DEF LEPPARD / HYSTERIA レビュー
文句なしのDEF LEPPARD「最高傑作」
IRON MAIDENとともに、NWOBHM代表格バンドと位置付けられる「DEF LEPPARD」。
その絶頂期に怒涛の3連チャンでリリースされた3枚のアルバムの中から、彼らの最高傑作を選ぶ人が大半ではないでしょうか。
「Pyromania(1983年)」~「Hysteria(1987年)」~「Adrenalize(1992年)」
DEF LEPPARDの誇る究極のクリーンアップ打線(3rd~5th)。
いや~、こうして並べて書いただけなのに、あまりに強力過ぎて思わずニヤケてしまいますね。
(ただの危ない人状態…)
往年の「長嶋」 ~ 「王」 ~ 「末次」と言ったところでしょうか(いや、古過ぎだろ…)。
個人的には「Pyromania」も非常に思い入れのある作品で、最高傑作を決めるとなると悩ましいのですが。
ここは客観的に「アルバムとしての練度」や「スケール感」「各楽曲の完成度」「セールス実績」などの総合評価で判断して、本作を最高傑作とすることにしました。
当時の情弱メタラーの貴重な情報源「某誌」の本作に対するレビューでは、87点~99点と評価が分かれましたね~。
裏を返せば、それだけこのアルバムが従来のHR/HMの概念を大きく覆す先進性を持っていた証とも言えると思います。
そう、DEF LEPPARDというバンドはNWOBHMの代表格とされてはいたものの、最早そんな狭小な枠組みには収まりきらない洗練度、スケール感を持った不思議なバンドです。
↓↓↓その辺りの私の見解は前作のレビュー時に記しましたのでこちらから↓↓↓
前作から4年を費やした完璧な近未来型アルバム
前作「Pyromania」で大成功を収め、順風満帆で新アルバムの制作に入ろうとするバンドを襲った突然の悲劇。
1984年12月31日のドラムのリック・アレンの自動車事故…。
ドラマーが左腕を失うという致命的な事態を、バンドの結束力と男気で乗り越えた英国紳士達。
リック・アレンの一本腕打法の習得をひたすら他のメンバーは待ちました。
加えて、本作プロデューサーのロバート・“ジョン“・マット・ラングの異常なまでの完璧主義も影響して、本作のリリースは前作から4年の月日を必要としました。
既に前作においてNWOBHMムーブメントの他バンドに類を見ない「モダンさ」「お洒落感」「スマートさ」を醸し出していましたが…。
本作のサウンドや楽曲としてのスケール感はそんな前作をあっさりと凌駕し、当時のサウンド処理技術の限界に挑戦したかのような「近未来感」に満ち溢れていました。
それはまさに、まるで映画を見ているかのような不思議な感覚。
映画と言えば「Back to the Future」が公開されたのが1985年。
足元の景気も上向いていて何となく浮ついたムード感覚の中、近未来への憧れや夢を描く余裕があった当時の世相みたいなものを思い起こされます。
期しくも、同じNWOBHM代表格のIRON MAIDENも、近未来感をテーマにしたアルバム「Somewhere in Time」を1986年にリリースしていますね。
IRON MAIDENもこの作品でシンセギターの導入を試みるなどの先進的な姿勢を見せていましたが、DEF LEPPARDの本作は次元の違う「作り込み度」。
全く異なる方法論でのアプローチでしたね。
一つ一つの音がクリアかつ複雑繊細に紡がれていて、聴く側としては一音たりとも聴き逃せないという強迫観念さえ憶えるほどです。
よく言われるリスナーにとっての捨て曲が存在する余地など微塵もなく、完成度の塊のような上質な楽曲がすし詰め状態となっている60分超の大作アルバム。
DEF LEPPARDの最高傑作であることは無論、HR/HM全盛期とも言える80年代シーンを代表する作品と間違いなく言えるでしょう。
スコアチャート
メンバー・収録曲
メンバー
- ヴォーカル: ジョー・エリオット
- ギター : スティーヴ・クラーク
- ギター : フィル・コリン
- ベース : リック・サヴェージ
- ドラムス : リック・アレン
収録曲
- Women
- Rocket
- Animal
- Love Bites
- Pour Some Sugar on Me
- Armageddon It
- Gods of War
- Don’t Shoot Shotgun
- Run Riot
- Hysteria
- Excitable
- Love and Affection
おすすめ楽曲
Women
そうですか、そうきましたか。
気負いが無い落ち着いた風格、前作の成功体験に裏付けられた余裕すら感じるオープニングですね。
大河の如きスケールで静かなるパワー感をもって悠々と流れていく楽曲。
聴いていてると、どうしてもリック・アレンのドラムミングに勝手に耳が意識集中してしまいます。
「このスネアの連打は片腕?」
「それとも腕+脚?」
「そもそもハイハットは刻んでるの?」
「ひょっとして、この曲のスピード位が叩ける速さの限界なの?」
などなど、要らんことばかり考えながらドラミング姿を頭の中で想像してしまいます。
でも、聴き進むにしたがってそんな邪念もどこかに吹っ飛び、印象的なサビ、ギターソロにすっかり引きずれこまれていて思わず我に返ります。
本作でも、伝家の宝刀である売れる楽曲方程式を駆使しながら、計算されつくした楽曲を披露してくれる期待感が一気に爆上がりですね。
Animal
アルバム3曲目にして早くも飛び出してきた個人的最高楽曲。
流麗なイントロに導かれながらジョー・エリオットの哀愁ヴォーカルが追随。
アコスティックの味付けでまろやかな風味を漂わせながら、一気にフィニッシュホールドのサビへと持っていく展開はさすがです。
そしてサビは十八番のしつこい位の単語連発型が繰り返され、リスナーの脳内に何とか侵入しようとひたすらアタックを仕掛けてきます。
これほどまでに美しく印象的なメロディラインのサビを、北斗百裂拳のように連打されてはリスナーとしてもぐうの音もでませんね。
もうこの曲好きになる以外にありません…。
Love Bites
もはや映画なのです…。
DEF LEPPARD史上最高のバラード曲。
ジョー・エリオットの切なく胸に響いてくるヴォーカルやコーラスワークは言うまでもなく心に深く刻み込まれますが、個人的には本曲の主役はベースだと感じています。
このベースプレイは鳥肌ものですね。
渋い、渋すぎるっー!の内股悶絶級の格好良さ。
Hysteria
アルバムタイトル曲だけあって、本作を総括するかのように全ての要素が極限までブラッシュアップされた状態で構成された最高の完成度。
ここまでくるともはやヘヴィメタルとは形容しがたい世界観であることは否定できません。
Cheap Trickに超重厚美声コーラス部隊を加え、サウンドメイクを極限まで立体的にした感じとでも言いましょうか。
当時のDEF LEPPARDにとっては、売れる楽曲を作ることなど造作ない簡単な方程式?。
答えはもうとっくに解っているんだけど…。
それだけでは満足できず、まるで「如何に美しく感動的に問題を解くか」という事をひたすら追求していたかと思えるような芸術的な完成度。
それはまるで、初代タイガーマスク(佐山聡)の華麗な技と試合運びに魅せられているかのような不思議な感覚。
寝て良し、飛んで良しのタイガーが、華麗なタイガーステップを踏みながら敵を翻弄し、何もさせないままにリングから葬り去る究極に美しいプロレスのようです。
まとめ
DEF LEPPARDの最高傑作「Hysteria」は、リリース当時はその先進性に皆が驚き、上へ下への大騒ぎとなってしまいました。
長い年月が経過した今日、改めて冷静に振り返ってみると、極めて当然、必然的に生まれてきた作品であるように感じます。
1987年というバブリーな雰囲気に踊らされた人々の心には「近未来」を夢見る余裕が生まれ、その時代世相を如実に反映する映画や音楽が次々とマーケーットに輩出。
既に前作「Pyromania」で売れる方程式を体得していたDEF LEPPARDは、本作ではより次元を高めた領域へと昇りつめ、完璧な完成度を誇る作品を生み出すことに成功しました。
当時の人々が夢描いた「近未来」への願望を、HR/HMというジャンルの音楽において見事なまでに具現化して魅せたDEF LEPPARD。
さすがは世界の近代化を促した産業革命を起こした英国紳士達ですね。
アルバムは方程式通り(以上?)のセールスとなり、メガ・ヒットを記録。
世界的な知名度を手に入れたバンドでしたが、またしても悲運が…。
ほんと、何かに呪われてるんじゃないの?と思っちゃいますよね。
1991年1月8日、ギターのスティーヴ・クラークが 30歳若さで突然死…。
残されたメンバーも口を揃えて「来日時に時間を作って佐野厄除け大師でお祓いをしておけばよかった…。」と後悔の念を吐露していたとかいないとか…。
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