UNDER LOCK AND KEY レビュー
バンド最高傑作 ~確執を乗り越えて生まれた名盤~
1985年リリースのDOKKEN3枚目のアルバムにして、バンド最高傑作「UNDER LOCK AND KEY」。
前年の1984年に、LAメタルシーンの度肝を抜いた超名盤2ndアルバム「Tooth and Nail」をリリースしたDOKKEN。
もはやLAメタルなどという狭い枠組みには到底収まり切れない、当時のヘヴィメタルを代表するかのような堂々たる完成度のアルバムでした。
ついに巨匠ジョージ・リンチが本気を見せた火力抜群の攻撃的なギタープレイ。
対称的にあくまでもソフトに美しく歌い上げるドン・ドッケンのヴォーカル。
2人個性がぶつかり合い化学反応として生み出された楽曲群は、DOKKEN初体験だった私にとってまさにおったまげ級のインパクトでした。
2ndアルバム「Tooth and Nail」の詳細レビューはこちらから↓↓↓
当然のように燃え盛る人気の炎に乗じて、後追いでデビューアルバムにも手を出したのですが、こちらはちょっと微妙な感じ…。
(あくまで個人的感想ですが、予想外のリンチ巨匠の沈黙…。)
アルバム中、数曲でその片鱗は魅せてはいるものの2ndの衝撃度に比べればほんのお触りレベルでしたね。
デビューアルバム「Breaking the Chains」の詳細レビューはこちらから↓↓↓
そして迎えた本作3rd。
当時のヘヴィメタルファン誰もが固唾を飲んで期待したリリースでしたね。
いやぁ~、見事にやってくれました~。
凄い、凄過ぎます。
このアルバムは、今振り返って聴いてもそう思える(個人的)DOKKEN最高傑作です!。
DOKKENの真骨頂~哀愁メロディに酔いしれる
攻撃性重視の火力強めがお好みの諸兄は2nd、4thアルバムのいずれかを最高傑作と評されるかと思います。
が、大日本軟弱メロディアス愛好会会長としましては、本作の哀愁溢れるメロディフレーズには筆舌に尽くしがたい感動を覚えてしまいます。
DOKKENはドン・ドッケンとジョージ・リンチによるバンド内、アルバム制作における主導権争い、確執があまりに有名ですね。
全体的な印象として、本作においては「あま~い!」ドン・ドッケンのソフト路線がかなり幅をきかせているように感じます。
ミドルテンポの哀愁メロディ楽曲がこれでもかと連発され、そのどれもがシングルカット可能と思えるようなキャッチーさを有しています。
かと言って、巨匠ジョージ・リンチの超絶プレイが蚊帳の外になっているわけでもなく、各楽曲の要所要所で調和のとれた節度あるプレイに徹していますね。
さすがは巨匠、駄々っ子ドッケンを適当にあしらいながらも、深みのある渋いリフやコンパクトにまとめた泣きのソロフレーズなどでしっかりと聴き手を魅了する大人のプレイが素敵過ぎます。
本作はこれからDOKKEN入門する方はもちろんのこと、HR/HM沼へ足を踏み入れるきっかけ作りには最高最強に相応しいアルバムと言えるでしょう。
スコアチャート
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ドン・ドッケン
- ギター : ジョージ・リンチ
- ベース : ジェフ・ピルソン
- ドラムス : ミック・ブラウン
収録曲
- Unchain the Night – 5:20
- The Hunter – 4:07
- In My Dreams – 4:20
- Slippin‘ Away – 3:48
- Lightnin‘ Strikes Again – 3:49
- It’s Not Love – 5:01
- Jaded Heart – 4:17
- Don’t Lie to Me – 3:37
- Will the Sun Rise – 4:10
- ‘ End – 4:02 the Livin
おすすめ楽曲
Unchain the Night
先ずは、オープニング。
In My Dreams
いやぁ~、この曲も飽きもせずに散々聴いてきたのに、今回久し振りに聴き直してもやっぱり悦に入ってしまう自分のおめでたさに呆れちゃいます…。
でも、やっぱりそれほど惹きつけられる魅力とサビメロの美しさに魅了される究極のハードロックと認めざるをえませんね、この曲は。
いきなりサビメロのコーラスでぶちかますという反則技は、その後BON JOVIの「You Give Love a Bad Name」でも踏襲され、わかっちゃいるけど術中にはまってしまうのがメタラーの悲しい性。
因みに、サビメロスタートの楽曲を特集した記事はこちらから↓↓↓
【サビメロ】でいきなり始まるハードロック・ヘヴィメタル名曲20選+4
この曲では、まるで温泉にのんびりと入りながら気持ち良さげに歌っているようなドッケンのヴォーカル。
対して、苦虫を嚙みつぶしながらも「ここは守りの時間帯」と手数を最小限に抑えてガードを固める巨匠のギター。
しかし敵に簡単にはポイントを与えじと、ギターソロでは効果的なタッピングパンチを的確にヒットさせ、またしても採点はイーブンに。
Lightnin‘ Strikes Again
辛抱の時間を耐え抜き、ここでようやくやってきたリンチ巨匠の攻勢の時間帯。
歴史的大勝負に相応しく、王道のパワーコードによるリフで一気にラッシュをかけて、ドッケンをコーナーポストへと追い込んでいきます。
因みにこの時、歴史的な熱い一戦をリングサイドで見守っていたのがクリス・インペリテリ。
その後の自身の作品で、非常にわかりやすいなにくわぬ顔でパクリングをしていますね。
リンチ巨匠のフットワークを活かしたコンビネーションパンチと横腹をえぐるボディパンチのようなギターソロ。
完全に劣勢に立たされたドッケンはギミック音声などを持ち出しクリンチに逃れようと必死に防戦しています。
最後にはなりふり構わずACCEPTのような男コーラス隊も動員するなどして、どうにか持ちこたえこのラウンドを終えます。
Don’t Lie to Me
世紀の一戦もいよいよ勝敗を決する終盤へ突入。
8曲目に収録の(個人的)本作最高楽曲の登場です。
両者の緊張感あふれる激しい攻防から奇跡的に生み出された、あまりに切なく叙情的、ドラマティックな超名曲。
もはやドッケンにしか歌いこなせないであろう哀愁の歌メロ。
試合前はハンデと目されていたミドルテンポ楽曲を今や完全に見切って自身のものとしたリンチ巨匠のリフワーク。
全く両者譲らずの激しい攻防が続いてきましたが、遂に決着の時を迎えることに!。
そうです、この曲のギターソロこそ大日本軟弱メロディアス党を率いる私が選ぶ「生涯ベストギターソロ曲30傑」に間違いなくランクインする究極ソロなのです!。
(本当かよ…。)
いやぁ~、凄い、いつ聴いても痺れますね~、このソロは。
決してテクニカルに固執する訳でも、これ見よがしに速弾きをする訳でもなく、非常にコンパクトで短いソロなのですが、とにかく恐ろしいまでに構成が完璧ですね。
格好良い、心に突き刺さる、真の力強さを持ったギターソロとは?という問いに対する明確な答えがこのソロには内包されているように思います。
ソロ中盤に炸裂する魂のこもったカミソリカッティングに、ギタリストとしての誇り、プライドみたいなものを感じてしまいます。
ということで、完全にこのソロで勝負あり!。
本作における「ドッケン VS 巨匠」の異種格闘技戦は8曲目2分30秒、巨匠によるTKO勝ちで決着がつきましたぁ~。
ちゃんちゃん。
まとめ
前作2ndアルバムでその名をシーンに知らしめたLAメタルバンド「DOKKEN」。
期待値MAXのプレッシャーの中でリリースされたのが、より洗練度、完成度を高めたバンド最高傑作の本作3rdアルバムでした。
HR/HMシーンにおけるバンドのポジショニングを盤石なものとし、更なる幅広いファン層の囲い込みを狙った取っつき易い楽曲で構成された本作。
まるでHR/HM入門教材のような作品ですね。
ドン・ドッケンとジョージ・リンチの2人の才能が今回も激しく衝突。
得も言われぬ緊張感が漂う中で、マーケットでの成功を手中に掴む上質楽曲を量産するという、バンドとしての能力、地力は驚異的です。
表面的なスピードや攻撃性は封印しつつも、骨太な骨格をもった「THE HR/HM」と言ったリアリティがビシビシと伝わってくる超名盤です。