Misha Calvin / Evolution レビュー
セルビアの至宝「ミーシャ・カルヴァン」
1993年リリースのセルビア出身のスーパーギタリスト「ミーシャ・カルヴァン」のデビューアルバムです。
皆さんが「セルビア」と聞いて持つイメージは?。
私は、旧ユーゴスラビア、内戦、独立紛争、モンテネグロ、コソボ紛争などなど、何やら大変そうなイメージを持ってしまいます。
「苦難を乗り越えながら確立された音楽的センスとギターテクニック」などという、甚だ勝手なスーパーギタリスト像を想像してしまう自分がいました。
そして、「ミーシャ・カルヴァン」という渋いお名前…。
日本人にはあまり馴染みのない響きですよね。
アパレル雑貨のブランドで「カルヴァン・クライン」というのは有名ですが…。
スーパーギタリストにしては名前が地味過ぎる印象です。
日本ではちょっと可愛らしいというか、コミカルな印象を持ってしまう響きで損しちゃってると思います。
CDの帯タイトルには「セルビアの至宝、スーパーギタリストのミシャ・カルビンが…」とか書かれていますが、「大丈夫かな?」とちょっと購入を躊躇しちゃうと思います。
因みに、アルバムジャケットに掲載されているご本尊画像はこんな感じ。
いやいや、サングラスかけててわかんねーって…。
う~ん、格好悪くはなさそうですが…。
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アルバムのクォリティを決定付けている2人のヴォーカリスト
「セルビア」「ミーシャ・カルヴァン」という響きに一瞬ビビッてしまう人も多いと思いますが、そこはご安心下さい。
かなり「きてます」このアルバム。
ヴォーカルを務めているのはなんと元ブラック サバスのトニー・マーティンと、エレジーのイアン・パリーという2人の豪華キャスト。
まさにスーパーギタリストのソロプロジェクトの名に恥じない盤石の布陣が敷かれています。
そして、楽曲は圧倒的にドラマティック&エモーショナル。
クラシカルな要素も取り入れられた繊細でクリアな一面も垣間見せるなど、ミーシャ・カルヴァンのアーティストとしての懐の深さが十二分に窺い知れます。
クオリティの高い美旋律に余裕で乗っかってくる2人のビッグヴォーカリストの見事な歌唱は、他の追随を許さない安定感と表現力に富んだ風格すら感じる仕上がりとなっています。
ギターテクニック、表現力、サウンド作り、楽曲の完成度、参加タレントのどれをとってもヒットの要素しかない衝撃作でしたので、マーケットもそこそこの反応を示しました。
当時にして既に時代を先取りしていたような近未来感とメタリック感が充満したジャケットデザインも痺れますね~。
やっちまった2作目…
しかしながら、本作に続く2作目のアルバム「Evolution II」でまさかのダーク&ヘビー路線に音楽性が大きく変化。
「ミーシャ・カルヴァン、お前もか…。」
まさにクールポコに「なぁにー?」「やっちまったなぁ」と怒鳴られそうな程の勘違い野郎になってしまい、以降は完全に鳴かず飛ばず状態に陥ってしまいます。
そしていつの間にやらシーンから忘れ去られていった何とも悲しく勿体ない印象です。
少なくとも本作に限っては、是非ともメロディアスHR/HMファンで未聴の方には一度は聴いて頂きたい、歴史に残る名盤と言えるでしょう。
スコアチャート
メンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: トニー・マーティン(①②③⑤⑨)
- ヴォーカル: イアン・パリー(⑥⑦⑩)
- ギター : ミーシャ・カルヴァン
- ベース : スティーヴ・ダウニング
- ドラム : ピート・バーナック
- キーボード: マーティン・リスター
【収録曲】
- Strangers
- Ready or not
- Put a little faith in me
- Valhalla
- Reaper
- Don’t let it go
- Can’t hold me
- Evolution
- Here i am
- Heaven only knows
おすすめの楽曲
Strangers
キーボードの美旋律からヴォーカル トニー・マーティンの雄叫びで幕を開けるオープニング曲。
あまりにパワフル&ドラマティックで早くも心奪われたって感じになります。
トニー・マーティンってこんなに表現力豊かでエモーショナルだったんだと今更ながら感心してしまいます。
ミーシャ・カルヴァンのギターサウンドは、とにかくレベルMAXの歪み具合。
音が潰れる一歩手前といった感じで、ディレイも効かせて厚みある力強いバッキングリフを刻み、ソロでは鋭い金切り音でシャープに切れ込んできます。
ギターの歪みに対角をなすように、アコスティックギターとキーボードがクリアなトーンでサイドを固めて壮大なスケール感を演出。
終盤からは変調してアコスティックギターによる「聴かせモード」に突入。
そのままエンディングを迎えます。
歪ませまくった後のアコスティックサウンドにギャップ感も倍増し、まるで短編ドラマの終演を思わせるエンディングとなっています。
Ready or not
はい、出ました。
2曲目のかっ飛ばしパターン。
本アルバムにおける早くもクライマックスでございます。
荘厳な美旋律キーボードのメロディラインに容赦なく降り注がれる歪みまくり潰れ寸前ギターサウンド。
それに負けじと魂のこもった熱帯性トニー・マーティンのヴォーカル。
そして歪み中和剤のように柔らかく美しいトーンで顔を出してくるアコスティックの音色。
思わず拳を握りしめ無意識に頭を振ってしまうほどにこれでもかと琴線にビンビン触れるてきます。
とにかく格好良く、圧倒的なまでにドラマティック、荘厳なスケール感、サビメロまでのエキサイティングな曲展開で、明らかに心拍数が上がってくるのが分かります。
トリッキーなギターソロは、ストラトのシングルコイル音(=イングヴェイを想起させる速弾き特有のサウンド)にしてはしっかりとした重厚感が保たれています。
さすがはクラシックをバックボーンにしているだけあって速弾きテクニックやメロディセンスも申し分のない圧巻のソロです。
終盤エンディングのギターソロも、これでもかと弾きまくりアームを多用。
放っておいたら何時間でも弾いてんじゃないの?位の勢いで一人速弾き祭りを繰り広げています。
少し残念なのがドラムですね。
おかずを入れる音数の多いドラミングは好みなのですが、結構無理があるおかずもあってチョッと食あたり気味。
バスドラの刻み方も変なクセがあり、何だか間抜けに聴こえる部分もあって楽曲の持つ緊張感を阻害してしまっている印象です。
Don’t let it go
せっかくなのでイアン・パリーのヴォーカル曲も記しておきましょう。
何故かライブ観衆の声から始まるミドルテンポの楽曲。
逆に楽曲の壮大感が凄すぎて、ライブでの再現性が全くイメージできなくなりましたが…。
いやぁ、それにしても相変わらず上手くてパワフルでやってくれますイアン・パリー。
さすがエレジーをメジャーに引き上げる原動力となっただけはあります。
声質はストライパーのマイケル・スイート系だと思いますが、太さ、厚み、表現力が段違い。
これだけ大げさ極まりないミシャ・カルビンの楽曲に、全く負けていない図太さ、存在感はさすがの一言です。
まとめ
セルビア出身のテクニカルギタリストという珍しい特徴を有したミーシャ・カルヴァンという大器。
楽曲の構成、展開力、スケールの大きなサウンド作りと2人のこの上ないヴォーカリストの参加も得たデビューアルバムで、一躍シーンに躍り出るかに思われましたが、惜しくも一発屋(にも届かないレベル?)でシーンから消え去りつつある状態に。
それでも本作は間違いなくハードロックシーンにしっかりと刻み込んでおく価値が十二分にある完成度と楽曲の良さが光る名盤だと思います。
アルバム制作には良きパートナーに恵まれつつも、マーケットプロモーション的にはあまり恵まれた環境にはなかったのでしょうか?。
そして、ライブでの再現性が想像つかない位にあまりに楽曲のスケール感が大げさすぎて、その後の活動が厳しかったのかも知れません。
やっぱり、HR/HMバンドは地道な草の根ライブ活動でファンを獲得していくのが大事ということでしょうか。
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音も良いですしね~!。
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