White Lion / Pride レビュー
バンド最高傑作に挙げる人も多い80年代名盤中の名盤
現在も根強い人気を誇るモトリー・クルーや、洗練された独特の世界観を構築したRATTなどを筆頭株として、’80年代を席捲した「LAメタル」。
その中でも、楽曲センスとテクニカルなギタープレイで他のバンドとは一線を画し、ひと際輝きを放っていたバンドが「White Lion」でした。
1985年の歴史的デビュー作「FIGHT TO SURVIVE」に続き、2年後の1987年にリリースされたのが本作2nd「PRIDE」ですね。
自分も含めて’80年代をリアルタイムで体感してきた人達にとっては、かなりの高確率で「推し」として挙げられるのがこのホワイト・ライオンの2ndアルバム「Pride」かと思います。
当時はまだLPレコード盤の最終期の頃でしたので、このジャケットデザインには迫力がありましたね。
ホントにライオンって顔がでかいです(特にオス)…。
そして肝心の中身はというと、とにかく全曲どれもがシングルカット候補、全てがヒットチューンとなってもおかしくない楽曲の完成度を誇ります。
デビュー作の音楽性を踏襲しながら、LAメタルらしからぬ哀愁を帯びたメロディラインには更に磨きがかかり、キャッチーな味付けが濃い目にされた楽曲が目白押しです。
また、それらを単なる売れ線狙いの楽曲という単純な評価で終らせないヴィト・ブラッタのテクニカルなギタープレイも特筆もの。
正統派のHR/HMを好むリスナーをも釘付けにした作品に仕上がっていることが大きなポイントですね。
クセの強いヴォーカルとトリッキーなギターの2枚看板
デビューアルバム同様に、マイク・トランプのヴォーカルは相変わらずの好き嫌いがはっきりと分かれる独特の声質とクセの強い歌い回しです。
それでも、そのハンデ?を克服してあまりある楽曲、メロディラインの素晴らしさがこのバンドの真骨頂。
(誤魔化しのきかないライブでは酷評もちらほら聞かれましたが…。)
そしてマイク・トランプと共にこのバンドの看板となっているのがギターのヴィト・ブラッタ。
デビューアルバムで大きな衝撃を与えたテクニカルかつ自由奔放なプレイスタイルは、まさしくEd VAN HALENを髣髴とさせる逸材でした。
速弾きやタッピングなどの技巧的なテクニックだけではない、メロディフレーズ作りの創造テクニックがちょっと異次元の感覚です。
まさにレベチ…。
後に、突然引退して完全に音楽シーンから姿を消してしまいましたが、是非ともTV番組「あの人はいま?」で一度取り上げて欲しい人物の一人ですね。
スコアチャート
メンバー・収録曲
メンバー
- ヴォーカル: Mike Tramp
- ギター : Vito Bratta
- ベース : James Lomenzo
- ドラム : Greg D’ Angelo
収録曲
- Hungry
- Lonely Nights
- Don’t Give Up
- Sweet Little Loving
- Lady of the Valley
- Wait
- All You Need Is Rock N Roll
- Tell Me
- All Join Our Hands
- When the Children Cry
おすすめ楽曲
今回は超名曲「Hungry」の聴き比べ特集です!
名盤中の名盤だけに全曲が名曲!。
是非ともCDを購入もしくは音源をダウンロードしてじっくりとアルバム全体は堪能して下さい。
ということで今回はアルバムオープニング曲の「Hungry」の数種類の音源を聴き比べレビューしてみたいと思います。
通常バージョン
いやぁー、いつ聴いても素晴らしいですね~。
分厚い音像でテクニカルなリフが印象に残ります。
音の厚みを最大限に意識しつつ、随所にトリッキーなオブリガードのおかずを配置。
キャッチーながらも湿り気たっぷりの哀愁感あるサビメロ。
予定調和をこれでもかと崩しにかかってくるギターソロ。
まるでフルコース料理を頂いているかのような贅沢な感覚になれます。
レア音源集『Anthology ’83-’89』より
こ、これは酷い…。
これがもしも彼ら自身ではなく、他のバンドによるカバーアレンジだったとしたら「名曲 Hungryへの冒涜」と糾弾されるレベルです。
イントロに付け足された「ありがちでわざとらしいアレンジ」には若干の期待感を持ったのですが…。
いざ曲が始まった途端のズッコケぶりに思わず頭を抱え込んでしまいます。
折角の’80年代LAメタルのベスト「リフ大賞」にノミネートされてもおかしくないレベルの「至宝のリフ」を投げ捨ててしまうという暴挙!。
そして、「タメ」の美学、哀愁の「間」といった本来この楽曲が持つ最大の魅力的要素をあっさりと放棄してしまった安直なアップテンポ化。
もう、意味が全くわかりません…。
折角の哀愁メロディをアップテンポにしてどうする?(怒)
もうバンドメンバーやプロデューサー?の喉元に思いっ切り「地獄突き」を入れてあげたくなりますね。
(ついでに、倒れたところにエルボーも落としてやりましょう)
この軽々しい安っぽさ…。
一歩間違えるとどんな名曲もこんな無残な駄曲になってしまうんですね~怖い怖い。
運転免許の更新時に違反者講習で見せられる「ヒヤリハット動画」を見た時のように背筋が凍り付きます。
そして何よりも許せないのがドラム。(容赦なくまだ書くのか…)
もはやプロとしての自覚無いでしょ的な、無気力なお囃子太鼓、合いの手状態じゃあーりませんか!。
このバンドが短命に散った本当の理由が垣間見れるような悲しい音源でした…。
ライブ音源
続いては、ライブ音源です。
マイク・トランプの息切れヴォーカルを一生懸命にフォローしようとするヴィト・ブラッタの涙ぐましい奮闘プレイぶりが聴ける友情の証音源ですね。
WHITE LION は元々4人編成のシングルギターバンドなのでライブでの音埋めには苦戦必至。
そんな状況の中、更に酸欠?のような息切れヴォーカルにその足を引っ張られているている印象のヴィト・ブラッタが気の毒に思えてきます。
しかし、そんな重圧をものともせずにヴィト・ブラッタのギターは心地良いハーモニクス音とトリッキーなフレーズを連発させながら楽曲中の音の隙間をオブリガードで見事に埋めていってますね。
映像を見なくとも聴いてるだけで「相当色んなことやってますね」と想像できちゃう位にトリッキーなおかずがてんこ盛りです。
反面、こちらでも気になってしまうのはドラムの不安定さ。
音の隙間をなるべく作らないようにとの意図なのか、常に一人暴走状態ですね。
おかずも安直であまり魅力を感じず、むしろ入れないでくれた方が良かったのに的なレベルで残念です。
まとめ
デビュー作に続き、本作でも完成度MAXの楽曲を量産してきたホワイト・ライオンの魔法の泉。
言うまでもありませんが、’80年代ハードロックの名盤中の名盤とされる本作には「When the Children Cry」や「Wait」と言った名曲が収録されています。
バンドをメジャーシーンに一気に押し上げたシングルヒット曲ですね。
そして、他にも「Lonely Nights」や「Don’t Give Up」といったデビューアルバムの音楽性をそのまま踏襲した楽曲で脇をしっかり固められた本当に隙の無い名盤です。
続く3作目ではその泉にもとうとう枯渇の兆候が現れ始めて、より一層アルバムに対する評価が分かれ、その後バンドは徐々にシーンから忘れ去られていくこととなってしまうのでした。