DOKKEN / BREAKING THE CHAINS レビュー
大半の人が「後追い」するDOKKENのデビューアルバム
ドン・ドッケンとジョージ・リンチという類稀なる才能をもった2枚看板を擁して人気を誇ったDOKKEN。
人気絶頂期のアルバム(2、3、4枚目)のいずれかに触れてその内容に魅了され、後に本作1stにさかのぼるといったファンも多いのではないでしょうか。
(自分がそうなので勝手に決めつけております…。)
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結論から先に言ってしまえば、本作1stアルバムは上記絶頂期のアルバムと同様のクオリティを期待して聴くと、肩透かしを食らいます。
(頭を下げて低く当たろうとした立ち合い、横に変化されての「はたき込み」とも言えるでしょう)
ドン・ドッケンのヴォーカルは、メロディアスな楽曲では持ち味である「叙情性」「哀愁」がふんだんに表現されています。
しかしながら、ハードロックとしての迫力、特にデビューアルバムとして最も重要視されるとも言える勢いやインパクトと言う意味では物足りなさを感じてしまいます。
2枚看板のもう一人であるジョージ・リンチのギタープレイも、後の作品で繰り出される異次元の超絶プレイの域には達しておらず、終始おとなし目で控えめな印象。
とは言え、後の作品が凄過ぎるが故に比較されてしまいがちですが、絶対評価であればタイトル曲を始めとしてキャッチーで印象的な楽曲はそれなりの完成度と言えるでしょう。
大御所DIOも「ダメ出し」した甘い歌声
ドン・ドッケンの「あまぁ~い!」ヴォーカルを聴くたびに必ず思い出してしまうのが、1985年のメタル版ライブエイドの「Hear ‘n Aid(アフリカ飢餓救済チャリティ・プロジェクト)」。
ハードロック界の大御所「ロニー・ジェイムス・ディオ」の呼びかけに賛同して集まったハードロック・ヘヴィメタル界の名だたるミュージシャン達の中にはドン・ドッケンの姿もありました。
賛同者が一同に会してのチャリティー楽曲「Stars」のレコーディング風景が、後にDVDとしてリリースされましたが、その時の情景が忘れられません。
ドン・ドッケンも分担されたパートの一節をいつもながらの「あまぁ~い!」歌唱で目を閉じながら気持ち良さげに歌ってましたが…。
まさかの大御所ロニー・ジェイムス・ディオからの(やや食い気味に)容赦ないダメ出し!。
「もっと激しく、力強く表現してくれ!」と一蹴していましたね。
結果として、ドン・ドッケンは顎を上げ拳を握りしめながら渾身の叫びとも言えるヴォーカルを披露。
僅か5、6秒という超短い一節であるにもかかわらず、一切の妥協を許さないプロとしての拘り。
本来の趣旨である「音楽(ハードロック・ヘヴィメタル)の力で危機を救いたい」というロニー・ジェイムス・ディオの熱い想いが垣間見えたシーンでした。
と同時に、ドン・ドッケンの長所であり弱点でもある「甘すぎるヴォーカルスタイル」を瞬時に見抜いて修正させるロニー・ジェイムス・ディオの眼力はさすが大御所たる所以ですね。
スコアチャート
メンバー・収録曲
メンバー
- ヴォーカル: Don Dokken
- ギター : George Lynch
- ベース : Juan Croucier
- ドラムス : Mick Brown
収録曲
- Breaking The Chains – 3:50
- In The Middle – 3:43
- Felony – 3:07
- I Can’t See You – 3:12
- Live To Rock (Roll To Live) – 3:35
- Nightrider – 3:13
- Seven Thunders – 3:55
- Young Girls – 3:14
- Stick To Your Guns – 3:25
- Paris Is Burning (Recorded Live In Berlin, Dec. 1982) – 5:07
おすすめ楽曲
Breaking the Chains
アルバムのオープニングにして本作最高楽曲。
この曲が本作の全てと言っても良いでしょう。
何と言っても本作(2枚目、3枚目もですが)のプロデューサーは、昨年惜しまれつつも引退を表明したドイツの敏腕プロデューサー「マイケル・ワグナー」。
「ACCEPT」をはじめとしたドイツ勢はもとより、「Skid Row」や「White Lion」等の多くのアルバムのプロデューサーでもありますね。
各曲がそれなりのまとまりを見せる本作のなかでも、このタイトル楽曲はひと際象徴的な存在感がある名曲です。
エッジを効かせた切れ味のあるギタートーンが心地よく、シンプルに余裕綽綽と曲を進行させていきます。
そしてドン・ドッケンのヴォーカルは真骨頂である「平常心」。
下記貼付のPVでは一生懸命に「顔芸」でリキんで見せてはいますが、実際の歌唱はサビであっても一切抑揚の無い「あまぁ~い!」展開です。
それにしてもこのPVはいくら当時のものとは言え、あまりにダサ過ぎて視ているこちらが赤面してしまいます…。
そして、中盤からは自らも赤いランダムスターを持ち出して格好良くキメていますね。
思わず、遠くの方から敏いとうとハッピー&ブルー「よせばいいのに」が聞こえてきました…。
いやいや、そこはジョージ・リンチに任せておきましょうよ…。
この辺りの「俺が、俺が系」が災いしてのジョージ・リンチとの確執が大きくなっていった要因なのでしょう。
サッカーやらせたら、絶対にパスは選択せずに自ら強引にシュートを放つストライカーになっていたことでしょう。
一方、中盤のジョージ・リンチによるギターソロは、そのテクニックを全くと言って良いほど封印しながらも、切ないメロディで哀愁を感じさせる職人芸。
まさにドンの代わりにギターが歌ってます。
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Paris Is Burning
今回、おすすめ楽曲としてピックアップしたのはオープニングのタイトル曲と、ラストに収録の本曲のみ。
安心と信頼の正直レビューをもっとうとする当ブログは、何でもかんでも賞賛してもてはやすという事はいたしません。
1982年のベルリンでのライヴ音源という本曲で、ようやくジョージ・リンチのテクニカルなギターが冒頭に火を噴いています。
アルバム2曲目以降、これと言って心に響いてこないサビメロの凡庸な楽曲が続き、このまま終わるのかと意気消沈していたところでのオーラス曲。
相撲で言えば、まさに土俵際、徳俵に親指一本で残った状態での豪快な「うっちゃり」です。
いやぁ~、ライブでこれだけできたら良いんでないのぉ~!っと、思わず唸ってしまうほどのど迫力。
しつこいようですが、ドン・ドッケンの「あまぁ~い!」歌唱には、逆にこの位ハードにギターが暴れ回る楽曲でないとバランスが保てないような気がします。
そんな絶妙なバランス、かつ緊張状態が良い方に作用して、次作以降の名盤が産み出されてきたという、DOKKENというバンドの系譜を知ることができるデビューアルバムなのでした。
まとめ
その名の通りヴォーカルのドン・ドッケンを中心としたLAメタルバンド「DOKKEN」。
人気絶頂期の作品を聴いた後での「後追い」で本作デビューアルバムにたどり着くリスナーも多い筈。
数少ない楽曲でその片鱗を垣間見せるも、アルバム全体としての絶対評価は以降の作品に遠く及ばない凡庸な楽曲が占めています。
「メロディ(特にサビメロ)良ければ全て良し」
所詮、ヴォーカルの迫力がどうのこうの、テクニカルなギターがうんぬんと言ったところで、心に響く印象的なメロディの有無で勝敗の大勢が決してしまう。
DOKKENのデビューアルバムは、そんなシンプルな答え、示唆を含んだ作品だったという気がします。