Europe 【最高傑作】 Wings of Tomorrow(明日への翼)

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Europe / Wings of Tomorrow レビュー

ヨーロッパの代表作と言えば…

1986年リリースの3作目「The Final Countdown」で世界的な成功を収めたヨーロッパ。
アルバムは全世界で累計650万枚を超えるセールスを記録し、タイトルチューンの「The Final Countdown」は各国のチャートでTOPを獲得するという文字通り世界征服を果たした感がありました。
本来であれば、その3作目の代表作からご紹介するのが定石かも知れませんが、ここは敢えてその前作である2作目、初期ヨーロッパの集大成的作品である2ndアルバム「Wings of Tomorrow(邦題:明日への翼)」からレビューしていくことにいたします。

北欧正統派メロディアス・ハードロックの最高傑作

1984年にリリースされた本作は、その前年1983年に衝撃のデビューとなった1st「EUROPE(邦題:幻想交響詩)」に続いて、北欧ならではの正統派様式美メロディアス・ハードロックの血統をしっかりと受け継いだ稀有な完成度を誇り、今もなおその輝きを放ち続けています。
既述の大成功を収めた「The Final Countdown」で、ハードロックファンの裾野を恐ろしいまでに広げてくれた功績は計り知れませんが、初期からの彼らを知る元来のコアなファン層にとっては、本作こそがEUROPEの最高傑作。
いや、北欧メロディアス・ハードロックの真髄と言っても過言ではない位の賞賛を得ているのではないでしょうか。

鬼気迫る切れ味鋭いギターリフとフレーズ

初期EUROPEを語る上での最重要要素は、何と言ってもギターの ジョン・ノーラムが繰り出す切れ味鋭いリフと、ソロパートでの美しいフレーズの大洪水。
3作目以降に傾倒していくことになるキーボードを主体としたどちらかと言えば万人受けする売れ線狙いの楽曲群では味わうことのできない、鬼気迫るような北欧魂が溢れ出る勢いのあるプレイスタイルを聴けるのが本作2枚目のアルバムです。
特に今回選りすぐりの熟考を重ねた上でピックアップした楽曲で聴くことのできるジョン・ノーラムのギターソロは、テクニカルでありながら起伏のある起承転結の構成と、涙無くしては聴けない程の泣きメロフレーズのオンパレードで、本当に圧巻の一言につきます。
加えて書かせて頂くならば、ヴォーカルのジョーイ・テンペストの歌い回しも、3作目以降はどこか甘ったるいねちっこさが感じられますが、ハードロック然とした「漢らしさ」を感じる力強いヴォーカルスタイルが聴けるのも本作までだと個人的には思っています。

メンバー・収録曲

【メンバー】

  • ヴォーカル: ジョーイ・テンペスト
  • ギター  : ジョン・ノーラム
  • ベース  : ジョン・レビン
  • ドラムス : トニー・レノ

 

【収録曲】

  1. Stormwind
  2. Scream of Anger
  3. Open Your Heart
  4. Treated Bad Again
  5. Aphasia
  6. Wings of Tomorrow
  7. Wasted Time
  8. Lyin’ Eyes
  9. Dreamer
  10. Dance the Night Away

 

おすすめ楽曲

 

Stormwind

アルバムのオープニングは、これ以上無い衝撃的でドラマティックな泣きのイントロで幕を開けます。

これぞ真の北欧正統派を継承する血統の誇り、本物のハードロックのお出ましです。

硬質でナチュラルに歪ませたギターサウンドにはわずかなフランジングをかけてうねりを加えていますね。

力強くも叙情的なサビメロには胸が締め付けられそうになります。

そしてイントロの泣きフレーズを再び繰り返した後に、怒涛のギターソロへと一気に突入していきます。

メロディ重視でやや抑え気味のソロフレーズは、楽曲の流れを阻害することなく極めて自然で心地良く陶酔できる仕上がりです。

そしてエンディングへ向けて、イントロ泣きフレーズを再度登場させての最後のダメ押しも抜かりがありません。

いやぁー、まさに完璧。

個人的にはヨーロッパの作品史上最高の楽曲とも言って良い位に見事にツボを押さえた名曲です!。

 

Aphasia

 

出ました!。ジョン・ノーラム独演会。

インストゥルメンタルのギターソロ曲で弾きまくっています。

そのフレーズはもちろん北欧独特の湿り気を帯びた叙情的な泣きメロが基本です。

例えるならば「トニー・マカパインをせいろに入れて蒸しまくったような、たっぷりと叙情的な湿気と、渋いタメ感のあるリズムの北欧点心のようなギターインスト曲」とでも言えるでしょうか。

まさにジョン・ノーラム節が全開で炸裂しています。

ヨーロッパ ~ ジョン・ノーラム ~ 寒い・冬・雪 ~ 赤いほっぺ ~ 叙情派・様式美 ~ 津軽三味線。

何故かどうしてもこの思考に行きつく自分が意味不明です...。

因みに、本曲を含めた胸熱の1980年代「インスト曲」をピックアップした特集記事をご参考までに。

80年代ハードロック リアル体感した厳選インスト曲13選
この記事では、熱く燃え上がっていた80年代ハードロック・ヘヴィメタル作品の中からリアル体感に基づいて厳選した「インスト曲」13選をおすすめ紹介しています。当時のギターヒーロー達の息吹きを改めて感じながら渋さを堪能頂けたら嬉しいです。

 

Wings of Tomorrow

アルバムタイトル曲がここで登場。

力強くエッジを効かせて刻み込まれるリフメロは、ライブではその激しさを増幅させて更に攻撃的に変化しますね。

そして何と言ってもここでも圧巻はギターソロ。

起承転結の練られた構成のメインの泣きフレーズは、あらゆる人が潜在的に持っている哀愁の感情という琴線に、モロに直撃弾となって打ち込まれてくる心地良さです。

 

Dreamer

切なく、あまりに美しいバラード曲。

もはや「何おかいわんや」状態でひたすら聴き惚れるのみです。

後の作品群ではこうした極上のバラード曲が産業革命後のように量産体制で輩出されてくることとなりますが、やはり初期における魂のこもった職人技のバラードは一味も二味も違うような気がします。

 

まとめ

ヨーロッパが世界的な大成功を収めた3作目「The Final Countdown」によって、HR/HMのファン層の裾野は大きく広がり市民権が得られたとも言えますので、その功績は非常に偉大なものだと思います。

が、一方でそれまでの北欧の正統派様式美ハードロックの真髄、お手本たる音楽性は、少しずつなりを潜めていくこととなり、コアなファン層にとっては少し残念な印象を持たれた部分もあったかと思います。

(実際に行ったことも無いくせに勝手なイメージだけですみませんが)日照時間が短めで、冷たい雨が打ち付け、冬は雪深いと言った北欧の気候や情景を想起させつつ、荘厳な気品と叙情性をもって切れ味鋭く奏でられるエッジの効いた彼らならではの音楽性は、惜しくも失われていってしまったようで一抹の寂しさを感じてしまいます。

(贅沢いうんじゃねーよって、わかっちゃいるんですけどね...。)

 

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