Y&T / TEN レビュー
節目の10枚目ではなく実は9枚目の名盤
本作「TEN」は1990年リリースのY&T 9枚目のアルバム。
タイトルが「TEN」なので一般的なレビュー記事では「10枚目」とされていますが、苦節40年以上Y&Tを愛聴してきた私的には、本作は9枚目のスタジオアルバムと位置付けております。
過去8枚は全て当ブログにて個別レビュー済ですので、念の為おさらいしておきましょう。
- 1976年 YESTERDAY AND TODAY
- 1978年 STRUCK DOWN
- 1981年 EATHSHAKER
- 1982年 BLACK TIGER
- 1983年 MEAN STREAK
- 1984年 IN ROCK WE TRUST
- 1985年 DOWN FOR THE COUNT
- 1987年 CONTAGIOUS
- 1990年 TEN
因みに、本作より以前の上記以外のリリース作品は、1985年「OPEN FIRE(ライブ)」、1987年「FOREVER(ベスト)」、1989年「ANTHOLOGY(ベスト)」となっています。
恐らく「10枚目派」の方々はライブ盤の「OPEN FIRE」を含めてカウントしたいのでしょうが、こういう時だけ都合よくライブ盤をカウントするなんて、信頼と誠実がモットーの私にはできません…。
ということで、こうして振り返りながらも脳内を各作品の楽曲が走馬灯のように流れておりますが、実に山あり谷ありの変遷に富んだ作品だったなぁーと改めて思います。
5枚目辺りからLAメタルの潮流に巻き込まれながら迷走状態(個人的には全然気にしてませんでしたが)に陥ったと酷評され、前作8枚目でようやく本来の姿に立ち返りながら売れ線も確保するような地力を見せつけました。
その間にはレオナード・ヘイズ大先生のクビ切り事件、ジョーイ・アルヴィスの脱退等、バンドの体制そのものにも大きな変化が生じています。
そして迎えた本作「TEN」ですが、1990年にリリースした年の12月31日のライブを最後にバンドは一度解散することに…。
まさに節目とも言える集大成的な作品だけあって、Y&Tの魅力が随所に散りばめられた楽曲構成で内容は充実。
オープニングに代表される地に足着いたハードロックやブルージーな渋さと軽快なアメリカンロックを融合させたもの、外部ライターの力も素直に借りながらあくまで哀愁溢れるY&Tテイストに仕上げた楽曲などバラエティに富む内容です。
各楽曲におけるデイヴ・メニケッティのエモーショナルなヴォーカルと、号泣必至の渋すぎるギタープレイはまだまだその健在ぶりを誇示しています。
ジャケットデザイン考察
恒例なので本作も軽くジャケットをチェックしておきましょう。
色鉛筆で言えば「山吹色」とでも言いましょうか、黄色を基調カラーとした非常に目立つ色使いがGoodですね。
(顔は不明なので想像ですが)綺麗な女性が天を仰ぐようにのけ反っていますが、上体のみの画像なので下半身の状態は不明です。
もしも体力測定で良くやる「上体反らし」のように寝そべっているのであれば、この方、かなり柔軟な身体だと思われますね。
新体操の選手でしょうか。
身に着けているのはキャミソール肌着?のみという大胆さ。
髪は光の加減で一瞬金髪のように見えますが、裏面で茶褐色であることが確認できます。
そして今回も安定して「ジャケットの謎」を提供してくれていますね。
一つ目は、のけ反った女性の鋭角な下あご。
無認可の闇整形で失敗してしまったのでしょうか、思わず触ってみたくなる程に鋭くとんがってますね。
猪木クラスのシャープさです。
そしてもう一つは、クビ部分の異様な盛り上がりですね。
仮にいくら鍛えたとしても女性の首の筋肉がこれほどまでに発達するものでしょうか、また、細身に見える女性の首の部分だけにこれほどまでに脂肪が蓄積されるものでしょうか。
誠に言い辛いのですが、この方はバセドウ病かなにかを患っているのかも知れませんね。
今さらですが心よりお見舞い申し上げます。
最後にバンドロゴですが、立てちゃいましたね…。
折角格好良いロゴなのにどうして立てちゃったんでしょうか…謎です。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: デイヴ・メニケッティ(兼ギター)
- ギター : ステフ・バーンズ
- ベース : フィル・ケネモア
- ドラムス : ジミー・デグラッソ
収録曲
- Hard Times
- Lucy
- Don’t Be Afraid Of The Dark
- Girl Crazy
- City
- Come In From The Rain
- Red Hot & Ready
- She’s Gone
- Let It Out
- Ten Lovers
- Goin’ Off The Deep End
- Surrender
おすすめ楽曲
Hard Times
王道を行くシンプルなハードロック路線にブルージーなテイストも臭わせる渋さ爆発のオープニング。
ミドルテンポの楽曲を決して「走らせない」タメの効いたドラムが、結果として中盤ギターソロでのスピードチェンジを一層盛り立てていますね。
メニケッティ節とも言える粘っこいヴォーカルと象徴的なギターフレーズが、往年の古参ファンの退化した脳を刺激して覚醒させてくれます。
Don’t Be Afraid of the Dark
2曲目のWHITESNAKE パクリ疑惑楽曲を経ての3曲目。
早くも本作の最高楽曲の登場です。
いきなりの切なすぎるコーラスから入ってくる究極の哀愁ハードロック。
あえて「バラード」などという安っぽい表現はしたくない程に、自分の中ではハードロックしています。
(ちょっと何言ってるかわかりませんが…)
とにかく、この曲も一体これまでに何回聴いたことでしょう。
起承転結の起伏に富んだ楽曲構成は、これまでのY&Tの歴史そのものを表現しているかのようでサビメロでは不覚にも泣きそうになります。
Come in from the Rain
最高楽曲とした3曲目と甲乙つけがたい号泣楽曲。
いや、泣きという意味では本曲が明らかに上を行っていますね。
まさに「泣きメロ人間国宝」の面目躍如の一曲です。
イントロの短いギターフレーズで既に勝負はついていますが、ギターソロとエンディングでもしっかりととどめを刺してくれるのが嬉しくなります。
これまた個人的にはバラードなんかじゃないですね。
これぞエモーショナル・ハードロック!。
メニケッティの渾身のヴォーカルがタメにタメられながらサビへ向けて盛り上げられていく展開には、これまたこれまでのバンドの紆余曲折がオーバーラップして思わず感情移入してしまいます。
Surrender
アルバムラストに収録の楽曲。
結果としてその後一旦解散することになり、最終楽曲となってしまっただけにタイトルが憶測を呼んでしまいましたが、楽曲の内容はむしろ Never Suerrenderなので無関係ですね。
アルバムのラストを飾るに相応しく、スケールの大きさを感じるライブでもかなり盛り上がった印象がある楽曲です。
王道のハードロック、エモーショナルなメニケッティ節、「これぞY&T」と胸を張って言える名曲で名盤は締め括られます。
まとめ
Y&Tが一旦解散を余儀なくされたまさに節目となった9枚目のアルバム「TEN」。
収められた楽曲を聴き進むに連れて、紆余曲折し時には迷走状態に陥ったバンドの歴史が脳裏に蘇ります。
デビュー以来、各時代を決して逆境に屈することなく歩んできたバンド「Y&T」の1990年時点での集大成とも言える充実内容の大名盤ですね。