ASIA / ASIA レビュー
プログレ界のスターが結集したスーパーバンド「ASIA」
今さらくどいようですが、もしかすると「これから聴く」という若い人々がこのブログを見てくれるかも知れないので念の為に書いておきます。
ASIAはそれぞれが著名なプログレッシブ・ロックバンドで活躍していたメンバーが結集した夢のようなスーパーバンド。
・ジョン・ウェットン(ヴォーカル、ベース/元キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック)
・スティーヴ・ハウ(ギター/元イエス)
・カール・パーマー(ドラム/元エマーソン・レイク・アンド・パーマー)
・ジェフ・ダウンズ(キーボード/元バグルス、イエス)
もう、それだけで成功が保証された「成功率200%」というようなバンドでした。
1982年にリリースされた本作デビューアルバム「Asia(邦題:詠時感〜時へのロマン)は9週連続の全米1位。
全世界でのセールス1500万枚というお化けアルバムとなり、更にシングルカットされた「Heat of the Moment」も売れまくりのウハウハ状態で、まさにマーケットを席捲する成功を収めました。
因みに、1983年リリースの2ndアルバム「ALPHA(アルファ)」も、内容的には本作に引けを取らない傑作で普通の感覚では大ヒットアルバムと評されるレベルの商業成績でしたが、本作のセールス数字には遠く及ばず。
いかに本作がずば抜けたセールスを叩き出していたかが一層鮮明となりました。
↓↓↓2ndアルバム「ALPHA(アルファ)」のレビューは下記からどうぞ↓↓↓
6分以内の楽曲に英知が凝縮されたコンパクトプログレ
既にメンバー全員が十分過ぎるほどのキャリアと知名度を保有した状態で制作された本作に対する期待と注目度は、否応にも湧き上がりました。
当時の相撲に例えるならば、北の湖時代からの世代交代を果たした千代の富士とそのライバル隆の里による本場所での優勝決定戦を待つ心境とでも言いましょうか。
(単なる相撲話を書きたいだけ)
そんな世界中のファンが固唾を飲んで注目した本作のオープニングは、意外にも想定以上に歪みを効かせた衝撃的なギターリフでの御開帳!。
初めてアルバムを耳にした時の衝撃は、ありきたりな表現ではありますが「感電したように全身に電気が走った」「全身に鳥肌が立ってゾクゾクした」って感じ。
ありきたりの常套句となってしまいますが、他に表現のしようが無いので仕方ありません。
もっと複雑難解…とまでは言わないまでも「皆の者!究極のプログレッシブ・ロックを聴くが良い!」的な「THE プログレ」みたいな内容になるのかと思いきや…。
私のような単純能天気リスナーでも楽しめる、いやむしろ泣いて喜ぶようなハードポップ路線、キャッチーな音楽性が終始展開されていて逆に超嬉しい誤算となりました。
相撲で言えば(しつこい…)立ち合い思い切り頭から当たりにいったところを見事にはたき込まれ、胸からお腹にかけて土俵の砂がべっとりと言ったところでしょうか。
この、メンバー各人が持ち合わせたキャリアの英知を6分以内の楽曲に凝縮させた音楽性は、後に売れ線狙いの産業ロック化などと、毎度のことながら揶揄されることになりますが、私なんぞは諸手を上げての大歓迎。
感謝感激、雨あられって感じです。
よくぞやってくれましたと、勝手に「コンパクトプログレ」などとカテゴライズしてご満悦状態でした。
(恐らく時代背景としてもバブル経済による好景気で、あんまり難しいこと考えなくても楽しめるようなシンプルな音楽性が好まれる風潮であったのかと思います。)
ロジャー・ディーンによるジャケットデザインも見どころ
本作のジャケットデザインは鳥山明…ではなく、ロジャー・ディーン。
神龍とドラゴンボールにしか見えない…という意見もちらほら聞こえそうですが。
こちらは「イエスの6人目のメンバー」とも呼ばれたプログレッシブ・ロックアルバムのジャケットデザインのオーソリティーですね。
イエス歴代アルバムのジャケットデザインやライヴステージのアートなども担当し、その幻想的なアートワークによりアルバムの世界観や音楽性をリスナーに伝達するインパクトに優れたデザイナーとして評価されてきました。
本作での躍動感あるデザインと、透明感のあるブルーの色使いが絶妙で見事ですねー。
裏面もかっちょ良いのかなとひっくり返してみますと…。
….。
お、おぅ、そうきましたか…。
い、良いっすね…。
渋いっす…。
ごっつぁんです。
(必死に気を取り直して)バンド名のロゴもこの人のデザインですね。
エジプトのピラミッドをも想起させるような三角形のデザインには神秘性を感じます。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル: ジョン・ウェットン(兼ベース)
- ギター : スティーブ・ハウ
- キーボード: ジェフリー・ダウンズ
- ドラム : カール・パーマー
収録曲
- Heat Of The Moment
- Only Time Will Tell
- Sole Survivor
- One Step Closer
- Time Again
- Wildest Dreams
- Without You
- Cutting It Fine
- Here Comes The Feeling
おすすめ楽曲
全曲おすすめなので楽曲レビューは無し!
「いやいや、刑事さん手抜きじゃないですよ!。」
「本当です、信じて下さい。」
「最初から書くつもりなんて無かったんです。」
と、訳のわからぬことを言っておりますが、ホントにこのアルバムは一度針を落として(再生ボタンを押して)しまうと、次から次へとこれでもかと名曲が襲い掛かってきますので、途中で中断することなく最後まで聴き終えるしかありません。
でも折角なので1行コメントのみ書いておくことにいたします。
①思ったより歪ませて「意外ね、意外ね」のスティーブ・ハウのギターが何よりのインパクト。
②アルバムの中で最もプログレ感を強く感じる楽曲。ジョン・ウェットンの声が切な過ぎ。
③イントロのワウを効かせたような音色で思わず「太陽にほえろ!」のテーマ曲を想起した名曲。
④2ndアルバムに通ずる「時空の広がり」を感じさせる世界観が体感できる壮大なイメージの楽曲。
⑤シンプルメロディのイントロをプログレ感満載の大仰な味付けで勿体つけて盛上げるハードチューン。
⑥とにかくドラマティック!&哀愁メロディが悶絶級の名曲。サビでのコーラスは涙が溢れ出てきます。
⑦バラードもただでは済まない楽曲展開。飽きさせない玄人芸で「中だるみ」なんぞ無縁のクオリティ。
⑧まるで明るいフォリナーのよう。爽快感と哀愁という両面を合わせ持つハードポップの名曲。
⑨イントロは爽快AORと思いきや、ラスト楽曲もとことん泣かせてみせますホトトギス状態の哀愁曲。
まとめ
プログレ界のオールスターメンバーによる夢の饗宴。
そんな形容詞がピッタリのスーパーバンドによる作品に、リアルタイムで出合えたことは感謝しかありません。
大抵、この手のスーパーバンドはメンバー同士のプライドによる互いのエゴが衝突して木っ端微塵に短命で終るパターンが多いと思いますが、ASIAに関してはこの後も(予想外に?)作品をシーンに輩出し続けてくれたことにもホントに感謝ですね。
(もちろん、紆余曲折のメンバーチェンジはありましたが…)
往年のコアなプログレッシブ・ロックファンの方々にとっては、あまり評価に値しない産業ロック的な音楽性なのかも知れませんが。
私にとっては確実に「自身を構成するアルバム」の1枚にカウントされる作品です。