The Michael Schenker Group / 1st レビュー
邦題「神 帰ってきたフライング・アロウ」
兄ルドルフ・シェンカー(スコーピオンズ)の元を離れてUFOに参加するためイギリスに渡ったマイケル・シェンカー。
UFOでの鬼気迫るプレイで数々の名曲を生み出すこととなる一方で、英語が話せなかったことから精神的孤独に追い込まれて酒に溺れ、最後は廃人寸前のアル中?にまでなってしまいました。
その後、入院生活~リハビリを余儀なくされたようです。
UFOのバンド活動にとってやっかい者となってしまったマイケル・シェンカーは、結局バンドを脱退し、再び兄ルドルフの元に戻ることに。
スコーピオンズでのリハビリ期間を経た後に、自らのバンド「The Michael Schenker Group」を結成します。
1980年リリースの本作で再び「神」がHR/HMシーンに帰ってきたのでした。
ギター小僧もストラトからVへスイッチ
当時ギター小僧だった私はリッチー・ブラックモアを崇拝しストラトキャスターを毎日磨いていましたが(弾いてないんかい!)、「神」の降臨で完全にマイケル・シェンカー信者に改宗いたしました(ミーハー寝返りともいう)。
どうしても「股にはさんだあのポージングでギターを弾きたい」という衝動に駆られてしまったのです。
でも、レコード代、スタジオ代、エフェクター代、洋服代、喫茶店代、たばこ代、パチンコ代などなど、とてもじゃないけどギブソンは無論のことグレコのレプリカモデルさえ買えるようなお金なんぞたまりません!。
(いくつかの法令違反をしてなければもう少したまった筈ですが…)
苦肉の策として小僧がとった施策は「Aria ProⅡのVモデルで我慢する」でした。
フライングVに比べると、ちょっと細身でコマネチ、いやV字部分の切れ込みがやや浅いのですが、背に腹は代えられないので仕方ないです。
でも軽くてコンパクトなのと、ソフトケースが当時は普通茶色の渋いやつばっかりだった中でシルバー色で目立っていたのでお気に入りでした。
そして以前に他の記事でも書きましたが、ワウペダルもクライベイビーよりも少しだけ安上がりのMaxon製のもので経費削減という、涙ぐましい努力。
(こちらは後に、トーンがクライベイビーとは全然違う事を思い知らされて結局買い直すことに…)
こうして、来る日も来る日もギターを股に挟んでマイケル・シェンカー節の練習に明け暮れていたのでありました。
80年代HRの幕開けを体感するアルバム
本作を一言で言ってしまえば、
「70年代ハードロックとの決別~80年代ハードロックの幕開けを象徴するサウンドと楽曲」というのが私の率直な印象。
うまく表現できませんが、70年代ハードロックの「総じてややこもりがちなトーンのいまいち切れ味に欠ける印象」のサウンドと比較して、本作は初めて聴いた当時から明らかにメロディライン、音質、楽曲の展開構成に革命的な変化とインパクトを感じた作品でした。
オープニングの「Armed & Ready」こそ往年のハードロックを踏襲したオーソドックスな楽曲と言えるものの、その後の「Cry for the Nation」から先は完全に新次元に足を踏み入れたような感覚でしたね。
何よりも楽曲のメロディライン、ギターフレーズが、後にマイケル・シェンカー節と形容されることになる、まさに「神」ならではの強烈なアイデンティティを感じさせるものでした。
程なくしてゲイリー・バーデンのボーカルが物議をかもすことになりますが、初めて聴いた当時は然程気にもならず。
とにかく、そんな枝葉のことなど気にならない程に「神」のギタープレイに酔いしれていたのだと思います。
極めつけは「Into the Arena」という当時としては驚きの長尺のギターインスト曲。
陳腐な表現しかできず恐縮ですが「完全にギターが歌っています」。
今でも頭の中で全て反芻して唄える(歌詞は無いけど)程に聴きまくっていました。
個人的には本作含めたその後(ちょっと苦手な声質のマッコリさんが来る前の)4枚目のアルバムまでは問答無用の「名盤中の名盤」という意見です。
(恐らく多くの方々の賛同を得られると思いますが…。)
こうしてギター磨き小僧は「MSG沼」にどっぷりとはまっていったのでありました。
メンバー・収録曲
メンバー
- ボーカル :Gary Barden
- ギター :Michael Schenker
- ベース :Mo Foster
- キーボード:Don Airey
- ドラム :Simon Phillips
収録曲
- Armed And Ready
- Cry For The Nations
- Victim Of Illusion
- Bijou Pleasurette
- Feels Like A Good Thing
- Into The Arena
- Looking Out From Nowhere
- Tales Of Mystery
- Lost Horizons
おすすめ楽曲
Armed And Ready
ハードロックにおける基本の「き」、誰もが一度は弾いたであろうお手本的なリフ。
当時のほとんどのギター小僧達がこぞってコピー練習、プレイしたと思われる名曲ですね。
ハードロックの教科書のようなリフと中低音域から高音域まで流れるように展開されるソロフレーズ。
一体これまでの人生で私も何度この曲を聴いたり演奏したりしたことでしょう。
もはや身体の一部として染み付いてしまっているように思えます。
これからも、ハードロックの歴史における名曲として未来永劫語り継がれていくことでしょう。
更に、後に発売されることとなる「飛翔伝説(武道館ライブ盤)」では、ドラムがコージ・パウエルに代わって、本曲の持つ躍動感が一気に覚醒され完全に楽曲として「生まれ変わった」感が出ていますので必聴ですね。
Cry For The Nations
イントロの刹那気なメロディ、シンプルでダイナミックなバッキング、マイケル・シェンカー節が満載の官能的なギターソロ、誰もが認めるMSGの数ある代表曲の中の一曲。
これまたハードロック史における屈指の名曲といえるでしょう。
圧巻のギターソロでは「チョーキングとは?」が学べるフレーズが炸裂。
もはや弦を切る位の覚悟でチョーキングしないと神のニュアンスが出てこない事を教えてくれます。
今回の添付音源はリマスター盤なので、かなりいじくり倒されてクリアーな音質になっているようですが、当時の音源を記憶する者にとってはオリジナル音源の方がクライベイビーによる絶妙のこもり具合、渋みがあって良かったように感じてしまいます。
Into The Arena
しつこい言い回しですが、本曲もハードロック史に燦然と輝く名曲中の名曲ですね。
長尺のインストルメンタル曲ながらだるさを微塵も感じさせないマイケル・シェンカー節の怒涛のもろ差しガブリ寄り。
まるで琴風のような電車相撲で寄り切られます。
終盤の3連符フレーズからのクライマックス~エンディングにかけてはまさに鳥肌ものですね。
ギターってここまで表現可能なのですねと、今更ながら感心してしまう「神」のメロディセンス。
思わず胸の前で手を組んで聴き入ってしまいます。
寡黙(かどうかは知りませんが、勝手なイメージ)な職人、サイモン・フィリップスのドラムも派手さは無いものの玄人受けする渋いドラミングを見せていますね。
(ってお前は素人だろ!)
当時の新日本プロレスで言うならば、カール・ゴッチ道場の優等生「木戸修」のようないぶし銀のプレイぶりでしょうか。
(って、誰も知らんやろ!)
因みに、本曲を含めた胸熱の1980年代「インスト曲」を特集した記事をご参考までに。
Looking Out From Nowhere
HR/HMを聴き始めてから苦節40年以上が経ちますが、自らの嗜好傾向の根源といいますか「この手の曲に滅法弱い自分」を改めて再認識しました。
そう、私、哀愁のギターメロディで始まるミディアムテンポのメロディアスかつキャッチーなサビメロの楽曲に「異常に弱い」のです。
その原因は今想えばどうやらこの曲辺りに原因があるのではと思われます。
言い変えれば、少なからず「神」に影響を受けた世界中のHR/HMミュージシャン、バンド達も少なからずその影響を後の作品に反映させながら今日に至っているのではと思ったりしています。
まとめ
「小指はあまり使いませんが、何か?」奏法の「神」は、速弾きやトリッキーな技なんぞに頼ることなく、ひたすら自らの魂から湧き上がるエモーショナルで官能的な情感とセンシティブな感情を、ギターによって表現していたように思います。
その辺りは「孤高のギター侍」ゲイリー・ムーアとも少し相通ずる部分があるように勝手に思っています。
精神的、肉体的な不安定状態からの復活を試みた本作では、そのメロディラインや楽曲から滲み出てくる雰囲気に未だ「陰」「翳」の部分が垣間見えます。
しかしながら、それもまたマイケル・シェンカーというギタリストのカリスマ性、神秘性を増幅させる良い方向に作用した感があります。
一方で、最近非常に気になるのはかつての名プレイヤー達の急逝のニュース。
私もこの歳になって自身の健康状態に大きな危機感を抱いていますが、世界的な影響度が計り知れない「神」のようなお方は、これからも長生きしてもらって現役でのプレイを魅せ続けてもらわないとホントに困ります。
そういう意味では、16年という長きに渡りマイケル・シェンカーをサポートしてこられた日本人女性との結婚は、安心感を得られる良いニュースでしたね。