Iron Maiden 1st レビュー
それはまるで、コーナーポストのトップロープからパイルドライバーを喰らったかのような、まさに脳天に杭打たれたような衝撃!(首がやばい)。
NWOBHMの最高傑作とも言える超名盤
1980年にリリースされた IRON MAIDEN のデビューアルバム「IRON MAIDEN(邦題:鋼鉄の処女)」
私のアイアン・メイデン初体験はこのシングル曲
私のアイアン・メイデンとの出会いは、兄貴の買ってきたこちらのシングルレコードでした。
英国ではランニング・フリーが先行シングルでリリースされていたようですので、日本盤のこのシングルはいわゆる「ダブルA面」というやつですね。
おどろおどろしいジャケットデザイン、鋼鉄処女?というバンド名。
楽曲を聴く前に抱いた印象は、後にハードコアパンクなる潮流を生み出していく「ちょっと激しめのパンク?」くらいのものでした。
そして、初めて音源を耳にした時の衝撃。
(正確には兄貴が聴いていたのを「また聴き」しただけですが…。)
「これは何だかえらいことになってるぞ?」というのが、当時のファーストインプレッションでしたね。
兄貴の影響で、KISSやDEEP PURPLE、BOSTONやTOTO、THE CLASHなどなど、ごった煮状態で訳も分からず聴きかじっていた当時の小僧。
当然、ハードロックとヘヴィメタルの違いなんぞ当時は意識したこともなく。
「それでも何となく無意識に感覚的に自分の中でしていたカテゴライズに、当てはめられない物が出てきてしまった」といのが正直な印象でした。
その感覚は、ある種受け入れ難い「異物」が体内に入ってきたかのような、体験したことの無い衝撃であったことを鮮明に覚えています。
因みにこのシングルレコードは後にプレミアが...
余談になりますが、このシングル盤のジャケットデザインは発禁?となったのか、今では相当のプレミアがついているようです。
イラストレーター デレク・リッグスによる初代エディに刃物で刺されているのは、どう見ても英国第71代首相のマーガレット・サッチャー。
1979年から英国首相となり、保守的、かつ強硬な政治姿勢から「鉄の女(IRON LADY)」の異名を取ったことで知られています。
黒く目隠しこそされているものの、エディに刺されて横たわっているのはサッチャー首相を描いたものであることは明らかですね。
後に発禁ジャケットとなってしまった事は容易に想像できます。
あらゆる要素が新鮮で衝撃的だったアルバム
兄貴が買ってきたシングル盤の2曲で完全にこの新興バンドの虜となってしまった当時の小僧。
アルバムを通しで初めて聴いた時の印象は、事前に聴いていたシングル2曲以外は当時の小僧にとっては「荷が重すぎ」ました…。
とにかく初めて耳にする「ある種未知のジャンルの音源」でしたので、一度聴いたくらいじゃ小僧には良さが解りません。
特に7分を超える大作「オペラの怪人」の曲展開の素晴らしさ、ドラマティック感を実感するには少し時間を要しましたね。
スタジオ一発録りのような荒削りなライブ感と、相反するように複雑かつ緻密に構築された曲展開が凄過ぎます!。
しばしば入ってくるハウリングノイズ、ヴォーカルの肉声、ここにオーディエンスの歓声を被せたら立派なライブアルバムとなり得るかのような、生々しい演奏に痺れます。
そして、何よりも一番衝撃を受けたのがリズム隊の2人。
ランニング・フリーのクライブ・バーのドラム。
オペラの怪人のスティーブ・ハリスのベース。
これまでに聴いてきたどのバンドとも違うスピード感とメロディセンス、オリジナリティ溢れるプレイぶりにおったまげました~。
特にスティーブ・ハリスのベースがヤバかったですね!。
ギターと同じメロディを弾くベースというものが初体験でしたので。
それまでベーシスト、ベースの「音」として意識して聴いたことがあったのは正直ジーン・シモンズとグレン・ヒューズ、ロジャー・グローバーくらいでしたので。
このアルバムを聴いて「ベース」に対する自分のイメージや概念みたいなものが一気に変わってしまったように思います。
【IRON MAIDEN】アルバム一覧(ディスコグラフィ)はこちらから
スコアチャート
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ポール・ディアノ
- ギター : デイブ・マーレイ
- ギター : デニス・ストラットン
- ベース : スティーブ・ハリス
- ドラム : クライブ・バー
【収録曲】
- Prowler [3:52]
- Remember Tomorrow [5:25]
- Running Free [3:14]
- Phantom Of The Opera [7:05]
- Transylvania [4:06]
- Strange World [5:40]
- Charlotte The Harlot [4:10]
- Iron Maiden [3:31]
おすすめ楽曲
Prowler
まさに「バリバリ」という表現がピッタリ嵌まる楽曲ですね。
デビューアルバムのオープニングに相応しい勢いのある疾走チューン。
ワウペダルを駆使したデイブ・マーレイの印象的なイントロの系譜はデビュー当時から現在に至るまで踏襲されています。
ペダルをMAXまで上げた時に生じるハウリング音が絶妙に格好良く、日夜コピーとペダルワークの研究に励んだものです。
ポール・ディアノの吐き捨てるようなパンキッシュなヴォーカルスタイルと相まって、楽曲としてのパワー感が半端ないです。
Running Free
後に難病により若くしてこの世を去った不運のドラマー、クライブ・バーの名をヘヴィメタル史に深く刻み込んだ名曲。
スティーブ・ハリスとの鉄壁とも言えるリズム隊は、まさにアイアン・メイデンの屋台骨。
スタジオ一発録りかのような危うさ、一歩間違えるとインディーズ音源にも聴こえてしまいそうな生々しい演奏がたまりません。
Phantom Of The Opera
数あるアイアン・メイデンを代表する曲の中でも、デビュー本作におけるこの曲はやはり誰もが認める屈指の名曲と言えるでしょう。
40年以上前にこの曲を聴いた時の衝撃。
何よりも、イントロのギターフレーズと同じメロディラインをベースが弾いてくるという前代未聞の荒技を目の当たりにしてしまった当時のギター小僧は、ただただ驚くばかりです。
そして、縦横無尽に目まぐるしく変化する曲展開、複雑な曲構成という全く新しいテイストの様式美は、その後の多くのバンドに計り知れない影響を与えたものと思います。
7分という超大作を「長い」と感じさせない、逆に「もっと聴いていたい」と思わせるかのようなドラマティックな展開、ストーリー性は圧巻の一言に尽きます。
レコードではA面最後の収録となる本曲。
楽曲が終了した後の数秒後に再び謎のシャウト音声が収録されており、「これはエディの声なのでは?」などと小僧達の幻想は広がったものでした。
Transylvania
アルバムB面のオープニングはスピーディーな高速インストチューン。
歌メロがないのでややもすると途中で飽きてしまいがちなインストロメンタル曲ですが。
アイアン・メイデンのこの曲は飽きるなどとは微塵も感じさせないドラマテックな曲展開とスピード感に溢れています。
「いやはや、この曲もすげぇな。」
この一言が、この曲をレビューする時に最も便利な言葉ですかね。
後に数々のインストチューンの名曲を輩出することになるアイアン・メイデン。
こうして改めて聴き直してみると、インスト曲になると殊更にアドレナリンが噴き出すかのごとく気合いが普段以上に高まっているような気がします。
因みに、本曲を含めた胸熱の1980年代「インスト曲」をピックアップした特集記事をご参考までに。
Iron Maiden
アルバムのラストを締め括る象徴的なタイトル曲。
パンキッシュなヴォーカルとダイナモのように走りまくるドラム。
ただの勢いだけの楽曲かと思いきや、しっかりと展開に変化をつけてくるあたりがさすがです。
後に雨後の筍のようにシーンに湧き出てくる「メイデン風バンド」「メイデン風楽曲」は、この曲を原液として水で何倍かに薄めたような「麺つゆテイスト」のものが多かったように感じますね。
まとめ
1980年にリリースされた IRON MAIDEN のデビューアルバム「IRON MAIDEN(邦題:鋼鉄の処女)」。
「こ、これは激しめのパンクなのか…。」
初めてアルバムを聴いた時は自身の中で整理がつかず、ただただ圧倒されるばかりの不思議な感覚でした。
その感覚は、ある種受け入れ難い「異物」が体内に入ってきたかのような、体験したことの無い衝撃であったことを鮮明に覚えています。
リアルタイム世代にとっては、ポール・ディアノがヴォーカルを務めた初期2枚のアルバムには思い入れが深く今でもお気に入りになってることでしょう。
勿論、ブルース・ディッキンソンも素晴らしいヴォーカリストであり、3枚目以降のアルバムも名盤が目白押しですが。
当時、喰らってしまった「メガトン級の衝撃」はあまりに大きく桁違いのインパクトだったのでした…。