KISS / Rock and Roll Over レビュー
前作に続き代表曲が揃ったKISS黄金期のアルバム
「Rock and Roll Over(邦題:地獄のロックファイアー)」は1976年リリースの KISS 5枚目のアルバムです。
いやぁ~、勢いに乗ってますねぇ~。
同年にリリースの前作「Destroyer(邦題:地獄の軍団)」の興奮冷めやらぬなか文字通り一気呵成に畳みかけてます。
このアルバムは私の兄貴が毎朝登校する前に爆音で飽きもせずかけていたので、恐らく KISS のアルバムの中で聴いた回数№1の筈です…。
当時まだ小学生だった私にとっては、何とも不思議な歌が自然と(強制的に)脳に刻み込まれてしまいました
「アイ ウォン チュ~(アイ ウォン チュ~)」
「デデデデデテ ウォン チュ~(アイ ウォン チュ~)」
「テイク ミ~(ミ~ ミ~ ミ~)」
「アアオ アアイェ(アアオ アア~イェ~)」
「ゼイ コーリン ダクターラブ(ダクター ラ~ブ)」
印象的な短い単語のサビで必ず追いかけてくる不思議なコーラス…。
そもそもこれは人が発している声なのか?そんな素朴な疑問を抱きながらも、気が付けば私も下校時に口ずさんでました…。
小学生でもその琴線に触れてくるシンプルでコマーシャルな親しみやすい楽曲揃い。
10曲全てが4分以内というコンパクト設計。
これだけ立て続けにアルバムを量産してもインパクトのある印象的な楽曲作りができるって凄いことですよね。
バンドのポテンシャルが遺憾なく発揮されてます。
まさに水を得た魚状態で波に乗っている KISS の黄金期。
一目で KISS のアルバムと分かるメンバーのメイク顔がイラスト化された象徴的なジャケットも良いですね。
(エースの髪型が「ダダ」みたいでちょっと可哀そうですが…)
初の日本公演が実現
本作発表後のツアーで、翌年の1977年には初の日本公演が実現。
当然のように兄貴は日本武道館に参戦してました。
そして、有難いことに当時はNHKの「ヤング・ミュージック・ショー」でその様子が放映されるという快挙。
怖いもの見たさで画面にかじりつくように観た記憶があります。
「ライブって結構レコードと曲の感じが変わるんだな~」
「すげえ高さのブーツ履いてんな~」
「ジーン・シモンズってどこからどこまでがおでこなんだろう」
というのが純粋無垢な当時の少年の感想でした…。
こういう価値のある放映をしてくれるなら受信料も喜んでお支払いいたしますって感じですね。
メンバー・収録曲
バンドメンバー
- ヴォーカル : ポール・スタンレー
- ギター : エース・フレーリー
- ベース : ジーン・シモンズ
- ドラムス : ピーター・クリス
収録曲
- I Want You 3:04
- Take Me 2:56
- Calling Dr. Love 3:44
- Ladies Room 3:27
- Baby Driver 3;40
- Love ‘Em and Leave ‘Em 3:47
- Mr. Speed 3:18
- See You in Your Dreams 2:34
- Hard Luck Woman 3:35
- Makin’ Love 3:14
お気に入り楽曲
I Want You
オープニングはアコスティックメロディに乗った歯の浮くような甘いヴォーカルで幕開け。
前作のスピーディなオープニング曲「Detroit Rock City」とは打って変わり「まさかの甘いバラード?」と思いきや…。
まるでぬるめの温泉にとっぷりと浸かっているかのような心地よさも束の間。
突然無造作にかき鳴らされるギターで KISS の地獄のハードロック世界に思い切り引きずり込まれます。
ギターソロではポールが不安定でたどたどしい運指のフレーズで先導。
エースがバトンを引き継いでテクニックとは無縁ながらも渋みとしっかりと起伏のあるソロに仕上げてますね。
Take Me
続く2曲目も少年の脳ミソにくっきりと刻まれたキャッチーでノリの良い楽曲。
サビで高音リフレインされる「テイク ミ~(ミ~ ミ~ ミ~)」の声がどうしても人が歌っているように思えなかった不思議体験でした。
Calling Dr. Love
でました…。
ジーン・シモンズ がヴォーカルをとる代表曲の一つであり KISS の顔ともなっている名曲。
それにしてもジーン・シモンズの声質にベストマッチしている楽曲ですね~。
ピーター・クリスのドラムも最小限の音数で最大限のドライブ感を演出するセンスの良さを感じます。
特に効果抜群のハイハットは痺れますね。
そしてこの曲のサビメロでも少年には不思議な感覚に感じられたコーラス(高音+低音)が印象的でした。
Hard Luck Woman
前作の「Beth」に続き2匹目のどじょうを見事にキャッチしたバラードの超名曲。
ポール・スタンレーが作った曲ですが、またしてもおいしいところを根こそぎかっさらった感のピーター・クリス。
こりゃぁ、鼻柱が高くなって勘違いしちゃうのも無理はありません…。
優雅なピアノベースの「Beth」に対して今回はカントリー調で哀愁感が充満したアコスティックベース。
ちょっとわざとらしくて首の辺りが痒くなる「Beth」よりも、ピーターのしゃがれ声にナチュラルにマッチしている素晴らしい楽曲だと思います。
それにしても多感な少年期に「地獄」イメージのイロモノロックバンドを毎日のように耳にしながら生きてきました…。
それでも決して攻撃的な異常な精神が育まれることなく、心優しい善良な人間(自分で言うな…)に育ったのはこういう優しく美しいメロディの曲にも恵まれていたおかげです。
Makin’ Love
典型的ハードロックの基本リフが何とも心地よいラスト曲。
本作の方向性を総括するような KISS の原点を感じさせるシンプルなハードロックの名曲ですね。
エース・フレーリーのギターソロもいつになく気合が入って忙しそうに弾いてます。
一方、ピーター・クリスのドラムはここでもあくまで音数は最小限の省エネ打法。
サビでは絶妙の裏拍ショットを駆使して決してドライブ感は失っていませんね。
さすがです。
まとめ
デビュー当時から怒涛のリリースラッシュを続け、年間2枚ペースを維持してきた KISS 。
粗製乱造に陥ることなく本作5枚目でもコンパクトにまとめられたキャッチーで魅力的な多くの楽曲を披露してくれています。
まさに勢いを掴んだ水を得た魚状態で、手が付けられない黄金期真っ只中と言ったところ。
個々のメンバーのキャラクターとストロングポイントを最大限に引き出しながら、シンプルなハードロックという軸を崩さずにマッチさせた楽曲作りのうまさが光る名盤です。
