VANISHING POINT / Dead Elysium レビュー
イカ天に登場していたVANISHING POINTとは別物です…
1989年~1990年にかけて毎週土曜日に放映されていた深夜番組『三宅裕司のいかすバンド天国』(イカ天)。
三宅裕司と相原勇の司会で毎週10組のアマチュアバンドが紹介されていた夢のようなTV番組ですが、その番組にもバニシング・ポイントというバンドが出演していたのを記憶しています。
当然、今回ご紹介したいバンドとは全くの別物ですが、チョッとだけ触れておきますと…。
都はるみを髣髴とさせる「こぶし」を効かせたパワフルな歌唱が印象的だったヴォーカル。
おへその辺りを中心にクルクルとベースを回転させるパフォーマンスが印象的なベース。
この2人が女性で衣装も結構キテました…。
そして、恐らくリーダーであろうギターの男性は、イングヴェイそっくりの衣装をまとい、なり切ってポージングをキメまくるテクニシャンでした。
今観ると、「ガキ使 笑ってはいけない」的な動画となっていますが…。
平和な良い時代でしたね…。
因みに、私がイカ天バンドで一番好きだったのは「近所のガキをだましてバンドを組んだ」セメントミキサーズ。
ファンキーでテキトーな感じのスタイルが妙にハマりました。
↓↓↓セメントミキサーズの詳細レビューはこちらの記事からどうぞ↓↓↓
セメントミキサーズ / 笑う身体 近所のガキをだまして組んだイカ天バンド
豪州産パワーメタルバンド「VANISHING POINT」
いつもながら前置きが長くなりすみません…。
「VANISHING POINT / Dead Elysium」は2020年8月28日リリースのバンド6枚目のアルバム。
私がこのバンドを知ったのは他のブロガーさんが「おすすめ曲」として紹介していた本作2曲目に収録の「Count Your Days」のMVを観たのがきっかけです。
ですので、オーストラリア産のバンドであるということ以外にはこれと言った語れるような情報は持ち合わせておりませんが、既出の周知情報を少しだけ整理しておきます。
バンドの結成は1995年頃~デビューアルバムは1997年にリリースされています。
その後のメンバー交代により、結成当時のメンバーで残っているのはヴォーカル:シルビオ・マッサロと、ギター:クリス・ボルシアンコの2人のみのようです。
このバンドでの重要な要素となっているキーボードについては、本作ではクレジットが無いようですが、おそらくダニー・オールディングが継続して担当しているものと思われます。
その後も不定期ながらアルバムをリリースし続け、本作は約6年ぶりとなる最新作です。
個人的にどストライクなサウンドと音楽性
サウンドは、シンフォニックメタルの数歩手前で踏み止まった感があり、個人的には大好物。
「格調」「キラキラキーボード」という世界観まではあえて到達させずに、あくまで切れ味抜群のギターを主軸にし、味付け役として要所要所で幻想的なスケール感を醸し出していく程度のキーボード。
それらが互いに織り重なりながら流麗なメロディラインを構築していくというスタイルです。
そして、その美しいメロディラインの上を、シルビオ・マッサロの野性味あふれる野太い声質のヴォーカルが熱量半端なく歌い上げていくというのが基本形となっています。
ややもするとただの暑苦しさだけが誇張され、コテコテな感じに陥りがちな男臭いヴォーカルスタイルですが…。
バックの剛柔巧みに美しく展開されるメロディラインによって見事に中和され、非常に完成度の高い楽曲を全身で浴びているような感覚が味わえる作品だと思います。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: シルビオ・マッサロ
- ギター : クリス・ポルシアンコ
- ギター : ジェームズ・マイヤー
- ベース : ガストン・チン
- ドラムス : ダミアン・ホール
収録曲
- Dead Elysium
- Count Your Days
- To the Wolves
- Salvus
- The Fall
- Free
- Recreate the Impossible
- Shadow World
- The Healing
- The Ocean
おすすめ楽曲
Dead Elysium
イントロのキーボードを聴いただけで早くも本曲、本アルバムへの期待がうなぎ登りに上昇してしまいます。
怖い程に重く冷酷に刻まれていくリフを基調として、メロディアス&パワフルなフレーズで構築された楽曲が荘厳に走り抜けていくといった印象。
楽曲全体感はミステリアスな近未来イメージ(今風)な雰囲気なのに対して、ギターは温故知新の如くどこかクラシカルで懐かしいバッキングやフレーズで鋭く切れ込んできます。
クイーンズライチを思わせるような展開の変化によるドラマティックな演出も見事で、まさに老若男女・全世代対応型の楽曲と言った感じ。
Count Your Days
劇的なオープニング曲に続き、2曲目にして早くも本作の最高潮点(満潮)を迎えます。
誰もが少なからず自身が抱く「理想のHR/HM曲」のイメージってあるかと思うのですが、この楽曲は私にとっての「理想のHR/HM曲」に近いかな~とか思えてしまう程に、大好きな曲です。
シンプルな骨太のリフで始まるパワーチューン。
武闘派スタイルの声質のボーカルが、パワフルかつメロディアスな楽曲に見事に融合しながら時に哀愁をも漂わせて一気に押しまくってきます。
その「琴風のガブリ寄り」の如き激しい攻め寄りに、リスナーはもはやなす術がありません。
映像ではヴォーカルのシルビオ・マッサロが拳を高く突き上げるクライマックスシーンがありますが、既にこちらは楽曲開始当初から拳を突き上げまくっていますので、それに呼応するかのようなキメのシーンには思わずゾクゾクっときちゃいますね。
To the Wolves
いきなり、デヴィッド・カヴァーデルを髣髴とさせるような妖艶な色気のあるヴォーカルから始まる楽曲。
シルビオ・マッサロというヴォーカリストの表現力を垣間見た(聴いた)一瞬が嬉しくなります。
基本的な曲の作りはどの曲も似ている印象となりますが、この曲においてもスケールの広がりを感じさせるサビメロは特筆に値するクオリティ。
加えて美しいギターソロがアレンジされてくるという、必勝パターンは堅持されており、「似ている印象」ながらも「飽きさせない」楽曲がつづいていきます。
The Fall
この曲も基本的には2曲目の「Count Your Days」と構成は一緒となりますが、より流麗でキャッチーな印象です。
ギターソロも爽やかで軽快なフレーズが印象的で、聴いていて気持ちが良いですね。
本アルバムは構成としては完全に前半畳みかけ勝負に来ている印象で、良曲が前半に集中気味です。
とはいえ、前述したように一度聴いた時には「似たような曲調」と感じるものの、何度かじっくりと聴き込んでみると各楽曲の特徴や輪郭がより鮮明になってきます。
きちんと飽きさせない工夫がされていますね。
まとめ
1997年にデビューしている豪州産のメロディック・パワーメタル・バンド「VANISHING POINT」。
かつてのバンドブームの時に放映されていたTV番組『三宅裕司のいかすバンド天国』(イカ天)に登場していたバンドとは全くの別物です。
(誰も覚えてないかも…)
シンフォニック・メタルの数歩手前で踏み止まった感のある、本格正統派メロディアス・ヘヴィメタルを愚直に展開する音楽性が個人的には大好物。
美旋律メロディと野性味あふれる骨太なヴォーカルが混然一体となったスケールの大きなわかりやすい楽曲を提供してくれています。
ピロピロテクニカルに走らないメロディ勝負の泣きのギタープレイは、現代においてはもはや貴重な存在。
一人でも多くの方に聴いてもらいたいと心から願う良作です。