Praying Mantis / To the power of ten NWOBHMの泣きメロ総合商社

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Praying Mantis / To the power of ten レビュー

前作の最高傑作を超えられるのか? 真価問われた4枚目アルバム

NWOBHMを生き抜いてきたバンド達の中には、日向の道を歩んできたデフ・レパードアイアン・メイデンと言ったメジャーバントと、今回ご紹介するプレイング・マンティスのように運命のいたずらとも言える日陰の道を歩んできたバンドが存在します。

「泣きメロ総合商社」の異名を誇り(私が勝手に言ってるだけですが)、ツインリードによるメロディアスな楽曲を次々に輩出するも、セールス的には成功を収めることが出来なかった不遇の実力派バンド。

「Praying Mantis」

「To The Power of Ten」は1995年にリリースされたプレイング マンティス4作目のアルバムです。

1993年リリースの最高傑作「クライ・フォー・ザ・ニュー・ワールド」で劇的な復活を果たしてから2年。

トロイ兄弟率いる叙情派、メロディアス、ドラマティックサウンドが前作を凌駕するパワーを引っ提げて再びシーンに帰ってきました。

PRAYING MANTIS 【最高傑作】 A CRY FOR THE NEW WORLD
この記事では、1993年リリースのPRAYING MANTIS 3枚目のアルバム「A CRY FOR THE NEW WORLD」のレビュー・おすすめ曲を紹介しています。新ヴォーカリストに待望の実力派コリン・ピールを迎え入れ、原点回帰の正統派メロディアス・ヘヴィメタルの完成形を構築したプレマン史上最高傑作です。

 

驚きのゲイリー・バーデン加入!

本作の最大のトピックは何と言ってもヴォーカルのゲイリー・バーデンの加入。

言わずと知れたマイケル シェンカー グループの「あの」もっこりゲイリーです。

MSG時代にはヘタウマ、ダミ声、どもり気味など言われ放題の面もありましたゲイリーですが、何と言ってもその知名度、注目度は抜群です。

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音楽以外のプロモーション、マネジメント面での不遇によりその活動が制約され続けてきたバンドにとって、この上ないビッグ ネームなフロントマンの加入効果は計り知れません。

前作クライ フォー ザ ニュー ワールドで透明感のあるハイトーンボーカルを披露したコリン ピールは、アルバム制作終了後に「ミュージカルの道に進む」とまさかの脱退。

プレマンの抒情的な楽曲に見事にマッチした声質でライブでのパフォーマンスに期待が高まっていた矢先だっただけに「目が点」状態になってしまったのを思い出します。

またしても迷走してしまうのかプレマン...。

しかし、そんな杞憂も吹き飛ばすに余りある朗報がゲイリーの加入でした。

元々湿度(湿気?)が高めのゲイリーの歌唱は、叙情派プレマンの楽曲に見事に融合し、次々とこれでもかと泣きメロの波状攻撃を畳みかけてきます。

 

何とかならなかったのか… ジャケットデザイン

お世辞にも格好良いとは言えないアルバム ジャケットのデザインは、(伊藤政則氏のライナーノーツによれば)ミケランジェロの絵をヒントにした「善の手」と「悪の手」という人間の持つ2面性を象徴したものだそうです。

プレマンと言えばやはり伝説のデビュー作「Time Tells No Lies(邦題:戦慄のマンティス)」のジャケットデザインがあまりに有名。

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ロドニー・マシューズによるインパクト絶大なカマキリのアートワークは、これからも永遠にそのデザイン価値を保持し続けていくことでしょう。

それなのに…。

それなのに…。

こ、この「ちょっと美術が得意で先生に褒められて、調子に乗って書いてみた中学生の絵」のようなジャケットデザインは何なのでしょうか…。

いやー、もうちょっと他に何かあったでしょうーって感じですが...。

これだったら、巨大なバンドロゴのみの方がまだましなような気が…。

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同胞のアイアン メイデンがリリースの度にアルバムジャケットでも進化とセンスをブラッシュ・アップさせ続けている事との落差が半端なさすぎです...。
(でもこんなところも逆に応援し続けたくなる所以かもですね?)

因みに、2022年にリリースの最新作は結構いい感じです。

PRAYING MANTIS / KATHARSIS 真価の問われる進化作
この記事では、2022年1月にリリースのPRAYING MANTISの12枚目のアルバム「KATHARSIS」をレビューしています。大仰なタイトルとジャケットデザインとは裏腹に振り幅全開でハードポップ路線へと突き進んだバンドの真価が今後問われます。

 

メンバー・収録曲

【メンバー】

  • ヴォーカル: ゲイリー・バーデン
  • ギター  : ティノ・トロイ
  • ギター  : デニス・ストラットン
  • ベース  : クリス・トロイ
  • ドラム  : ブルース・ビスランド

 

【収録曲】

  1. Don’t Be Afraid of the Dark – 5:33
  2. Bring on the Night – 4:19
  3. Ball of Confusion – 4:57
  4. Welcome to My Hollywood – 6:05
  5. Another Time, Another Place – 6:58
  6. To the Power of Ten – 4:36
  7. Little Angel – 4:16
  8. Victory – 6:46
  9. Only the Children Cry – 4:28
  10. Night and Day – 3:49
  11. Angry Man – 3:56

 

おすすめ楽曲

Don’t Be Afraid of the Dark

どんなバンドの新譜でも期待と不安が入り混じるオープニング曲。

そんな不安を見事なまでにプレマン節でねじ伏せてくれる渾身の楽曲。
良かったとホッと胸をなでおろしたプレマン節の健在ぶりです。

どのようにフィットするのか不安しかなかったゲイリー・バーデンのヴォーカルも、この一曲で「大丈夫」の太鼓判を押せるほどのマッチング感。
まぁ、いい加減聴き慣れちゃって、あまり多くを望まなくなったというのも正直なところではありますが…。

 

Bring on the Night

続く2曲目も容赦なくプレマン節ともっこりゲイリー節の波状攻撃を仕掛けてきます。

どこかMSGを髣髴とさせるメロディラインに、不思議な懐かしささえ感じてしまいます。

MSGのアルバムにそのまま入れても全く違和感なく受け入れられそう。

そう聴こえてしまうのも、ゲイリーのボーカルの灰汁の強さに由来するものかもしれませんね?。

ツインギターが奏でる泣きメロは、かくあるべしと言わんばかりのツボを押さえた教科書通りの単音フレーズ。

泣きメロ総合商社が大量生産してくる琴線刺激フレーズでファンは大号泣必至です。

 

Welcome to My Hollywood

4曲目にクレジットされた本曲で、アルバムは第一ピークを迎えます。

前作の流れを踏襲したメロディアスかつ適度な疾走感のあるプレマンの音楽性が見事に凝縮された傑作です。

コリン・ピールに歌わせたら更に完成度、表現力は増幅するのだろうなぁ?
などと敵わぬ思いもよぎりつつ、ゲイリーの一生懸命な歌唱に思わず聴き入ってしまいます。

一刻も早くライブで拳を突き上げたい衝動に駆られる力強い楽曲ですね。

 

Victory

アメリカンマーケットを意識したか否かは不明ですが、アメリカンロックそのもののメロディと歌詞は映画の挿入歌になってもおかしくない程。

NHKのスポーツニュースのバックに流すのにはうってつけのような、爽やかな爽快感が得られます。
プレマンらしからぬ新境地への挑戦と言えるでしょう。

ライブでも照明を明るめにして盛り上がり、オーディエンスとの掛け合い、大合唱となりました。

 

Only the Children Cry

9曲目にして、アルバムは津波に注意の最高潮を迎えます。

間違いなく本作の中での最高傑作楽曲。

プレマン史上で考えても屈指の名曲がここで満を持して炸裂します。

既に来日記念盤ミニアルバムで、世に知らしめられた名曲のゲイリー版での再収録。
(ヴォーカルは既にコリン・ピールではなっかたような記憶が…)

泣きメロからのイントロ、リフの構成は、ヘヴィメタル史上にも確実に刻まれるでしょう、魂を揺さぶられる展開ですね。

遠い未来の世界で、本曲がクラシック音楽として中学校の音楽の授業などで語り継がれているのを信じてやみません。

 

まとめ

1981年発表の伝説の名作「Time tells no lies」から約15年もの間、NWOBHMの中心に君臨する実力を持ちながらも、不遇な運命に翻弄され続けてきたプレイング マンティス。

1980年代をともに戦ってきた戦友とも言えるゲイリー・バーデンを新たなヴォーカルとして迎え入れ、新生プレマンとしての復活を期す本作にかける思いは並々ならぬものと想像できます。

ヨーロッパの血脈の中に流れる叙情性を基盤に、ドラマティックで哀愁溢れるメロディラインで構築された楽曲群は、トロイ兄弟の強固な意志と情熱の結晶となって聴く者の脳内を埋め尽くしていきます。

これぞ、泣きメロの総合商社。
メロディアス百貨店。
まるで津軽三味線のごとく幾重にも重なり合いながら、怒涛のように押し寄せてくるプレマン節に、ふと気が付けば思わず拳を突き上げている自分がいます。

 

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