HELLOWEEN / 守護神伝Ⅰ レビュー
1987年リリースの 日本デビュー作となったHELLOWEEN 2枚目のアルバム「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PARTⅠ(邦題:守護神伝Ⅰ)」。
次作「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART Ⅱ」でバンド最高傑作を叩き出すことになりますが、文字通りセットで語られることの多いHELLOWEENの名盤中の名盤ですね。
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HELLOWEEN【最高傑作】/ KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART II(守護神伝Ⅱ)
次作【最高傑作】KEEPER Ⅱ の原石と言える鈍い光を放つ名盤中の名盤
元々は「守護神伝」として2枚組のアルバムで次作と共にリリースする予定だったところが、アレンジ不足、納得のいく楽曲の不足などにより見送られたようですね。
結果として、より時間を費やせた次作ではマイケル・ヴァイカートの精神状態も少しは改善したようで、良し悪しは別としても独特のおちゃらけ感が表現されています。
逆に、実質カイ・ハンセンの楽曲作り一人旅状態となった本作は、遊びの部分は少な目で正統派ジャーマン・メタルバンドとしてのより硬派な部分が前面に押し出された作風となっています。
とりわけその国民性から由来するものなのかどうかは謎ですが、ジャーマン・メタルとの親和性の高い日本のファンにとっては、HELLOWEENの記念すべき日本デビュー作という位置付けでもあった本作。
正統派を熱く支持するファン層の厚みにも後押しされ、その人気を着実に手中に収めた作品となりました。
個人的に私なんぞは「HELLOWEENは俺たち日本のファンが育てたバンドだ」などと勝手に思っていたくらいでしたから…。
おめでたい奴です…。
そしてこの空気感は、日本では遡って後発リリースされた1stアルバム「WALLS OF JERICHO」に対する評価としても如実に再現され、武骨で荒削りの本格正統派ジャーマン・メタルとして1stをバンド最高傑作と位置付けるファンが多く飛び出してきましたね。
軟弱メロハー好きの私なんぞは素直に「PARTⅡ最高派」で落ち着きましたが、その後スラッシュ等に傾倒していく攻撃性高く血の気の多い方々などには、たまらなく響いたのでしょう…。
もしかしたら「何となく渋い硬派な作品を持ち上げておくと、通みたいに思われて気持ちが良い」のかも知れません…。
おっと、何だか今回は文章に棘があり過ぎですね…。
気を付けないと…刺されちゃいます。
マイケル・キスクを見出したカイ・ハンセンのファインプレー
既述した1stアルバム「WALLS OF JERICHO」ではヴォーカルもカイ・ハンセン自身が兼務で奮闘。
はっきり言って聴くに堪えないレベルの歌唱などと言ったら「1st最高派」に袋叩きに合いそうですが…。
自らの限界を悟ったのか本作ではカイ・ハンセンによって見出されたマイケル・キスクがヴォーカルとして加入。
言わずと知れた天空まで突き抜けていく超絶ハイトーンヴォーカルで、楽曲のポテンシャルを最大限まで引き出すことに成功しています。
本作、ましてや次作の楽曲とマイケル・キスクのヴォーカルとの神懸かり的なマッチングが無ければ、HELLOWEENはここまでメジャーなバンドにはなり得なかったことでしょう。
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: マイケル・キスク
- ギター : カイ・ハンセン
- ギター : マイケル・ヴァイカート
- ベース : マーカス・グロスコフ
- ドラムス : インゴ・シュヴィヒテンバーグ
【収録曲】
- Invitation -1:21
- I’m Alive -3:22
- A Little Time -4:00
- Twilight Of The Gods -4:30
- A Tale That Wasn’t Right -4:42
- Future World -4:02
- Halloween -13:18
- Follow The Sign -1:47
おすすめ楽曲
I’m Alive
約1分半の壮大なスケール感の序曲に続くオープニング楽曲。
短めのリフから一気にジャーマン・スピードメタルの王道を駆け抜けるスピードチューン。
小細工無しにそのままサビまで一直線のアクセルベタ踏み状態の展開には、ボヤッとしていると置き去りにされます。
そして早くも中盤の足を止めてのノーガードの打ち合いのようなツインギターによるハモリソロ。
まさに過去~現在に掛けて生きている証左のようなクラシカル&スリリングなソロフレーズが生々しくキマってますね。
必ずと言って良い程に引き合いに出されるのが PartⅡのオープニング楽曲「Eagle Fly Free」ですが、これは難しい採点すぎますね。
郡司さんに聞いてみないとわかんないです…。
Twilight Of The Gods
序曲含めた4曲目に収録のこれまた人気の高い疾走チューン。
本作でも最高楽曲候補と言えるドラマティックな超名曲ですね。
いきなり意表を突かれるイントロのギターメロディがスタートの合図となり、あとはひたすら大忙し&マイケル・キスクのハイトーンが畳みかけてきます。
これぞまさしくカイ・ハンセン楽曲の良さを最大限に引き出すマイケル・キスクのヴォーカルとのマッチングが成せる業。
そしてこれまた引き合いに出されるのが PartⅡの「MARCH OF TIME」。
冒頭に「KEEPER Ⅱの原型」とも書かせていただいた所以がこのあたりの対比楽曲の多さですね。
「KEEPER Ⅱ」での磨き上げられた輝きではなく、原石としての鈍いながらも鋭さのある光を放っています。
Future World
個人的には最高傑作と位置付ける「KEEPER Ⅱ」に最も近距離に位置する本作の最高楽曲。
キャッチー&コミカルなHELLOWEENの持ち味、全盛期のバンドの良さが本作の中で最も表現されている楽曲かと思います。
聴いているこちらのこめかみ辺りがムズムズしてくるマイケル・キスクのハイトーン800m走。
陸上競技で最も過酷なレースと言われる800m走のようなスピードと持久力を兼ね備えた超絶ハイトーンですね。
そしてシャキーン!と鳴り響くサーベル音、明るく前向きな歌詞内容、全員で歌い上げる全力コーラスなどなど、気合を入れたい時に聴くことで元気をもらえるありがたい楽曲です。
Halloween
13分を超える長大作楽曲で、またしても PartⅡの「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」と嫌がおうにも比較されてしまう楽曲。
これまた好みが分かれるところですが、この場合は個人的には郡司さんの採点を聞く必要もなくPartⅡに軍配を上げます。
こちらが好みの人はだれることのない名曲とか言うのでしょうが、楽曲の完成度、ドラマティックな展開の妙技では圧倒的にPartⅡかと…。
まとめ
今回は、1987年リリースの HELLOWEEN 2枚目のアルバム「KEEPER OF THE SEVEN KEYS, PART Ⅰ(邦題:守護神伝Ⅰ)」についてレビューさせていただきました。
個人的には次作「PratⅡ」をバンド最高傑作と位置付けていますが、本作も決して引けを取らない「PartⅡ」の原石の如く鈍い光を放っています。
元々は次作PartⅡと元々セットで2枚組としてリリースする筈だったようですが、結果論で言えば2枚に分けてのリリースで正解だったように思います。
本文にも記しましたが2枚のアルバム間で比較対象となる楽曲が多く存在しており、それは裏を返せば似たりよったり楽曲とも評価されかねない危険があるからです。
何より、HELLOWEEN絶頂期とも言える作品を1枚ずつ最高の状態で聴ける贅沢な時間を過ごさせてくれたことに感謝しかありません。
尚、念のため書いておきますが、本文中に登場してきた「郡司さん」は1952年からは約30年間に渡りTBSのボクシング番組の解説者を務めた郡司信夫さんです。
ラウンド終了後の実況アナウンサーによる「さあ、今のラウンド郡司さんの採点は?」が当時の合言葉になっていました。