ヘヴィメタル・リスナーの方で知らない人はいないとも言えるバンド「IRON MAIDEN」。
古参ファンの方々には既出の内容ですが、世の中には「これから聴き始める」、未来のヘヴィメタルシーンを担っていく若い方達もいると思います。
当時のシーンをリアルタイムで体感してきた空気感を、少しでも感じて頂けたら幸いです。
Iron Maiden 1st どんなアルバム?
それはまるで、コーナーポストのトップロープからパイルドライバーを喰らったかのような、まさに脳天に杭打たれたような衝撃!(首がやばい)。
NWOBHMの最高傑作とも言える超名盤
IRON MAIDENのデビューアルバム「IRON MAIDEN(邦題:鋼鉄の処女)」
私のアイアン・メイデン初体験はこのシングル曲
私のアイアン・メイデンとの初遭遇は、兄貴の買ってきた1枚のシングルレコードでした。
英国ではランニング・フリーが先行シングルでリリースされていたようですので、日本盤のこのシングルはいわゆる「ダブルA面」というやつになりますね。
楽曲を聴く前に抱いた印象は、おどろおどろしいジャケットデザイン、鋼鉄処女?というバンド名からして後にハードコアパンクなる潮流を生み出していく「ちょっと激しめのパンク?なんだろうな」くらいのものでしかなかったです。
そして、初めて音源を耳にした衝撃。(正確には兄貴が聴いていたのを「また聴き」していただけですが…。)
「これは何だかえらいことになってるぞ?」というのが、当時のファーストインプレッションでした。
兄貴の影響で、KISSやDEEP PURPLE、BOSTONやTOTO、THE CLASHあたりを中心に、少しずつあれこれかじりながら悦に入っていた当時の小僧にとっては、ハードロックとヘヴィメタルの違いなんぞも良くわからない状態(いまだに危ういかも知れませんが…)でした。
そんな中で、「自身の音楽脳フィールドにおいて、全然わかっちゃいないながらも何となく感覚的にしていた自分の中でのカテゴライズに、当てはめられない物が出てきてしまった」といのが正直な印象でした。
その感覚は、ある種受け入れ難い「異物」が体内に入ってきたかのような、体験したことの無い衝撃であったことを鮮明に覚えています。
因みにこのシングルレコードは後にプレミアが...
余談になりますが、このシングル盤のジャケットデザインは発禁?となったのか、今では相当のプレミアがついているようです。
イラストレーター デレク・リッグスによる初代エディに刃物で刺されているのは、どう見ても英国第71代首相のマーガレット・サッチャー。
1979年から英国首相となり、保守的、かつ強硬な政治姿勢から「鉄の女(IRON LADY)」の異名を取ったことで知られています。
黒く目隠しこそされているものの、エディに刺されて横たわっているのはサッチャー首相を描いたものであることは明らかなことから、発禁ジャケットとなってしまった事は容易に想像できます。
持っている方は是非大切に…。
あらゆる要素が新鮮で衝撃的だったアルバム
兄貴が買ってきたシングル盤の2曲で完全にこの新興バンドの虜となってしまった小僧は、やがて兄貴がアルバムを買ってくるだろうと、他力本願を決め込んでいましたが一向に買ってくる気配がないので、友人の中からどうにかアルバムを持っている奴を探し出し借りることに成功。
アルバムを初めて通しで聴いた印象は、事前に聴いていたシングル2曲以外は当時の小僧にとってははっきり言って「荷が重すぎ」。
とにかく初めて耳にする「ある種未知のジャンルの音源」でしたので、一度聴いたくらいじゃ良さが解りませんでした。
何度も何度も繰り返し聴きまくりましたねぇ~。
特に7分を超える大作「オペラの怪人」の曲展開の素晴らしさ、ドラマティック感を実感するには少し時間を要しました。
音質も衝撃的でしたね。
BOSTONの2ndアルバムを聴いた時と対角線の位置にある衝撃とでも言いましょうか。
スタジオ一発録りのような荒削りなライブ感と、相反するように複雑かつ緻密に構築された曲展開が凄過ぎます!。
しばしば入ってくるハウリングノイズ、ヴォーカルの肉声、ここにオーディエンスの歓声を被せたら立派なライブアルバムとなり得るかのような、生々しい演奏に痺れます。
そして、何よりも一番衝撃を受けたのがリズム隊の2人。
ランニング・フリーのクライブ・バーのドラム、オペラの怪人のスティーブ・ハリスのベースは、これまでに聴いてきたどのバンドとも違うスピード感とメロディセンス、オリジナリティ溢れるプレイぶりにおったまげてしまいました。
特にスティーブ・ハリスのベースはヤバかったですね!。
ギターと同じメロディを弾くベースというものが初体験でしたので。
それまでベーシスト、ベースの「音」として意識して聴いたことがあったのは正直ジーン・シモンズとグレン・ヒューズ、ロジャー・グローバーくらいでしたので、このアルバムを聴いて「ベース」に対する自分のイメージや概念みたいなものが一気に変わってしまったように思います。
以上のように、NWOBHMムーブメントの代表格、牽引役に一気に駆け上がっていくことになるアイアン・メイデンが1980年にリリースしたヘヴィメタル史上最重要作品ともいえるデビューアルバムが本作なのです。
【IRON MAIDEN】アルバム一覧(ディスコグラフィ)はこちらから
バンドメンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ポール・ディアノ
- ギター : デイブ・マーレイ
- ギター : デニス・ストラットン
- ベース : スティーブ・ハリス
- ドラム : クライブ・バー
【収録曲】
- Prowler [3:52]
- Remember Tomorrow [5:25]
- Running Free [3:14]
- Phantom Of The Opera [7:05]
- Transylvania [4:06]
- Strange World [5:40]
- Charlotte The Harlot [4:10]
- Iron Maiden [3:31]
おすすめ楽曲レビュー
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Prowler
まさに「バリバリ」という表現がピッタリ嵌まる楽曲ですね。
デビューアルバムのオープニングに相応しい勢いのある疾走チューン。
ワウペダルを駆使したデイブ・マーレイの印象的なイントロの系譜はデビュー当時から現在に至るまで踏襲されています。
ペダルをMAXまで上げた時に生じるハウリング音が絶妙に格好良く、日夜コピーとペダルワークの研究に励んだものです。
ポール・ディアノの吐き捨てるようなパンキッシュなヴォーカルスタイルと相まって、楽曲としてのパワー感が半端ないです。
Running Free
後に難病により若くしてこの世を去った不運のドラマー、クライブ・バーの名をヘヴィメタル史に深く刻み込んだ名曲。
スティーブ・ハリスとの鉄壁とも言えるリズム隊は、まさにアイアン・メイデンの屋台骨。
スタジオ一発録りかのような危うさ、一歩間違えるとインディーズ音源にも聴こえてしまいそうな生々しいドラミングが最大の魅力です。
Phantom Of The Opera
数あるアイアン・メイデンを代表する曲の中でも、デビュー本作におけるこの曲はやはり誰もが認める屈指の名曲と言えるでしょう。
40年以上前にこの曲を聴いた時の衝撃。
何よりも、イントロのギターフレーズと同じメロディラインをベースが弾いてくるという前代未聞の荒技を目の当たりにしてしまったギター小僧は、ただただ驚くばかりで衝撃的でした。
そして、縦横無尽に目まぐるしく変化する曲展開、複雑な曲構成という全く新しいテイストの様式美は、その後のあまたのバンドの曲作りに計り知れない程の影響を与えたものと思います。
7分という超大作を「長い」と感じさせない、逆に「もっと聴いていたい」と思わせるかのようなドラマティックな展開、ストーリー性は圧巻の一言に尽きます。
レコードではA面最後の収録となる本曲。
楽曲が終了した後の数秒後に再び謎のシャウト音声が収録されており、「これはエディの声なのでは?」などと小僧達の幻想は広がったものでした。
Transylvania
アルバムB面のオープニングはスピーディーな高速インストチューン。
歌メロがないのでややもすると途中で飽きてしまいがちなインストロメンタル曲ですが、アイアン・メイデンのこの曲は飽きるなどとは微塵も感じさせないドラマテックな曲展開とスピード感に溢れています。
「いやはや、この曲もすげぇな。」
この一言が、この曲をレビューする時に最も便利な言葉ですかね。
これまた後に数々のインストチューンの名曲を輩出することになるアイアン・メイデンですが、こうして改めて聴き直してみると、インスト曲になると殊更にアドレナリンが噴き出すかのごとく、気合い、メイデン魂みたいなものが普段以上に高まっているような気がします。
因みに、本曲を含めた胸熱の1980年代「インスト曲」をピックアップした特集記事をご参考までに。

Iron Maiden
アルバムのラストを締め括る象徴的なタイトル曲。
まさにパンキッシュなポール・ディアノのヴォーカルと、ダイナモのように走りまくるドラムで勢いだけの曲かと思いきや、しっかりと展開に変化をつけてくるあたりがさすがです。
後に雨後の筍のようにシーンに湧き出てくる「メイデン風バンド」「メイデン風楽曲」は、この曲を原液として水で何倍かに薄めたようなテイストのものが多かったように感じます。
(めんつゆじゃないんだから…)
まとめ
先にレビューしましたアイアン・メイデンの2ndアルバム「Killers」の紹介記事でも書きましたが、やはりリアルタイム世代の私にとっては、ポール・ディアノがヴォーカルを務めた初期の2枚のアルバムが何だかんだで思い入れが深く、今でもお気に入りになっています。
勿論、ブルース・ディッキンソンも素晴らしいヴォーカリストであり、3枚目以降のアルバムも名盤が目白押しですが。
当時、喰らってしまった「メガトン級の衝撃」はあまりに大きく桁違いのインパクトでした…。
