Ozzy Osbourne / Blizzard of Ozz レビュー
カリスマOZZYと天才RANDYによる80年代メタルの代表作
OZZY OSBOURNEの「Blizzard of Ozz(邦題:血塗られた英雄伝説)」は、1980年にリリースのデビューアルバム。
実は私のOZZYデビュー(アルバムの購入タイミングにおいて)は、JAKE.E.LEE時代の「BARK AT THE MOON」からでして、厳密には本作はそこから後追いしています。
当時ギター小僧だった私は友人とコピーバンドを組んでおり、もう一人のギターの奴が大好きでやりたがっていたのがOZZYの楽曲でした。
ということで、実際にアルバムを購入して聴き込んだのは「BARK AT THE MOON」の後となった本作。
BLACK SABBATH時代からの数々の奇行や言動、もはやクセしかないヴォーカル・スタイルなど、天然とも思える悪魔キャラのカリスマ性が既に醸成されていたOZZY。
その悪魔のもとに天使の如く現れ、見事なケミストリーにより本作を作り上げた天才ギタリストRANDY。
急に俗っぽい言い回しとなりこっ恥ずかしいのですが、
「人の人生や運命ってホントに不思議な偶然の出会いで大きく変わりますね。」
というのが、本作を聴きながら素直に一番思うところです。
(遠くの方から小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」が流れてきました~)
RANDYにとってOZZYと出会ったことは…。
あまりの若さでこの世を去ってしまった本人からは、その「本当の」答えを聞くことはできません。
が、彼が遺してくれた本作を含めた2枚のスタジオアルバムとライヴでのパフォーマンス映像、音源などにより、世界中のRANDYを知る人々がこれからも永遠に彼を愛し、リスペクトし続けていくことは間違いありませんね。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: オジー・オズボーン
- ギター : ランディ・ローズ
- ベース : ボブ・ディズリー
- ドラムス : リー・カースレイク
- キーボード: ドン・エイリー
収録曲
- I Don’t Know – 5:16
- Crazy Train – 4:56
- Goodbye to Romance – 5:35
- Dee – 0:49
- Suicide Solution – 4:18
- Mr. Crowley – 5:02
- No Bone Movies – 3:52
- Revelation (Mother Earth) – 6:09
- Steal Away (The Night) – 3:28
おすすめ楽曲
I Don’t Know
数々の逸話とそのヴォーカル・スタイルから、さぞかし「暗~く」「おどろおどろしく」「どんよりヘヴィな」楽曲ばかりなんだろうなぁという、アルバムを聴く前に抱いていた先入観。
しかし、そんな杞憂を消し去るような軽快かつポップさも感じる楽曲で幕を開ける本作。
うまく言い表せませんが、まるで絨毯爆撃を喰らっているかのような分厚いトーンのギターに一瞬にして耳を奪われます。
そして、単調さとは無縁のオブリガードや、ヴォーカル・メロディのバックで惜しみなく繰り広げられるおかずフレーズの機関銃のような連射。
オープニング曲早々にしてRANDYの凄さに打ちひしがれてしまいました。
地味にポコポコと主張してくるベースラインも心地よく、「OZZY OSBOURNEってデビュー作からこういう感じだったのね。」というのが率直な第一印象でした。
(「意外ね、意外ね」の桜金造さん状態)
そして中盤では曲展開にも変化を魅せ、予想だにしなかったまさかのアコスティックの音色が…。
のっぺり一本調子だけだと思っていたOZZYの声質も、この頃はまだ若々しくクリア感もあり(OZZYにしてはという絶対評価)丁寧に歌い回していますね。
いよいよ、注目のギターソロ。
当時の時点での私には大した経験値も積みあがってはいなかったでしょうが、そのソロフレーズは私の中での予定調和から大きく逸脱した想定外なもので、違和感にも近い斬新さとRANDYの個性を体感した一瞬でした。
(この後、アルバムを聴き進むにつれて本当の意味でのRANDYの恐ろしさを目の当たりにする訳ですが…)
Crazy Train
OZZYの不気味かつコミカルな奇声と笑い声の後に炸裂する80年代ヘヴィメタルを代表すると言えるリフ。
個人的には80年代と言わず、ヘヴィメタル史上最高リフ20選に、期日前投票の段階で当選確実の薔薇が付くような感じです。
(意味不明…)
当時のギター小僧にとっては、スタジオ練習の際のウォーミング・アップ曲として「CRAZY DOCTOR」と並びプレイ回数の多かった楽曲です。
いやぁー、この曲を聴いてしまえばみんなOZZYを好きになっちゃう筈ですね。
適度にキャッチーで親しみやすいサビメロの楽曲自体も最高ですし、何と言ってもギターソロ。
クラシックの要素を取り入れた(と言われていますが私は知識が無いので詳しくは解りませんが)美しさしかないソロの構成には心の底からRANDYの才能を(私のような者でも)十分過ぎるほどに感じます。
Goodbye to Romance
いやいや、こうゆう曲もやっちゃうのねという、桜金造さんもお手上げ状態の名バラード。
生前、RANDYはバンドをやめてクラシック・ギターを本格的に学び直したいと漏らしていたとのこと。
「涙無しには聴けない」とかバラード曲にはよくある形容表現ですが、この曲は歌詞こそ「泣き」そのものではあるものの、何故か聴き終えて抱く感情は「ほのぼの感」「清々しさ」みたいなものがこみ上げてきます。
いずれにせよ、RANDYの人間としての優しさや真面目さみたいなものがメロディから滲み出てきている気がします。
しかしながら、当時のギター小僧にとっては辛酸なめ曲としての思い出も。
OZZY大好きのもう一人のメンバーにリードギターの座を明け渡した私は、ライヴでのこの曲演奏時は「盛り上げダンサー」兼「ハモリコーラス」担当を拝命。
ダンサーと言っても恥ずかしがりながら頭上で腕を左右に振る程度しか芸は無く、サビメロのハモリでも声が裏返るなどのこれまた黒歴史。
それでも、必死に練習していた仲間が弾く、完璧にコピーされたギターソロには感動して思わず涙がでそうになりました。
Dee
毎年3月19日の夜、RANDYを追悼して欠かさずに聴いて寝る楽曲。
因みに、1980年代リリース作品の中から本曲を含めた「インスト曲」をピックアップしてみた特集記事をご参考までに。
そして、RANDYの貴重な肉声やNGテイクも収録されたこちらのヴァージョンもおすすめですね。
Mr. Crowley
ここで遂にやってきたか悪魔儀式のような恨めしや~楽曲。
冒頭のドン・エイリーによる不気味な荘厳ミサ曲のようなイントロ。
舞台は、雨脚強く雷鳴とともに暗黒の空が時折稲妻によってフラッシュバックのように光る深夜の田舎町にある教会と言ったところでしょうか。
アルバムを聴く前に抱いていた頑なまでの先入観が、張裂けんばかりに膨らみまくって無意識な妄想による情景が頭の中を支配します。
そして、楽曲は「Mr. Crowley」の第一声のもとにいきなり始動。
プロレスで言えば、試合開始ゴング早々の雪崩式ブレーンバスター炸裂のような展開ですね。
劇的、ドラマティックなメロディではあるものの、感情を押し殺したように淡々と歌い進めていくOZZY。
必至に探し求めたサビも行方不明のままに、あっけなく曲は早くもギターソロに雪崩れ込みます。
この意外な展開には多少戸惑うも、そんなことには構っていられなくなる程の超絶のギターソロが爆裂。
あの優しそうで穏やかな表情のRANDYからは想像できない、怒り、慟哭のような激しい激情が込められた渾身のソロですね。
改めて記しておきますが、今から40年以上も前の1980年リリースですからね…。
その時点でのフレージング、プレイテクニックという事だけでなく、ここまで楽曲の世界観を引き出させるソロであることを考えると、もう天才としか言いようがありませんよね。
更に、極めつけは「一粒で二度おいしいアーモンドグリコ」もビックリの展開。
終盤に再び爆裂するギターソロですね。
いやぁー、これを喰らってしまっては完全にノックアウト。
後遺症が残ったパンチ・ドランカー状態になってしまいます。
しかも、この2回目のソロは「悲しい、あまりに悲しく、叙情的です」。
もはや陳腐な私のレビューなど無用ですね。
楽曲はそのままフェードアウトしてしまいますが、ずーっとそのまま聴いていたい衝動に駆られます。
「CRAZY TRAIN」もさることながら、本作最高楽曲の座を与えざるをえないでありましょうヘヴィメタル史上に永遠に語り継がれるべき名曲中の名曲です。
Steal Away (The Night)
正統派ヘヴィメタル王道のようなリフで始まる疾走チューン。
いやぁー、ラストにこの曲ですか…。
凄過ぎです。
普通のバンドのアルバムなら余裕で1、2曲目でスタメン張ってますね。
これはもう9番で大谷に打たせるような贅沢極まりない扱いです。
やや短めではありますが、この楽曲でのギターソロも私のような凡人にとっては素っ頓狂に聴こえるくらいに意外性を感じるフレージングです。
まとめ
BLACK SABBATHを脱退後、自身のバンドであるOZZY OSBOURNEを結成しデビュー・アルバムとしてリリースされた本作。
天賦の悪魔的キャラで既にカリスマ性を得ていたOZZYと、天使のような容姿とギタープレイで才能に恵まれた天才RANDY。
2人の奇跡のケミストリーにより産み出された80年代、いやヘヴィメタル史上を代表する名盤中の名盤です。
リアルタイム世代は言うまでもなく、これから聴く世代の方々にとってもRANDYのギタープレイは心に突き刺さることと確信します。