド「SURVIVOR」といえば1982年公開の映画「ロッキー3」のテーマ曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」があまりにも有名ですね。
しかしあまりにも売れ過ぎ、その後も洗練された作品を連発…。
そのため、特にメタラー界隈では「あんな軟弱産業ロックなんか聴きやがって」と白い眼で見られ、ファンにとっては皮肉にも肩身の狭い思いをしてきました。
(いやいや、特に誰かから言われた訳でもないのに、あまりに卑屈…)
でも全然良いーんですっ!(川平慈英風に)
自称軟弱メロハー愛好会会長を自負する男としては、自身の感性のみを羅針盤として突き進むだけなのです。
という訳で今回はSURVIVORの最高傑作をビシッと世に知らしめてやろうと意気込んだわけですが、いきなり難題が目の前に立ちはだかることに…。
そうです、最高傑作って「VITAL SIGNS」と「WHEN SECONDS COUNT」どっちやねん問題です。
このブログでは、甲乙つけがたい2つの名盤作品のどちらを選ぶか困った時には、「自分が一番好きな楽曲が収録されている方を選ぶ」方程式で決定することにしております。
今回も上記方程式に従い、名曲「IS THIS LOVE」収録の本作「WHEN SECONDS COUNT」に軍配があがりました。
そして他にも、苦悩の時期に背中を押してくれた「MAN AGAINST THE WORLD」「REBEL SON」などの数々の名曲も収録されている本作。
総合的に判断してもやっぱり自分に正直な選択になったような気がします。
いやぁ~、改めて久しぶりに本作に接してみてつくづく想うのは「メロディアス・ハードロックが好きで良かった」そして「本作に出会えて良かった」とという感謝の念ですね。
HR/HMのみならず、音楽というものは聴く人のシチュエーションによって心の拠り所、支えになり得るということを強く実感させられます。
(もちろん、音楽以外のスポーツや他の芸術、文化も同様ですね)
前作「VITAL SIGNS」に輪を掛けて洗練され哀愁度が増した超絶名盤
SURVIVORの最高傑作「WHEN SECONDS COUNT」は1986年にリリースされた6枚目のアルバム。
「アイ・オブ・ザ・タイガー」を歌ったデイヴ・ビックラーがバンドを去った後、ジミ・ジェイミソンがヴォーカルに加入。
売れ線請負人ロン・ネヴィソンのプロデュースによる前作アルバム「VITAL SIGNS」は好セールスを記録しました。
そして本作も引き続きロン・ネヴィソンによるプロデュース。
メロディアス性、哀愁感、音像の厚みと奥行き、アルバムへの楽曲配置順など、あらゆる面で前作よりも研ぎ澄まされた究極の作品に仕上がっていますね。
「VITAL SIGNS」を普通に良い楽曲が揃った名盤とするならば、「WHEN SECONDS COUNT」は心を震わす感動の楽曲が揃った超絶名盤と言いたいくらいに素晴らしいです。
HR/HM一つとってみても様々なカテゴリーが存在し人それぞれに嗜好も違いますが…。
たまには息抜きに本作のような美しいメロディアス・ハードロック作品にゆったりと耳を傾けてみるのも良いものだと思います。
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ジミ・ジェイミソン
- ギター : フランキー・サリヴァン
- ベース : ステファン・エリス
- ドラム : マーク・ドラウベイ
- キーボード: ジェームズ・ペテリック
【収録曲】
- How Much Love -3:58
- Keep It Right Here -4:28
- Is This Love -3:42
- Man Against the World -3:35
- Rebel Son -4:37
- Oceans -4:39
- When Seconds Count -4:05
- Backstreet Love Affair -4:01
- In Good Faith -4:22
- Can’t Let You Go -4:42
おすすめの楽曲レビュー
How Much Love
軽快なキーボードのイントロを初めて聴いた時には、前作「VITAL SIGNS」収録の「High on You」と混同しそうになりましたが…。
本作のオープニング楽曲は、ヴォーカルメロディの美しい流れと抑揚がさらに増し増し状態となっている全く似て非なるものです。
ヴァースからサビメロにかけての哀愁全開の盛り上がりときたらもう、河川敷の土手の上を自転車で思いっきり立ちこぎして突っ走りたくなっちゃう感じですよね~(いや、わからんて…)。
相変わらず撫でるようなスネアの音が優しすぎますが、渋いギターソロもしっかりと入っていて元気がもらえる楽曲です。
Keep It Right Here
続く2曲目も美しいキーボードの旋律に心が浄化されていきますねぇ~。
それにしてもこのジミ・ジェイミソンというヴォーカル、メロディを全然こねくり回さずに淡々と歌いこなして上手すぎますね。
変な歌い回しとかして自己主張してきたり、必要ないところで妙に力んじゃったりする一人相撲ヴォーカリストが多い中。
全くそんな素振りもなく譜面に忠実にひたすら丁寧に歌っているように感じます。
余程、自分の声に自信があるのでしょう…。
楽曲ラストにかけてはブライアン・アダムス調のギターソロがさりげなく入ってきて格好良いですね。
そしてこの2曲目は実は次のハイライト楽曲への布石、あくまでウォーミングアップ的な位置付けなのでありました…。
Is This Love
はい、ここで早くも出ました最高楽曲。
メロディアス・ハードロックと一口で言ってもこれまた様々な切り口がありますが、 この名曲は少なくとも自身の中のメロハーに求める要素のうち結構な部分で100点満点を差し上げたいですね。
一部にはこの手の曲を商業的だとかのたまう輩もいるようですが、いやいや元々みんな生業として売れることを望んでいるわけでボランティアでバンドやってるわけじゃないでしょって…。
まぁ、人それぞれ考え方は異なりますね…。
美しく哀愁を帯びたヴォーカルメロディ、キャッチーなサビと深みを与えるコーラス。
あくまで副菜に徹する伸びやかなトーンのギターソロなど、全てが一体となって至福の時間を与えてくれる楽曲です。
Man Against the World
続く4曲目はタイトルからしていかにもSURVIVORっぽい楽曲ですね。
このピアノのイントロを聴いただけで思わずセンチな気分になってしまい泣きそうになります。
本作リリースの1986年は自身の人生においての(ちょっと大げさに言って)転換期。
コピーバンドからも脱退しそのまま人生の新しいステージに進んだ直後で、色々な不安やプレッシャー、孤独感や葛藤のなかで支えとなったのが間違いなくメロディアス・ハードロックでした。
本曲の他にも、同じ1986年リリースのBOSTON 3枚目アルバム「Third Stage」にはこれまた名曲「To Be a Man」などが収録されていましたね。
これらの「メロハー涙ちょちょ切れ楽曲」に鼓舞され、背中を押してもらいながらこれまで生きてきたと言っても過言ではないので、本当に心から感謝です。
Rebel Son
前曲「世界を敵に回した男」からの「反逆児」という系譜。
結局、レコード盤のA面全てをレビューしてしまいましたがこの一連の流れはやはりどの曲も外せません。
本曲でも魅せているスローに始まりサビに向かって力強く盛り上がっていく巧みな楽曲構成はやはりSURVIVORの十八番とも言える真骨頂。
これまた前作「VITAL SIGNS」に収録の「First Night」 をよりブラッシュアップさせ、ひたすら男の生き様のみを歌った人生訓のような楽曲です。
Oceans
おそらく当ブログ史上初のオープニングから6連発レビューとなりました!。
レコード盤で言うところのB面1曲目は、A面で散々苦難を乗り越えてきた甲斐あってようやく辿り着いた大海原といったところでしょうか。
これまで影を潜めていたベースの音色が、まるで深海から湧き出てくるようにうねりとともに響いてきますね。
そしてそれに呼応するかのようにギターも大人のプレイで渋さ爆発のフレーズをここぞとばかりにかましています。
この音像、楽曲構成、エモーショナルな歌唱、各演奏パートのいぶし銀のようなプレイ、これは紛れもなく極上のハードロック以外の何ものでもありません。
Backstreet Love Affair
8曲目に収められた「もろFOREIGNERっぽい」珠玉の楽曲。
こっそりFOREIGNERのアルバムに混ぜ込んでおいても、私のような単純男だったらそのまま信じちゃいそうです。
反則級のキーボードの切なく美しい旋律、歌い出し1フレーズ目から哀愁をドバドバあふれさせているヴォーカルメロディ。
もう、産業ロック警察が鬼の首でも取ったかのように目の色変えてキャンキャン言いそうです…。
クセの強いルー・グラムの歌唱を濃厚こってり豚骨スープとするならば、ジミ・ジェイミソンの直球勝負の澄み切った歌唱はどんぶりの底が透けて見えるあっさり醤油系の東京ラーメンのスープのよう。
どちらも中毒性が高く定期的に身体が欲しがる魅力があります。
Can’t Let You Go
アルバムのラストを締め括る本作の中では一番のハードチューン。
これまた「もろブライアン・アダムスっぽい」楽曲ですが、まぁ良い楽曲を追求した結果が類似性をもたらしたのでしょう…。
無骨に(とまでは言えないくらいに優しさも感じさせながら)かき鳴らされるシンプルなギターリフ。
タメ感たっぷりで進行していくヴォーカルメロディ。
その先に行き着く伸びやかなサビメロは開放感が抜群ですね。
中盤でのギターソロも開放的な野外フェスなどで渋くキメたくなるような大人のプレイです。