現在も根強い人気を誇るモトリー・クルーや、洗練された独特の世界観を構築したRATTなどを筆頭株として、’80年代を我が物顔で席捲していた「LAメタル」。
その中でも、楽曲センスとテクニカルなギタープレイで他のバンドとは一線を画し、ひと際光っていたバンドが「White Lion」でした。
White Lion / Pride どんなアルバム?
生涯ベストアルバムに挙げる人も多い名盤中の名盤
twitterを見ていると、プロフィール欄などに「私を構成するアルバム〇〇枚」等で、自分が最も影響を受けたアルバムを紹介されている人を見かけます。
誰もが認める文句なしの名盤を揃えて挙げている人もいれば、殆ど聴いたことの無い初見のジャケットばかりの相当のマニアの方など様々です。
ただ、’80年代をリアルタイムで体感してきた人がかなりの高確率で「推し」として挙げられているのがこのホワイト・ライオンの2ndアルバム「Pride」かと思います。
当時はまだLPレコード盤の最終期ころだったでしょうか、このジャケットデザインには迫力がありました。
一度見ただけで忘れずに脳にインプットされるジャケットデザインも本作の持つ大きな魅力の一つですね。
そして肝心の中身はというと、とにかく全曲どれもがシングルカット候補、全てがヒットチューンとなってもおかしくない楽曲の完成度を誇ります。
本作と甲乙つけがたい名盤デビューアルバムの音楽性を踏襲し、LAメタルらしからぬ哀愁を帯びたメロディラインには更に磨きがかかり、キャッチーな味付けが濃い目にされた楽曲が目白押しです。
また、それらを単なる売れ線狙いの楽曲という単純な評価で終らせないヴィト・ブラッタのテクニカルなギタープレイも特筆もの。
正統派のHR/HMを好むリスナーをも惹きつけ、興味そそられる作品として仕上がっていることが大きなポイントですね。
クセの強いヴォーカルとトリッキーなギターの2枚看板
デビューアルバム同様に、マイク・トランプのヴォーカルは相変わらずの好き嫌いがはっきりと分かれる独特の声質とクセの強い歌い回しですね。
それでも、そのハンデ?を克服してあまりある楽曲、メロディラインの素晴らしさがこのバンドの真骨頂。
(誤魔化しのきかないライブでは酷評もちらほら聞かれましたが…。)
マイク・トランプと共にこのバンドの看板となっているのがギターのヴィト・ブラッタ。
デビューアルバムで聴く者に大きな衝撃を与えたテクニカルかつ自由奔放なプレイスタイルは、まさしくEd VAN HALENを髣髴とさせる逸材でした。
速弾きとか、タッピングがどうのという技巧的なテクニックだけではない、メロディフレーズの作り方(音の並べ方?)の創造的なテクニックがちょっと異次元の感覚です。
後に、突然引退して完全に音楽シーンから姿を消してしまいましたが、是非ともTV番組「あの人はいま?」で一度取り上げて欲しい人物の一人ですね。
バンドメンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: Mike Tramp
- ギター : Vito Bratta
- ベース : James Lomenzo
- ドラム : Greg D’ Angelo
収録曲
- Hungry
- Lonely Nights
- Don’t Give Up
- Sweet Little Loving
- Lady of the Valley
- Wait
- All You Need Is Rock N Roll
- Tell Me
- All Join Our Hands
- When the Children Cry
おすすめ楽曲レビュー
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当初は何も考えず「Spotify」を貼っていましたが、途中から極力「Apple Music」に変更しました。
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今回は超名曲「Hungry」の聴き比べ特集!
名盤中の名盤だけに、是非ともCDを購入もしくは音源をダウンロード購入して頂いてじっくりとアルバム全体は堪能して下さい。
今回は初の試みで、アルバムオープニング曲の「Hungry」の数種類の音源を聴き比べレビューしてみたいと思います。
通常バージョン
いやぁー、いつ聴いても素晴らしい楽曲ですね~。
分厚い音像でテクニカルなリフが印象に残ります。
音の厚みを最大限に意識しつつ、随所にトリッキーなオブリガードのおかずを配置。
キャッチーながらも湿り気たっぷりの哀愁感あるサビメロ、予定調和を崩しにかかってくるギターソロなど、まるでフルコース料理を頂いているかのような贅沢な感覚になれます。
レア音源集『Anthology ’83-’89』より
こ、これは酷い…。
これがもしも彼ら自身ではなく、他のバンドによるカバーアレンジだったとしたら「名曲 Hungryへの冒涜」と糾弾されるレベルですね。
イントロに付け足されたありがちでわざとらしいアレンジこそ若干の期待感を持ったものの、いざ曲が始まった途端のズッコケぶりに思わず頭を抱え込んでしまいます。
折角の’80年代LAメタルのベスト「リフ大賞」にノミネートされてもおかしくないレベルの「至宝のリフ」を投げ捨ててしまうという暴挙!。
そして、「タメ」の美学、哀愁の「間」といった本来この楽曲が持つ最大の魅力的要素をあっさりと放棄してしまった安直なアップテンポ化。
もう、意味が全くわかりません…。
折角の哀愁メロディをアップテンポにしてどうする?と、バンドメンバーやプロデューサー?の喉元に思いっ切り「地獄突き」を入れてあげたくなりますね。
(ついでに、倒れ込んだところにエルボーも落としてやりましょう。)
この軽々しい安っぽさ、一歩間違えばあの名曲もこんな無残な曲になっていたのかと思うと、運転免許の更新時に違反者講習で見せられる「ヒヤリハット動画」を見た時のように、背筋が凍り付きます。
そして何よりも許せないのがドラム。(容赦なくまだ書くのか…)
もはやプロとしての自覚無いでしょ的な、無気力なお囃子太鼓、合いの手状態じゃあーりませんか!。
このバンドが短命に散った本当の理由が垣間見れるような悲しい音源でした…。
ライブ音源
続いては、ライブでのマイク・トランプの息切れヴォーカルを一生懸命にフォローしてカバーしようとするヴィト・ブラッタの涙ぐましい奮闘プレイぶりが聴ける音源です。
元々4人編成のシングルギターバンドなのでライブでの音埋めには苦戦必至な状況ながら、更に酸欠?のような息切れ気味のヴォーカルにその足を引っ張られているている印象のヴィト・ブラッタが気の毒に思えるほどですね。
しかし、そんな重圧をものともせずにヴィト・ブラッタのギターは心地良いハーモニクス音とトリッキーなフレーズを連発させながら楽曲中の音の隙間をオブリガードで見事に埋めていってます。
映像を見なくとも音を聴くだけで「相当色んなことやってますね」と想像できちゃう位にトリッキーなおかずがてんこ盛りですね。
反面、ここでも気になってしまうのはドラムの不安定さ。
音の隙間をなるべく作らないようにとの意図なのか、常に一人独走状態ですね。
おかずも安直であまり魅力を感じず、むしろ入れないでくれた方が良かったのに的なレベルで残念です。
まとめ
言うまでもありませんが、’80年代ハードロックの名盤中の名盤とされる本作には「When the Children Cry」や「Wait」と言ったバンドをメジャーシーンに一気に押し上げたシングルヒット曲が収録されています。
そして、他にも「Lonely Nights」や「Don’t Give Up」といったデビューアルバムの音楽性をそのまま踏襲した楽曲で脇をしっかり固められた本当に隙の無い名盤として超おすすめです。
リバーブをMAXに効かせたようなヴィト・ブラッタのギターのトーンは、厚みは感じますが少々いじくり過ぎの印象で、個人的にはデビュー作のようなナチュラル感を残したトーンの方がこのバンドの哀愁メロディとの相性は良いようにも思いますが…。
デビュー作に続き、本作でも完成度MAXの楽曲を量産してきたホワイト・ライオンの魔法の泉。
続く3作目ではその泉にもとうとう枯渇の兆候が現れ始めて、より一層アルバムに対する評価が分かれ、その後バンドは徐々にシーンから忘れ去られていくこととなってしまうのでした。
