TOTO / THE SEVENTH ONE レビュー
バンド最高傑作の称号を「聖なる剣」と二分する名盤
2023年7月。
デビュー45周年を迎えたTOTOの約4年ぶりとなる来日ツアー。
最終日の武道館公演終了後にこの記事は書いています。
1988年リリースのTOTO 7枚目のアルバム「THE SEVENTH ONE(邦題:第七の剣)」。
前作に続きジョセフ・ウィリアムズがヴォーカルを務め、前作で脱退したスティーヴ・ポーカロがゲスト参加という布陣で制作されました。
「TOTOの最高傑作は?」と問われた際には本作を上げるファンも多く、その人気は最大のヒット作である「聖なる剣」と二分する位に品位の高い名盤ですね。
多彩な音楽ジャンルのテイストを感じる楽曲が「ちゃんぽん構成」で収録され、絶妙なコマーシャルPOP感を備えた上質の大人のロックが展開されているのが「聖なる剣」との共通点。
両作品はジャケットでも「剣」デザインでガチンコの戦いを見せています。
サウンドプロダクションや楽曲の洗練度と言った面では当然のことながら本作の方が上回ってはいるものの、反面ハードロック感はより一層減退、個人的には柳の下の2匹目のどじょうを狙いにいった印象も否めず、当ブログでは散々迷った末に「聖なる剣」の方に最高傑作の軍配をあげた次第です。
↓↓↓TOTO 最高傑作「Ⅳ(聖なる剣)」のレビュー記事はこちらから↓↓↓
貢献度の高いジョセフ・ウィリアムズの存在
(今回の来日ツアーでも円熟の歌唱を披露してくれた)ジョセフ・ウィリアムズですが、本作におけるセンス抜群のソングライティング、透明感のある声質での剛柔自在の伸びやかな歌唱といった面での貢献度は非常に高いものがありますね。
これまで主にスティーヴ・ルカサーとデヴィッド・ペイチの音楽性が反映されてきたTOTOの楽曲作りのステージを1ランクアップさせたかのような、明らかな上質感と洗練度の増し増し感はジョセフ・ウィリアムズの加入によるところが大きいように思います。
それだけに、前作「FAHRENHEIT」と本作の僅か2枚のアルバムのみで当時バンドを去ってしまったのは非常に勿体なく残念でした。
今回改めてじっくり聴き込んでみましたが、何となくリチャード・マークスに声質がにているなぁ~なんて思ったりもします。(特に力んだ時の歌唱など)
↓↓↓リチャード・マークスについての記事はこちらから↓↓↓
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超技巧派集団によるバラエティに富んだ玄人向けのアダルティな楽曲群を、ジョセフ・ウィリアムズのより洗練されたセンスでブラッシュアップすることに成功した本作は、バンドとしてのTOTOが昇りつめた完成形とも言える名盤ですね。
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ジョセフ・ウィリアムズ
- ギター : スティーヴ・ルカサー
- ベース : マイク・ポーカロ
- ドラムス : ジェフ・ポーカロ
- キーボード: スティーヴ・ポーカロ
- キーボード: デヴィッド・ペイチ
【収録曲】
- Pamela – 5:11
- You Got Me – 3:11
- Anna – 4:58
- Stop Loving You – 4:29
- Mushanga – 5:35
- Stay Away – 5:31
- Straight for the Heart – 4:09
- Only the Children – 4:11
- A Thousand Years – 4:53
- These Chains – 4:59
- Home of the Brave – 6:51
- The Seventh One – 6:20
おすすめ楽曲
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Pamela
オープニングの曲調としては意外にも落ち着き払った大人の楽曲を持ってきましたねぇ~。
まさに泰然自若とした横綱相撲のような風格と同時に、冷たく張りつめた緊張感も醸し出しています。
何気なくサラッとお洒落に聴こえるメロディながら、やっていることは超絶職人芸の複雑さ。
難しいプレイを涼しい顔して難しく聴こえなくしてしまうところがホントに恐ろしいバンドです。
エンディングなどはその最たるもので、各パートがきりもみ状態のように絡み合いながら見事なアンサンブルを聴かせてくれてます。
いやぁ~、凄過ぎます。
Stop Loving You
スティーブ・ルカサーのお得意バラードの後に続く本作の最高楽曲候補ともいうべき一曲。
クリスタルのような煌めきを放つイントロ~サビに向かってジワジワ盛り上げていく歌メロ~親しみを感じるサビメロは伸びやかなコーラスと共に爽快感が全開となりますね。
ジョセフ・ウィリアムズのヴォーカルが秘めていたポテンシャルが一気に爆発し、美し過ぎるハイトーンが突き抜けていきます。
それにしてもこのお方、単純に歌が上手いだけではなく上質感のあるメロディセンスは父親譲りなのでしょうね。
相変わらず演奏陣も随所に小技を駆使しまくっており、文句のつけようがないAOR楽曲の完成形です。
Straight for the Heart
いやぁ~、ここでもビッシビシきてますねぇ~ジェフ・ポーカロのドラミング。
あくまでノリの良いビートに徹し、必要最小限のタムのおかずにとどめる「一撃必殺」の達人芸がお見事。
派手さで勝負しない(する必要のない)本物は、やはり切れ味が桁違いですね。
そしてこの曲辺りでもジョセフ・ウィリアムズのヴォーカルは、個人的にリチャード・マークスの顔が浮かんできちゃうんですよねぇ~。
いけませんね、一度意識しちゃうとずーっとそれっぽく聴こえちゃう病です…。
Only the Children
ここで遂に登場するのが個人的本作最高楽曲。
「わかっちゃいるけどやめられない」って感じで、好きなんですよねぇ、このパターンの楽曲が…。
本作の中では最もハードロックしているイントロのスティーブ・ルカサーのGリフで呆気なく持っていかれちゃいましたぁ~。
私の中でこの名曲が脳内再生されるタイミングってだいたい決まっておりまして、忙しかった週の金曜日。
ようやく仕事が終わって会社を脱出できた瞬間なんですよね~。
何か、今週も良く働いたなって感じで開放感に浸れる瞬間に、脳内の遠くの方からこのギターリフが鳴り響いてくるのです。
そしてシリアスな歌詞とともに憂いを秘めた歌メロが心に沁み込んできます。
ラストでレゲエチックなリズムに転調するあたりも、この技巧派集団にしか思いつかないであろう驚異的なセンスですね。
まとめ
前作からヴォーカルにジョセフ・ウィリアムズを迎え入れ、楽曲アレンジにより一層の深みとセンスに磨きがかかったTOTOの7枚目アルバム。
過去の最大ヒットの傑作「聖なる剣」とバンド最高傑作の座を争うクオリティを誇る超名盤ですね。
バンドとしてのキャリアを重ね、サウンドプロダクションも向上しており、TOTOが標榜する音楽性という意味では頂点を極めた「完成形」と言える作品です。