Scorpions / Love at first sting レビュー
本作「禁断の刺青」は前作「BLACKOUT(蠍魔宮)」と甲乙つけがたい最高傑作です!
言わずと知れたドイツが産んだHR/HM界の重鎮スコーピオンズの1984年リリースの9枚目のアルバム。(邦題:禁断の刺青)
1984年で9枚目ですからね、9枚目。
そんじょそこらのポッと出の若造とは年季が違います。
前作8枚目(1982年リリース「ブラックアウト(邦題:蠍魔宮)」)と本作9枚目の連続ヒットにより、スコーピオンズはドイツのみならず世界的な成功を手中に収めました。
歴史的な名作なので、もしもこれからスコーピオンズを聴くという人ならこの2作のいずれかからというのが定石と言えるでしょう。
振り返れば、スコーピオンズは1972年にデビューアルバムをリリース。
当時はルドルフ・シェンカーの実弟マイケル・シェンカーもバンドのメンバーであり、まだ二十歳前のマイケル・シェンカーのギタープレイは早くも注目を浴びつつありました。
その後、マイケル・シェンカーは UFO に移籍。
スコーピオンズはニューアルバムをリリースするたびにジャケットデザインで物議を醸すなどの紆余曲折を経て80年代の絶頂期を迎えることとなります。
そして時を同じくして絶頂期に入っていたのがプロレス界。
必殺技の「ジャーマンスープレックス」が繰り出される度にスコーピオンズを連想してしまう貴兄を多かったことでしょう。
とにかく、スコーピオンズ(特に本作と前作)を聴かずしてハードロックを語ることなかれと言える程に良い曲揃いの素晴らしいアルバムなのです。
シンプル&ソリッド感に満ちたギターリフ~キャッチー&叙情的メロディアスな歌メロ楽曲が満載
前作「BLACKOUT」で切れ味の鋭いサイドギターを披露したルドルフ・シェンカー。
本作でもより深部までえぐり切るように最高のプレイをかましていますね。
マティアス・ヤプスの地を這うような独特トーンのリードフレーズと完全に一体化したギタープレイは、抜群の攻撃性と怪しく官能的なムードを醸し出しています。
そしてヴォーカルのクラウス・マイネの表現力豊かな歌唱は、各楽曲の世界観に応じて絶妙に歌いこなされていて楽曲への感情移入、没入感は前作を上回ると言えるでしょう。
誰もが口ずさめる印象的でキャッチーなサビメロ楽曲が多く、マーケットでのファン層の拡大にもつながりました。
文字通り SCORPIONS を世界的なメジャーバンドへ一気に昇格させた「最高傑作」です!。
スコアチャート
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: クラウス・マイネ
- ギター : マティアス・ヤプス
- ギター : ルドルフ・シェンカー
- ベース : フランシス・ブッフホルツ
- ドラム : ハーマン・レアベル
【収録曲】
- Bad Boys Running Wild – 3:54
- Rock You Like a Hurricane – 4:11
- I’m Leaving You – 4:16
- Coming Home – 4:58
- The Same Thrill – 3:30
- Big City Nights – 4:08
- As Soon as the Good Times Roll – 5:01
- Crossfire – 4:31
- Still Loving You – 6:26
おすすめ楽曲
Bad boys Running Wild
その切れ味は、ナイフや刀等ともちょっと異なる「鉈(なた)」って感じですね。
武骨でストイックな見た目、乾燥した樹木を直線的にえぐるかのように切り裂く様がルドルフ・シェンカーとオーバーラップしてきます(ホントか…)。
Rock You Like A Hurricane
続く2曲目は、全ての余計な装飾を削ぎ落とした究極にシンプルなリフで攻めてきます!。
I’m Leaving You
Coming Home
静寂のイントロからのヴォーカルメロディでバラード曲かと思わせておいて~の、一転、雷のようなリフが叩きつけられる疾走曲。
Big City Nights
もう天才リフメーカーというしかないですね。
そして、哀愁の漂うヴォーカルメロディやキャッチーで印象的なサビメロ。
こういう曲では流れに徹して浮いてしまうことの無い控えめなギターソロ。
さすが全てを知り尽くした大人のバンドによる、ライブでの大合唱が確約された完璧な完成度のヒットチューンです。
まとめ
今回ピックアップした曲以外も、どの曲も粒ぞろいの良曲が収められた本作。
やはりスコーピオンズの最高傑作であるとアルバムを聴き直して改めて確信しました。
マーケットを意識したキャッチーな楽曲もさることながら、自らのバンドとしての「軸」は失わず、蠍軍団としての刺激性の強い猛毒を随所に散りばめたアルバム構成はお見事。
それにしても今回久しぶりにスコーピオンズを聴いて思うことは、クラウス・マイネって本当に凄いヴォーカリストだなということですね。
フィルハーモニー管弦楽団との共演時のハイトーンと声量は鳥肌が立っちゃうほど凄いですし。
あの小さい体で「どんだけ~っ」て位にパワフル。
かつ表現力豊かに歌い上げるプロフェッショナルなヴォーカルは、ロニー・ジェイムス・ディオと並ぶどちらも「小さな巨人」ですね。
ハードロック界の至宝とも言えるヴォーカリストを擁して、鉄壁の2人のギタリストがそれぞれ珠玉のフレーズと鋭いバッキングをかますスコーピオンズ。
そりゃまあ安泰、売れて当然ですわなって感じです…。