IRON MAIDEN 【絶頂期の名盤】 POWERSLAVE 「Aces High」の衝撃

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IRON MAIDEN / POWERSLAVE レビュー

英国ヘヴィメタルバンドから世界的バンドへと躍進

NWOBHMムーブメントの第一人者として英国ヘヴィメタルシーンを牽引してきたIRON MAIDEN。

ヴォーカルがブルース・ディッキンソンに代わってからの「魔力の刻印」「頭脳改革」という2枚のアルバムで、もはやNWOBHMムーブメントの枠には収まり切れない、ヘヴィメタルバンドの代表格的なポジションへと昇りつめていきつつありました。

当時はアメリカを中心に「LAメタル」のムーブメントも盛り上げりつつあった中で、自分の中では非常に雑な区分けですが「硬派なブリティッシュバンド(JUDAS PRIESTやIRON MAIDENなど)」を愛聴し、「軟派なLAバンド(Mötley Crüeなど)」を少し避けてきた傾向が…。

そんな中で、1984年にリリースされたのが本作5枚目のアルバム「Powerslave」。

個人的にはIRON MAIDENの絶頂期と位置付けている時期のアルバムであり、その衝撃度は凄まじいものがありました。

後にリリースされることになる世界各地で数万人規模を集めてのツアー映像からも明らかなように、まさに世界を代表するヘヴィメタルバンドとしての地位を確固たるものにしたアルバムと言って良いかと思います。

アルバム制作における布陣は前作同様、バンドメンバーは変わらず、プロデューサーはマーティン・バーチが担当。

得意とする長大作な楽曲作りは益々磨きがかかり、本作では全8曲中、4曲が約6分を超える長大曲。

ダラダラと長いだけではなくフックに富んだ曲展開により、ドラマティック性、聴き応えは十分です。

「Aces High」デスビームで撃ち抜かれて瞬殺

後述の楽曲レビューで曲の詳細は記しますが、このアルバムにおけるハイライトは何と言ってもオープニングでいきなりかまされる「Aces High」。

アルバムジャケットのデザインからの勝手な思い込みで、古代エジプトの神秘的な世界観の楽曲で始まるのだろうとの予測はものの見事に撃墜され、度肝をぬかれました~。

王者の風格すら感じさせる落ち着き払ったリフから一転してのスピーディな展開で全身寒イボ(鳥肌)状態。

いやぁ~、ブルっちゃいましたね~。

それはまるで、冷酷非情なフリーザ様の人差し指の先っぽから放たれるデスビームで、心臓を一発で撃ち抜かれたような衝撃とでも言いましょうか。

当時、それまで過去に自身が聴いてきたヘヴィメタルの楽曲の中で、間違いなく5本の指に入るであろうベストチューンとなりました。

そして、自身の中でIRON MAIDENというバンドが完璧なまでに神格化された瞬間と言えるでしょう。

これぞまさしくヘヴィメタル!。

魔力の刻印でアナフィラキシーショック状態に陥りかけたブルースアレルギーも、この頃になるとさすがに免疫と言うか慣れ親しんだ快感に変わっており、むしろブルースのヴォーカルスタイルこそがIRON MAIDENそのものと言った円熟味すら感じてしまいます。

そしてとどめを刺すかのように、間髪入れずに始まる2曲目の王道パワーコードのリフ。

いやぁ~、この2曲だけでご飯何杯もいけちゃいますよね~。

【IRON MAIDEN】アルバム一覧(ディスコグラフィ)はこちらから

 

メンバー・収録曲

バンドメンバー

  • ヴォーカル:Bruce Dickinson
  • ギター  :Dave Murray
  • ギター  :Adrian Smith
  • ベース  :Steve Harris
  • ドラムス :Nicko McBrain

 

収録曲

  1.  Aces High
  2.  2 Minutes To Midnight
  3.  Losfer Words
  4.  Flash Of The Blade
  5.  The Duellists
  6.  Back In The Village
  7.  Powerslave
  8.  Rime Of The Ancient Mariner

 

おすすめ楽曲

Aces High

 

アルバム収録版でも無論大興奮ものなのですが、やはり上記貼付のPVにもあるように、冒頭のチャーチルの演説で始まるシングル版はほんとヤバイです。

 

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第二次世界大戦でドイツに対しての戦況が思わしくない状況下で行われた、英国のウィンストン・チャーチル首相の国民を奮い立たせる名演説の一部ですね。

「大英帝国はナチスドイツの脅威にフランスと共に立ち向かい、いかなる犠牲を払おうとも本土を守り抜き決して降伏することはない。」

その演説音声の途中で切り替わって突如刻まれるギターリフ。

チャーチルの演説同様に、ツインギターから発せられる一音一音に大英帝国としての誇り、歴史、様式がひしひしと感じられます。

楽曲の邦題は、これまたよくぞうまいこと命名してくれましたね状態の「撃墜王の孤独」。

イギリス空軍戦闘機パイロットの雄姿を歌った曲ですね。

当時、数にものを言わせてドイツ軍が首都ロンドンを空爆しつつあった「Battle of Britain(イギリス空中戦)」において、イギリス空軍の主力戦闘機「スピットファイア」に乗り込んでスクランブル発進して立ち向かうパイロットの状況描写です。

「スピットファイア」はドイツ軍の戦闘機「メッサーシュミット」に比べて旋回性能に優り、数的な不利を何とか克服しながら本土の制空権を果敢に守り抜いたと言われています。

「生きるために飛び、飛ぶために生きろ!」の歌詞が胸熱ですね。

余談ですが、そんなイギリス空軍が誇った「スピットファイア」をも圧倒的に凌駕する航行性能と戦闘機動力を持っていたのが、日本の「零(ゼロ)戦(零式艦上戦闘機)」でした。

戦争序盤における1対1の空中戦ではほぼ負けることの無かった零戦の、航続距離性能は約3,300km。

アメリカの「F4F」が2,300km、イギリスの「スピットファイア」が1,500kmですので、いかに零戦の能力がずば抜けていたかがわかります。

まあ、いずれにせよ戦争だけは決してしてはいけないことなのですが…。

 

2 Minutes To Midnight

 

メロディアスに疾走するヘヴィメタル史上屈指の名曲であり、ブルース・ディッキンソンの絶叫の後に終わる1曲目の「Aces High」。

すぐさま間髪入れずの2曲目で刻まれるエッジの効いたパワーコード。

ヘヴィメタル王道のシンプルなリフは、中華屋で言うところのチャーハンのようなもので基本中の基本ですね。

2曲目の「2 Minutes to Midnight」が畳みかけの波状攻撃でかましてきます。

これまた邦題が渋過ぎる「悪夢の最終兵器(絶滅2分前)」。

世界大戦が終わったと思ったら今度は「核の脅威」ですか…。

しょうも無いですね、人類って…。

アルバムリリース当時はまさに冷戦の終盤期。

核戦争への危機を杞憂しながらのパワーゲームがアメリカとソ連を中心に繰り広げられていました。

最終兵器=人類滅亡につながるとわかっていながら、お互いに譲ることのできない悲しい緊張状態でした。

危機迫る緊迫した冷戦の状況を歌っている(と、勝手に解釈してますが)割には、楽曲はシンプルかつキャッチーな印象でギャップを感じます。

絶滅2分前だけど楽曲は約6分やっちゃうよという部分はこの際目を瞑ることとしましょう。

僅かに哀愁感も醸し出すヴァースにお膳立てされたサビメロは、間違いなく満場一致の大合唱となること必至の扇動力を誇ってますね。

曲中盤のテンポを落としてからのギターソロ~展開が素晴らしいシングルカット曲です。

Powerslave

アルバム終盤の7曲目にしてようやく辿り着くことができたタイトル楽曲。

そうです、本来このジャケットデザインから想像できる曲調はこんな感じ。

古代エジプトの雰囲気を通り越してオリエンタルなムードまでをも感じてしまうメロディライン。

中盤の曲展開においては、これぞメイデン節と言えるギターソロを絡ませたシンプルに「格好良い」としか形容詞が思いつかないフレーズが炸裂しています。

デイブ・マーレイによるメロディアスなソロと、エイドリアン・スミスによるメタリックなソロが惜しげもなく披露されるこれぞツインリードのお手本的展開は、その後のMAIDEN風バンドにどれほどの影響を与えたことか計り知れませんね。

普通のバンドが作ったとしたら、単なる間延びした楽曲で終ってしまいそうな長大作楽曲を、全く飽きさせることなく最期まで聴かせるドラマティックな構成力と演奏テクニックはもはや匠の技です!。

個人的にはニコのドラム(特にスネアの音色)にもう少し重量感があると更に良かったかなと思います。

 

Rime Of The Ancient Mariner

アルバムのラストを飾る13以上の超絶長大作。

ラスト2曲でアルバムの大半を占める20分という大河ドラマ状態です。

邦題も「暗黒の航海」と完璧にキメにかかってきましたね~。

この楽曲のルーツは、18~19世紀のイギリスの詩人「サミュエル・テイラー・コールリッジ」によって書かれた神秘的で怪奇な幻想詩「老水夫の詩」。

物語は結婚式に招かれた青年が、眼光鋭い不思議な老水夫に出会いその話に引き寄せられるというシチュエーションです。

非常に大雑把な概略となりますが、かつて老水夫が乗り込んだ船が嵐に遭遇し南極近くの氷の海を漂流していた際に、飛来してきた一羽のアホウドリを射殺してしまいます。

すると船は赤道付近まで流されてしまい、激しい飢えと渇きに苦しめられながら老水夫以外の乗組員は呪われたように次々に死んでいくことに。

唯一の生存者として孤独と悔恨に苦しむ老水夫でしたが、ようやく月光に美しく輝く海蛇が現れ、呪いが解けたのか恵みの雨がもたらされます。

どうにか無事に生還し、その後は懺悔の旅を続けながら神を敬うことを説いているというお話。

スティーブ・ハリスの恐るべし楽曲構成力によって13分34秒の中にこの長編幻想詩が凝縮されて表現されています。

楽曲の背景や意味をご自身なりに咀嚼し、その情景を思い描きながら聴き込むことによって、また違った「味」が楽しめるのではないでしょうか。

そしてその世界観を見事に表現し切っているブルース・ディッキンソンのヴォーカルも特筆ものですね。

まとめ

本作はIRON MAIDENというバンドを、NWOBHMの牽引役からヘヴィメタルを代表する世界的なバンドに押し上げることになった最大の出世作と言えるでしょう。

古代エジプトをストレートに想起させるジャケットデザインに翻弄されそうになるも、収録曲はそれぞれが強烈な個性を持ったバラエティ性に富んでおり、どこから聴いても楽しめる完成度の高さは相変わらず。

特にオープニング2曲は「ヘヴィメタルかくあるべし」といわんばかりの、シーン頂点に昇りつめたバンドとしての風格と絶対的な自信のようなものが滲み出てきています。

個人的にIRON MAIDEN絶頂期は「’80年代」と位置付けていますが、1984年リリースの超々名盤です!。

 

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