VAN HALEN / 1984 レビュー
最大セールスを記録した絶頂期の名盤
1984年リリースのVAN HALEN 6枚目のアルバム。
ジャケットデザインには「MCMLXXXIV」と「1984」を意味するローマ数字が表記されていますね。
タバコを持った天使のデザインも、お堅い団体様などからクレームが出て物議を醸すかと思いきや、波風は立たずにむしろ「ナイスなセンス」くらいの高評価で受け入れられていました。
結果的にVAN HALEN史上最大のヒット作となった本作ですが、アルバムとしては当時のお化け作品「Michael Jacksonの『Thriller』」の後塵を拝することとなり、その辺りは「JOURNEY『Frontiers』」も同様ということで仕方ないですね。
本作を最後に、バンドのフロントマン、そしてハードロック界のSEXシンボルと言われたヴォーカルのDavid Lee Rothは脱退することに…。
まさにバンドとしての最大の成功を掴んだ矢先、絶頂期の脱退には滅茶苦茶驚きましたが、デイヴならではのサービス精神とエンターテイナーとしての血が騒ぎすぎて、最早バンドという枠から溢れ出てしまっていた感じでしたので、仕方ないかなとも思いました。
まあ、簡単に言っちゃえば「調子に乗り過ぎて」「浮いてた」ってところでしょうか…。
キーボードに度肝を抜かれた進化系ハードロック
本作はいきなりタイトル楽曲「1984」というキーボードのインスト曲でスタート。
約1分の短い楽曲というか効果音ですが、それはまさに近未来への夜明けを予感させるような世界観に聴く者を引きずり込んでいくとともに、続く「JUMP」のイントロをより強烈に印象付けていますね。
デビュー作「炎の導火線」以来、VAN HALEN = エディのギターという定石の展開を覆す、明らかに進化を示した流れに完全に意表を突かれました。
勿論、無双状態のギターテクニックによる従来型のギターワーク中心楽曲も相まみれる作品ではありますが、やはりこのオープニングはあまりにも衝撃的!。
大袈裟ですが、ハードロック界の新しい夜明けみたいなものを感じちゃいましたね~。
メンバー・収録曲
メンバー
- ヴォーカル: デイヴィッド・リー・ロス
- ギター : エドワード・ヴァン・ヘイレン(兼キーボード)
- ベース : マイケル・アンソニー
- ドラムス : アレックス・ヴァン・ヘイレン
収録曲
- 1984 – 1:07
- Jump – 4:04
- Panama – 3:32
- Top Jimmy – 3:00
- Drop Dead Legs – 4:14
- Hot for Teacher – 4:44
- I’ll Wait – 4:45
- Girl Gone Bad – 4:35
- House of Pain – 3:19
おすすめ楽曲
1984
前述の通り、本作の方向性というか全てが象徴された1分であると同時に、続く楽曲「JUMP」を最高に盛り上げる序曲ともなっている重要な1分。
これから始まる「進化系ハードロック作品」「ハードロック界の新しい夜明け」のオープニングに相応しい近未来的な世界観に武者震いしそうです。
JUMP
もはや VAN HALEN の代名詞となった楽曲で、ハードロックファンならずともこのキーボードによるイントロは誰もが一度は耳にしたことがあることでしょう。
当時のリアルタイム世代のハードロックファンにとっては、「おいおい、狙い過ぎてぐにゃぐにゃに軟らかくなっちゃったなVAN HALEN、大丈夫か…」というのが率直な印象。
エディのギターリフ以外で始まる楽曲(しかもオープニングで…)なんぞ予想だにしていない中で、これは完全に意表をつかれましたね~。
しかも、このキーボードのイントロがまた一度聴いたら耳にこびりついて離れないキャッチーさ!。
なんだか聴いてると「ほんわか」した気分になってくる「ほのぼの感」もあって、JUMPって言うよりふわふわ浮いてるような浮遊感の方が強かったです。
でも、その辺りが逆にハードロックを普段は聴かないような新たなファン層を囲い込んで、ハードロック界の新しい景色、夜明けを見せてくれた大きな要因だったに違いありませんね。
そして、忘れちゃならないのは相変わらずゴムまりのように跳ねまくっているドラムと、曲中のギターソロからのキーボードソロへの美し過ぎる流れ。
凄まじいスケール感とドラマティックな展開ですね~。
今まで何百回聴いてきたかわかりませんが、今改めて聴いて鳥肌が立ってしまいました…。
PANAMA
続く3曲目は一転してこれぞエディのギターというハードロックそのもののギターリフが爆発。
演奏のハードさと歌メロのキャッチーさを融合させた VAN HALEN の十八番的な楽曲ですね。
クライマックスは何と言ってもギターソロに続くスローダウンしての楽曲展開。
何気なく刻まれているバッキングとともに官能的なフレーズがたまりません。
HOT FOR TEACHER
正直、楽曲としての魅力は薄いものの当時バンドの真似事をしていた視点から聴いた時にはぶっ飛び級のインパクトある楽曲でしたね~。
初めて耳にした時には恥ずかしながらイントロの音がドラムの2バスだとは思わなかった位に、何をどうやって演奏しているのかが頭の中でこんがらがってしまう曲。
(単気筒のバイクでも吹かしてる音かと思いました…)
しかも、それらのバカテクをこのノリの楽曲に軽く乗せちゃうのがまた凄いですよね。
必死さ0(ゼロ)。
ちょっとこんな感じどう?、ノリノリだろ?、位の余裕な感じでこれを聴かせちゃうのが VAN HALEN というバンドの真の凄さですかね。
ヴォーカルをはじめ、この面子でないと成立しない楽曲でもありますが…。
I’LL WAIT
「JUMP」も良いのですが、個人的には本作の最高楽曲に位置付けております VAN HALEN らしくない哀愁のミドルチューン。
スネアの音だけはVAN HALENですが、以外は他のバンドがやっててもおかしくない位にありがちと言えばそれまでのハードロックですね。
でも、この切ないキーボードのイントロから盛り上がっていく展開には滅法弱いのです私は…。
聴けば聴くほどに次から次へと色々なバンドが想起される不思議な楽曲です。
まとめ
オープニングからキーボードが大々的に導入され、ファンを驚かせた VAN HALEN による進化系ハードロックの完成版。
無双状態のテクニックを担保に、余裕の挑戦で見事に大成功を収めてしまったた感がありますが、そこはやはり楽曲作りの妙技があってこその境地ですね。
しかも従来型のギターギンギン楽曲も余裕で差し込みながら奥行きの深いアルバムとして「歴史を創った」名盤と言えるでしょう。
本作を最後にデイヴィット・リー・ロスが脱退してしまうので、以降は独特の「ノリ」の部分は封印されますが、変わってサミー・ヘイガーならではのパワー系ハードロックに移行していくのも興味深いところです。