HAREM SCAREM / MOOD SWINGS レビュー
日本では実質デビュー作となった2ndアルバム
1987年にカナダで結成のハーレム・スキャーレムは、1991年にデビューアルバム「HAREM SCAREM」をリリースします。
そして1993年に続く2ndアルバム「MOOD SWINGS」をリリースしますが、日本においてはこちらが先に発売されて多くのファンを獲得。
その人気ぶりから、翌年1994年に遅ればせながら既にリリース済だったデビューアルバムが遡って日本でも発売されました。
↓↓↓デビューアルバムについての詳細レビューは下記の記事からご確認下さい↓↓↓
ヘヴィな音像とメロディアス性を極めた最高傑作
上記の日本での発売逆転現象により、私自身も2ndからハーレム・スキャーレム沼にハマった口。
本作2ndを初めて耳にした時の衝撃度は絶大であり、バンドを象徴する傑作として深く脳内に刻み込まれました。
(後に後追いで聴いた1stには若干の物足りない印象…)
早速オープニングからかまされる一切の妥協のない完成度。
続くアルバム前半の各楽曲は全てのメロディアス愛好家を納得させる100点満点の模範解答ですね。
本作の印象を漢字一文字で表現するとするならば「厚」でしょうか。
時代の潮流を若干意識した感のあるヘヴィで厚みのある音像、ただでさえ深みのあるハリー・ヘスのヴォーカルにさらに厚みを被せるコーラス、テクニックに裏打ちされた幾重にも計算され厚く練り上げられたギターフレーズ、などなどとにかく「厚」「熱」「圧」を感じてしまいます。
そしてアルバム後半でもそのクオリティは低下することなく、至福のバラード楽曲をはじめとする持ち前の透明感と爽快感を放ちながら聴く者の心を鷲掴みにしながら締め上げていきますねぇ~。
北欧メロディアスを称して「冷たい湿り気のある叙情性」とするならば、ハーレム・スキャーレムの北米メロディアスは「温もりのあるほっこりとした哀愁」とでも言いましょうか。
北欧のような由緒正しき様式美こそないものの、肩肘張らずに自由な雰囲気で贅沢に味わえる敷居の低いメロディアス楽曲が何とも有難いです。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ハリー・ヘス
- ギター : ピート・レスペランス
- ベース : マイク・ジオネット
- ドラムス : ダレン・スミス
収録曲
- Saviors Never Cry
- No Justice
- Stranger Than Love
- Changes Come Around
- Jealousy
- Sentimental Blvd
- Mandy
- Empty Promises
- If There Was A Time
- Just Like I Planned
- Had Enough
おすすめ楽曲
Saviors Never Cry
イントロのややおちょくった感じの遊び心あるフレーズから一転して、重厚なリフへと雪崩れ込んでいく展開が痺れます。
ドスの効いたリフとでも言いましょうか、アルバムジャケットのデザインが放つ世界観と整合性のとれたオープニングに、思わず身を乗り出して聴き入ってしまいますね。
それにしても、ピート・レスペランスのギターのトーンは相変わらずに何とも粘っこいですよねぇ~。
これぞ名付けて「納豆奏法」とでも言いましょうか、糸引く感じの物凄い粘度を感じます。
そして声自体に哀愁のアドヴァンテージを持つハリー・ヘスの歌唱が、ムーディに進行。
サビでは「おっ、そうきましたか」の私のような凡人には思いつかなかったメロディで、これまた強烈に印象付けられました。
Stranger Than Love
これぞ北欧メロディアスでは味わえない、北米メロディアスの爽快感。
肥沃で雄大な広地をイメージさせるようなスローテンポ一歩手前のゆったりとしたメロディが、時間の経過を忘れさせてくれるようで幸せな気分に浸れますね。
力みや必死さ、わざとらしい大仰さなどと一切無縁な、この贅沢な感覚は、デフ・レパードを聴いている時の感覚と似たようなものを感じます。
Jealousy
渋い、渋過ぎっす、先輩。
これをやられちゃぁ、ぐうの音も出ません。
タメにタメ、タメまくりのギタープレイ。
短気な私でもそこはいくらでも待てますよ~って位にタメてます。
アコスティックじゃないのがこれまたミソなんですよね。
そして普通のヴォーカリストと違って、バラード曲になると俄然熱を帯びてくるハリー・ヘスのヴォーカルが酔わせますねぇ~。
足にきちゃいそうです。
普段は日本酒党の私ですが、さすがにこの曲にはカナディアン・ウィスキーしかあり得ませんね。
Sentimental Blvd
至福のバラード曲に続く、お口直しの爽快メロディアス・ハード楽曲。
それにしてもハーレム・スキャーレムは無駄に走りませんねぇ~。
徹頭徹尾、首尾一貫、初志貫徹(どうでもいいか…)のミドルテンポへの頑なな拘りを感じます。
それでいてワンパターンに陥らずに、各楽曲でそれぞれのメロディの魅力を引き出してくるところが凄いと思います。
懐が深くて、引き出し一杯持ってますよねぇ~。
まとめ
リリース当時、尋常でない頻度でヘビロテしていたアルバムを、今回約30年ぶりに引っ張り出してきて改めて聴いてみました。
聴きながら思い出されるのは不思議と当時の楽しかった思い出ばかり。
哀愁を帯びたメロディアス・ハードロックではあるものの、どこか温もりを感じさせ、透明感と爽快感を合わせ持つハーレム・スキャーレムの楽曲ならではのお陰かなぁと思います。
デビュー作で見られたハードポップのセンスをより進化させながら更に厚みをもった完成度に仕上げた本作2ndを、ハーレム・スキャーレムの最高傑作としたいと思います。