IRON MAIDEN 【進化を遂げた名盤】 SOMEWHERE IN TIME

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ヘヴィメタル・リスナーの方で知らない人はいないとも言えるバンド「IRON MAIDEN」。

古参ファンの方々には既出の内容ですが、世の中には「これから聴き始める」、未来のヘヴィメタルシーンを担っていく若い方達もいると思います。

当時のシーンをリアルタイムで体感してきた空気感を、少しでも感じて頂けたら幸いです。

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SOMEWHERE IN TIMEどんなアルバム?

長!大作曲で固めた完成度

「Somewhere in Time」は1986年リリースのIRON MAIDEN6枚目のアルバムです。
IRON MAIDENはデビュー間もない初期のパンキッシュな荒々しい作品も魅力ですが、アルバムをリリースする度に常に新たな魅力を提供し続け、進化の歴史を刻んできました。

基本的な音楽性である「複雑な曲展開を真骨頂としたドラマティックな正統派ヘヴィメタル」に軸足を置きつつも、新しいアプローチを取り入れながらその完成度を着実に高めてきたバンドとしての足跡は、まさにヘヴィメタルの歴史そのもの。

本作では、特に「新しさ」という面でシンセ・ギターやシンセ・ベースを導入しながらキャッチーで解りやすい楽曲が揃えられており、シーンでは賛否両論が沸き起こることとなりました。
偶然にも、本作リリースの約2か月前に発表されたJUDAS PRIESTの10枚目のアルバム「TURBO」も、同様にシンセ・ギターがダイナミックに導入されておりシーンをざわつかせたばかり。
「MAIDENよ、お前もか…」と言った悲観的な意見もあったようですが、個人的にはむしろ諸手を挙げての大歓迎。
変にダーク&ヘヴィネス化、必要以上に難解なプログレ化と言った遠く彼方に突っ走っていかれるよりも、自分の好みであるストライクゾーンにより接近して来てくれたようで素直に嬉しかったです。

そして本作最大の魅力は聴き応え十分な「長!大作曲」で固められたアルバム構成。
収録されている全8曲の内、4曲が6分を超える超大作!。
アルバム全体で1曲当たりの平均時間は6分25秒です!。
通常ではだるくなって飽きてしまいそうな「長!大作曲」も、全くその長さを感じさせない巧みなアレンジとドラマティック性で、むしろ「もっと聴いていたい」「永遠に聴いていたい」と言った感覚に陥ってしまいます。
いたずらに(とか言うと怒られそうですが)長ったらしくて、じれったくなってしまうB級プログレ作品にはない、1音たりとも聴き逃せないという緊張感と気が付けば楽曲の世界観にどっぷりと首まで浸かっているかのような陶酔感に溢れる楽曲で固められています。

個人的には過去最高傑作のジャケットデザイン

本作のコンセプトとして明確な「近未来」の世界観。
楽曲はもちろんのこと、アルバムジャケットのデザインも大いにシーン(特に日本?)をざわつかせました。
私はLP盤で本作を購入しましたが、デレク・リッグスの手によって遠近感を最大限に強調しながら細部にこだわって描かれたジャケットの表裏を眺めているだけでも時間の経過を忘れてしまう程、見れば見るほど素晴らしいデザインです。

昭和世代には「キカイダー」を想起させるような「近未来型エディ」はムキムキの筋肉質。
時刻は深夜の23時58分(裏面描写)。
場所を匂わす標識には3枚目アルバム「魔力の刻印」に収録の「22 Acacia Avenue」からの系譜が見てとれます。
狙撃直後の煙を吐くエディの銃によって仕留められた敵は、その描写は無いものの右手をあげるのがやっとの絶命間近の状態。
血のような緑の液体を右手から吹き出しながら力なく最期の時を迎えようとしています。
左側には敵の頭脳部分でしょうか、吹っ飛んだ脳ミソのようなパーツ。
裏面のメンバー描写でブルースが両手で大事そうに持っている物も「脳ミソ」っぽくも見えることから、エディが駆逐した敵の脳ミソをメンバーが回収して廻っているかのようです。
そのままストレートに考えれば、文字通り4枚目のアルバム「頭脳改革」の実践ですね。
表面でハッキリと判読できる日本語として「警告 白ニキビ」「玉井」、裏面では思い切り人名である「浅田彰」などの文字があり、日本のファンにとっては嬉しい限りです。
(因みに浅田彰は経済学者、批評家のようですね。)

裏面には然程の緊迫感は感じられない散歩気分程度のテンションに見えるメンバー5人の姿。
ニコ・マクブレインはおでこに撃墜王のパイロットゴーグルを着けています。
遠くの背景には5枚目のアルバム「Powerslave」を想わせるピラミッド群がおびただしい数の稲妻を浴びながらそびえています。
ビル間をつなぐ連絡橋に設置された電光掲示板には、サッカープレミアリーグの試合結果速報が流れており、ウェストハムが7-3でアーセナルに勝利との表示。
(サッカーにしては凄まじい乱打戦ですが…)
これは明らかにウェストハムのユースチームにも所属していたスティーブ・ハリスを意識したものと思われます。

その他、細かい表記まで取り上げていったらキリがありませんのでこの辺で。
兎に角、深堀りすればするほど無限に楽しめそうなジャケットデザインです。

【IRON MAIDEN】アルバム一覧(ディスコグラフィ)はこちらから

 

バンドメンバー・収録曲

バンドメンバー

  • ヴォーカル: ブルース・ディッキンソン
  • ギター  : デイヴ・マーレイ
  • ギター  : エイドリアン・スミス
  • ベース  : スティーヴ・ハリス
  • ドラム  : ニコ・マクブレイン

収録曲

  1.  Caught Somewhere In Time [7:25]
  2.  Wasted Years [5:07]
  3.  Sea Of Madness [5:41]
  4.  Heaven Can Wait [7:21]
  5.  The Loneliness Of The Long Distance Runner [6:31]
  6.  Stranger In A Strange Land [5:44]
  7.  Deja-Vu [4:56]
  8.  Alexander The Great [8:35]

おすすめ楽曲レビュー

よく「捨て曲無し」とか言いますけど、本作はホント全曲「おすすめ」です。以上。

それではレビューにならないので特選3曲だけピックアップすることにします。

Caught Somewhere In Time

オープニングからアルバムの世界観である「近未来感」が爆発。
本作で初導入の新兵器シンセ・ギターがもろにはまって躍動感に溢れていますね。
7分26秒の長大作感を微塵も感じさせないスピードとフックに富んだメロディ展開で、一気にアルバムの中の時空に引きずり込まれていくような印象です。

The Loneliness Of The Long Distance Runner

LP盤のB面1曲目に位置する文字通りの長大作曲。
テーマは英国の小説家アラン・シリトーによる短編小説「長距離走者の孤独」。
貧しい家庭に育ち少年院送りとなった不良少年が長距離走者としての能力を開花させ、院対抗の競技会に出場。
圧倒的な力を発揮し独走状態で首位でゴール目前となるも、ゴール前で立ち止まり追走者にわざと順位を譲る行動に。
自身の評価を得たいがために自分を特別扱いして練習させた利己主義の院長(更には全ての大人や社会全体)に対して、最後の最後で反抗心を露わにしたという物語。
ブルースの熱唱が少年の内に秘めた悲哀の情と、沸々と静かに燃やす反骨心を余すところなく表現しています。
最早シンセ云々とかどうでも良くなる究極のツイン・リードのギターが縦横無尽に冴えわたります。

Alexander The Great

3曲目にピックアップしたのは、アルバムのラストを飾る本作最長の8分35秒の超々大作。
壮大、荘厳、勇壮、雄大、威風堂々…。
兎に角スケール感が半端なく、筆舌し難いほどにドラマティック!。
これはまさしく一つの物語であり劇場ドラマですね。
アルバムの世界観である「近未来感」とは対極に位置する「古代感」を思わせるような歌詞と楽曲のムードには、私のような凡人には整合性が今一つかないものの、恐らくスティーヴ・ハリスの頭脳の中ではしっかりとした系譜が描かれているのでしょうね。

期待感しか感じさせない神秘的なイントロや、スティーヴ・ハリス渾身の長めのベースソロは悶絶級。
アレクサンダー大王も偉大だったようですが、IRON MAIDENも十二分に偉大です。

まとめ 

個人的には「近未来」と「進化」をコンセプトとして感じる本作は、数あるIRON MAIDENのアルバムの中でも特にお気に入り上位の作品です。
今回レビューさせて頂いた3曲以外にも、エイドリアン・スミスによる「Stranger In A Strange Land」に代表されるようなキャッチーかつグルーブ感漂う楽曲、その他、オーソドックスなクサメロが炸裂する「De ja vu」など、アルバム全編を通じて果てしない満足感が味わえます。

とかく、バンドとしての音楽性に新たな試みを導入したり進化を狙う過程においては、ファンを「おいてけぼり」にした暴走となってしまい意図せぬ離反を招いてしまうことがあります。
(おーい!待ってくれー!どこ行くんだー!状態。)
が、IRON MAIDENのアルバム変遷における「進化」は、ファンに寄り添った絶妙な伴走をしてくれるので、聴く者の音楽的見地を知らず知らず広げてくれるとても有難くも巧妙なアプローチの仕方をとっていますね。

前作「Powerslave」における一撃必殺の名曲「ACES HIGH」のような突出した楽曲は無いものの、平均点の高さ、アルバム全体の総合力で勝負する名盤と言えるでしょう。

 

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