Scorpions / ROCK BELIEVER レビュー
ミッキー・ディー加入後の初のアルバム
2022年2月25日リリースのSCORPIONSの19枚目のアルバムです。
前作「Return to Forever」が2015年のリリースでしたので、約7年ぶりですね。
その間にドラムがジェイムズ・コタックからミッキー・ディーに代わっています。
それにしても、1992年から2015年の23年間という長期に渡ってMotörhead を支え続けてきたミッキー・ディーが、まさかSCORPIONSに加入するとは驚きましたね~。
2015年12月28日にバンドの象徴であったレミー・キルミスターを失い解散を余儀なくされたMotörheadでしたが、まさに超大物バンド同士が合体したかのような信じられないニュースでした。
まるでそれは、メガバンクで言えば「三井住友」、百貨店で言えば「三越伊勢丹」といったところでしょうか。
(違う気がする…。)
猛毒蠍団にスーパーサイヤ人ドラマーが加入とあっては、もはや怖いもの無しの無双状態。
2016年にはLOUD PARKで来日し、ド迫力なドラミングを披露してくれましたね。
デビュー50周年となる節目の作品
1972年にデビューアルバム「LONESOME CROW」をリリースしてシーンに登場したSCORPIONS。
マイケル・シェンカーのギターを中心としたややプログレっぽさも臭わせる雰囲気を持っていました。
それから50年…。
50年は長いでよ~、半世紀ですから。
おんぎゃぁ、おんぎゃぁって生まれた赤ちゃんが、おっさんになっちゃう年月なんですから…。
もう世界遺産に登録しても良いんじゃないかと個人的には思っているバンドです。
さて、そんな年月の経過を最も感じているのは当然のことながらメンバー自身なわけで、本作の各楽曲の歌詞の中には自分達のこれまでの歴史を振り返るような内容のものが込められていますね。
本作には外部ライターによる楽曲は無く、全てバンド作成の楽曲で全16曲が収められています。
全16曲ってのも大盤振る舞いで50周年ならではですかね。
同じジャーマン勢のバンド「BONFIER」の3枚目のアルバム「POINT BLANK」は確か17曲でした。
こちらの場合は「数打ちゃ当たる作戦」で実は30曲録音してあって、17曲に絞ったそうですが…。
SCORPIONSの本作における16曲は当然のことながら「格」が違います。
各楽曲が歴史の重みを背負いながらも、新しいフレーバーを加えた状態で構成されています。
バンドとしての本作への思いや意気込みが、オープニング曲「Gas in the Tank」に全て表現されていますね。
ルドルフ・シェンカーが菜っ葉包丁のように怖い程の切れ味で刻み込むシンプルなリフをバックにして、クラウス・マイネが自分自身を鼓舞するかのように問いかける。
「タンクの中にガスは入っているか!」。
ガス欠となって燃え尽きるまで走り続けていく、これまた人造人間クラスのスタミナと戦闘力を誇るジャーマン戦士たちに敬服しかありません。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: クラウス・マイネ
- ギター : ルドルフ・シェンカー
- ギター : マティアス・ヤプス
- ベース : パウエル・マチヴォダ
- ドラムス : ミッキー・ディー
収録曲
- Gas in the Tank – 3:42
- Roots in My Boots – 3:18
- Knock ‘em Dead – 4:12
- Rock Believer – 3:57
- Shining of Your Soul – 3:57
- Seventh Sun – 5:29
- Hot and Cold – 4:13
- When I Lay My Bones to Rest – 3:08
- Peacemaker – 2:57
- Call of the Wild – 5:21
- When You Know (Where You Come From) – 4:22
- Shoot for Your Heart – 4:02
- When Tomorrow Comes – 3:51
- Unleash the Beast – 4:18
- Crossing Borders – 3:38
- When You Know (When You Come From) – 3:45
おすすめ楽曲
Gas in the Tank
オープニング曲は前述の通りバンド自身が50年のキャリアを振り返りつつ、アルバムの創作意欲を自ら鼓舞するような楽曲。
正直に書くと、クラウス・マイネのヴォーカルの歌い出し2小節くらいは「老いたなー、大丈夫か?」って感じた位に、声に張りがなくなって発音もおぼろげな印象でした。
クラウス・マイネ、ルドルフ・シェンカー共に、既に御年74歳ですからね。
近所の公園で早朝にグランドゴルフ(ゲートボール?)やってるおじいさんと一緒なんですよね年齢は。
ルドルフ・シェンカーは大柄で動きもしっかりしているのでまだ見ていられますが、クラウス・マイネはもともと小柄で派手なアクションで立ち回る感じではないので、なんだか立ってるだけでも不安定な感じに見えちゃいます。
でもそんな心配はご無用とばかりに、歌い続けてサビに到達する頃には、往年のクラウス・マイネの艶と張りのある歌唱が蘇ってきて安心しましたー。
そして何より心強いのがバンドのダイナモと化したミッキー・ディーのパワフルなドラミングですね。
バンドの各メンバーへ、そして聴いているファンにパワーを分け与えてくれている感じです。
Rock Believer
イントロを聴いて誰もが思い浮かべたのは「あの楽曲」ですよね、あえて書きませんが。
まさに原点回帰…。
MVで流されていく過去の栄光画像と優しく歌うクラウス・マイネのヴォーカル・メロディがあまりにグッときて、油断していると思わず泣きそうになってしまいます。
SCORPIONSがファンと寄り添いながら歩んできた「ROCK 信者」としての50年間。
これまでにもらってきた数えきれない程の感動や勇気に、心の底から感謝の気持ちが湧き上がってきます。
サビの裏で刻まれるタメにタメた渾身のバッキングが渋過ぎますね~、どんな速弾きやテクニカルな演奏よりも心奪われる格好良さ、「ROCKの真髄」のような気がします。
問答無用の本作最高にして優勝楽曲!。
Peacemaker
本作からの最初のシングルカット曲。
「Peacemaker」は直訳すると「仲裁人・まとめ役」ですね。
ロシアによるウクライナ侵攻により、何の罪も無い多くの犠牲者が出ている事へのメッセージと理解できます。
加えて、コロナ感染の世界拡大もあり儲かっているのは「葬儀屋」だけだと怒っているようです。
いずれにしても平和を願う心は人類共通のものであるはずなのですが…。
人間が持つ内面的、外面的な「弱さ」に打ち勝つことが必要だと訴えているように思います。
SCORPIONSのような影響力のあるバンドがこうしたメッセージっを発信し続けてくれることには、大きな意義と期待感が膨らみますね。
When You Know (When You Come From)
アルバム11曲目に収録のバラード曲。
いやぁ~、このMVもヤバ過ぎますね。
無言で佇むメンバーを一人ずつショットしていくのは反則ですよね。
訳もなく涙腺が緩んできます…。
一人一人の顔に刻まれた小じわの一本一本に「男の人生の歴史」みたいなものを感じちゃいます。
まさに海千山千を乗り越えてきた者だけが持つ「男の面構え」とでも言いましょうか。
マティアス・ヤプスとルドルフ・シェンカーはほんとヤバ過ぎの渋い顔してますよね。
自分も良い歳の取り方をして渋くありたいな~と思ったのでしたー。
まとめ
BOSTONの10年周期程ではないにしろ、約7年という長期の間隔を経てリリースとなったSCORPIONS待望の19枚目のニューアルバム。
期しくも1972年のデビュー後50周年という節目の作品となった本作で、バンドが提示してくれたのは50年間を総括するような原点回帰と永遠にファンと共にありたいという愚直な思いのような気がします。
アルバムタイトル曲「ROCK BELIEVER」の歌詞の文字通り、「ROCK信者」であるバンドとファンが一緒になってこれからも歩んでいこうというメッセージ。
罪のない人が犠牲となる戦争やパンデミックなどの脅威を乗り越えて、平和な日々を目指す強い意志と勇気を持とう!と、鼓舞してくれる74歳の老人2人(失礼…)を中心メンバーとするSCORPIONS。
ファンであるまだまだヒヨッ子の私たちも負けていられませんよね。