この記事の概要
ジャンルを問わず、音楽を聴いていると「楽器が弾けたらいいのになぁ~」とか「ヴォーカルで思いっきり歌ってみたいなぁ~」などと思うことがありますよね。
私は中学生の時にDeep Purpleのリッチー・ブラックモアに魅了されて以来ギターを始めてコピーバンドの活動に明け暮れていました。
次第に、楽曲を聴く時に楽器それぞれのパートの音を追いかけながら聴く癖がついてしまい、ギター以外のパートのプレイにも思わず唸って感動してしまうことが多々あります。
基本的にギター以外の楽器は全くできないので、当時はバンド仲間の楽器を借りては練習の合間に遊びでプレイさせてもらう程度でしたが、ドラムだけはからっきしダメダメでした。
何がダメって、手と足をバラバラに動かすことなんて難し過ぎて私にはできましぇーんって感じ。
きっと必死に練習すればそれなりに叩けるようになったのかも知れませんが、あまりの自身のポンコツぶりに早々に諦めたのでした。
今回の記事では、そんな私がこれまでに聴いてきた楽曲の中で「この曲のドラム叩いてみたいなぁ~」「絶対自分では叩けないけど滅茶苦茶かっちょ良いなぁ~」と思った曲を時系列で記してみます。
基準はただ一つ、楽曲を聴いて「ドラムに心を奪われたかどうか」どうかだけです。
どうしても’80~’90年代の古いものばかりで、好みも偏っていますがご容赦を。
あくまで私個人の主観でチョイスしたものであり、各ドラマーとしての技量や人気度などとは無関係ですのでご理解頂き、共感して頂ける部分が少しでもあれば嬉しいです。
DEEP PURPLE / BURN
1974年リリースのDeep Purple 8枚目のアルバム「邦題:紫の炎」に収録のタイトル楽曲。
ドラムはイアン・ペイスですね。
初めて聴いた時はリッチーの鬼リフとともに、この鬼ロールのドラミングにはおったまげました~。
当時、ドラムの奏法など何も知らない私はこの高速連打を真似できるのは、16連打の達人プロゲーマー「高橋名人」くらいなのではないかと思ったほど。
でも、後に一音一音を細かく叩いているわけではなく、振動を利用したトリック(?)であることがバンド仲間の解説で判明。
そうだったのか!と騙された気分となりつつも、やっぱりこの忙し過ぎるモグラ叩きのようなプレイを曲と融和させて成立させていること自体が恐ろしい程に凄いと思うのでした。
KISS / LOVE GUN
1977年リリースの KISS 6枚目のアルバム「LOVE GUN」に収録のタイトル楽曲。
ドラムはピーター・クリスですね。
まさに絶頂期とも言えるタイミングでリリースされた本作には、本曲をはじめバンドの象徴的な代表曲が数多く収録されています。
そしてLPレコード盤で言うところのB面1曲目。
いきなりの不意打ちの銃撃を喰らった形で楽曲はスタート。
一度聴いたら絶対に忘れられないこの曲を聴いて、ドラムの真似事をしない人を探す方が難しいのでは?と思える程にドラムが印象的な楽曲ですね。
前作収録の「Hard Luck Woman」や、前々作収録の「Beth」などで、渋いハスキーヴォイスでヒット曲を連発させたピーター・クリスが、本作ではドラミングでかなり目立つ形となりました。
中盤のギターソロに合わせての連打は、誰もが一度は叩いてみたいと思う展開なのではないでしょうか。
RAINBOW / KILL THE KING
1978年リリースの RAINBOW 3枚目のアルバム「Long Live Rock ‘n’ Roll(邦題:バビロンの城門)」に収録の疾走チューン。
ドラムはコージー・パウエルですね。
いわゆる3頭政治時代と言われるロニー・ジェイムス・ディオ(Vo)、リッチー・ブラックモア(Gu)、コージー・パウエル(Ds)という、当時のハードロック界の「顔」が結集して作られた最強楽曲。
既に同じ3頭体制で創られた前作「RAINBOW RISING(邦題:虹を翔る覇者)」で成功を手中に収め、様式美ハードロックとは何たるかを体現して魅せたRAINBOW。
続く本作では、市場ウケを見据えた楽曲のコンパクト化が進んだ中での伝説の名曲登場でした。
これまた、まるでいきなり機関銃で不意撃ちされたかのような、リッチーのアルペジオの鬼連射で劇的に始まるオープニング。
それに負けじと一歩も引かずにコージーのドラムが渡り合い、両者煙の出そうな勢いで乱れ打ち状態に。
まさに、ボクシングで言うところの「足を止めての両者ノーガードの打ち合い」ですね。
様々なバンドで数多くの作品を遺してくれたコージーですが、個人的に本曲はコージー屈指のドラミングとして一票を投じたい鬼気迫るプレイだと思います。
IRON MAIDEN / RUNNING FREE
1980年リリースの IRON MAIDEN デビューアルバム「邦題:鋼鉄の処女」に収録。
ドラムはクライヴ・バーですね。
本作を初体感してしまったがために、ヘヴィメタルという音楽ジャンルの沼に首まで引きずり込まれてしまったと言っても過言ではない罪深きアルバム。
まさに喧嘩腰スタイル、あまりに攻撃的でスピーディながら、楽曲としての展開やメロディもしっかりと構築された作品には即死状態で虜となりました。
そして今回の企画でチョイスしたのは言うまでも無くこの楽曲。
クライヴ・バーというドラマーは、結局テクニック的には上手いんだかそうでもないんだか正直不明でしたが、一風変わったドラミングでオリジナリティに溢れていたことは間違いないでしょう。
前述の「KISS / LOVE GUN」もそうでしたが、この曲も「ドラムが全て」と言える数少ない楽曲の一つではと思います。
MSG / ARMED AND READY (LIVE)
1981年リリースの マイケル・シェンカー・グループのライヴアルバム「ONE NIGHT AT BUDOKAN(邦題:飛翔伝説)」に収録。
ドラムは再び登場のコージー・パウエルですね。
ワグナーのイントロに続き始まるのが、デビューアルバム「THE MICHAEL SCHENKER GROUP(邦題:神 帰ってきたフライングアロウ)」でもオープニングを飾る本曲。
今回チョイスした理由はと言いますと、スタジオ盤におけるサイモン・フィリップスのドラムと比べた時に「これ程までに格好良く印象が変わるものなのか!」と驚いたからです。
ハイハットの刻みを合図にお馴染みのギターリフが炸裂。
ヴォーカルが歌い出す直前のブレイクにかまされるコージーの激しいおかず。
スタジオ盤のサイモン・フィリップスのヴァージョンでは、何とも煮え切らない感じでつまらない印象でしたが、本ライヴヴァージョンでのコージーのこのおかずは「これぞハードロック」とも言えるような強烈な連打で滅茶苦茶格好良いですね~。
味変どころではなく楽曲の躍動感そのものを見事に変えた「この短いおかず」だけが、何と今回のチョイス理由なのでした~。
(細け~っ!)
RAINBOW / I SURRENDER
1981年リリースの RAINBOW 5枚目のアルバム「DIFFICULT TO CURE(邦題:治療不可)」のオープニング曲として収録。
ドラムはボビー・ロンディネリですね。
本作からヴォーカルが白スーツのグラハム・ボネットから貴公子ジョー・リン・ターナーに交代しての1作目。
ジョーの切なすぎる哀愁ヴォーカルが冴えわたり、キャッチーなメロディが融合した究極ハードポップです。
この楽曲のチョイス理由はズバリ、サビメロで「スパーーーーン!」と楔のように撃ち込まれるスネアのショット。
よくあるシンセドラムの音色に近いような、切れ味抜群のショットが堪らなく快感を引き寄せます。
更に、楽曲後半に入ると切ないピアノ音がキンコンカンコンとサビメロに被さってくる中、このスネアのショットはより熱量が増し増しな感じになっていきます。
Y&T / OPEN FIRE
1982年リリースの Y&T 4枚目のアルバム「BLACK TIGER」に収録。
ドラムはレオナード・ヘイズですね。
Y&Tと言えば泣きメロ人間国宝デイヴ・メニケッティのギターと相場は決まっていますが、これについて語り出すと終わらなくなりますので、今回は必死に堪えて封印しドラムのみの言及といたします。
レオナード・ヘイズと言えば、後に「ルックスの悪さ」でバンドをクビになってしまうという悲しい伝説があまりにも有名ですが、その小気味よいドラミングには定評があり個人的には愛してやまなかったドラマーの一人です。
ワンバスに拘った独特のバスドラの刻み、ちょいちょいかましてくる手数多めのおかず、そして何よりも本曲で顕著に体感できるタイト感が最大の魅力ですね。
オープニングに相応しいスピーディな本曲ではかなり前のめりに突っ走りつつも、決してタイト感は失わずにカチッと型にはめてくるあたりは、まさにいぶし銀の技師と言えるでしょう。
ACCEPT / RESTLESS AND WILD
1982年リリースの ACCEPT 4枚目のアルバム「RESTLESS AND WILD」に収録のタイトル曲。
ドラムはステファン・カウフマンですね。
私のACCEPTとの出会いは当時のコピーバンドのVoメンバーに聴かせてもらった本作。
彼の最大の推し曲はバンドの代名詞とも言える「FAST AS A SHARK」だったのですが、あまりに強烈なウドの金切り声と、スラッシュ一歩手前のおどろおどろしいズンドコ楽曲にアナフィラキシーショック気味の拒絶反応となりました。
途中、ドヤ顔で「どう?」と感想を求めて来る彼に対して返事に困り、何とか「す、凄いな」と絞り出すのが精一杯。
でもそのまま聴き続けて、間髪入れずの2曲目に登場してきたのが本曲でした。
こ、これは…。
後に軍隊メタルと称される最大の要因楽曲とも考えられる程の、完璧に武装された王道のリフとタイトなドラム。
彼には申し訳なかったのですが、初聴きした時点では推し曲よりもこちらの楽曲方が何倍も格好良く、強烈なインパクトを喰らってしまったのでした。
とにかく言語化のしようがない程に、サウンド、プレイの全てがタイト!。
TOTO / ROSANNA
1982年リリースの TOTO 4枚目のアルバム「TOTO Ⅳ(邦題:聖なる剣)」に収録。
ドラムはジェフ・ポーカロですね。
ドラムなんて全く叩けないくせに「ロックドラマーの必聴盤」とも言われる本作、中でもこの曲の「凄み」はひしひしと感じてしまう程に、本物を実感できるドラミングですね。
精密過ぎるがゆえにややもすると人間味を感じられない程にクールなリズム感。
代名詞とも言える本曲での「ハーフタイムシャッフル」は、バンドメンバーのドラム担当S君も頑張って練習してましたが、このノリと跳ねを常に一定に保つのには相当苦労してました。
力任せの武闘派ドラマーによるバスドラ連打よりも、このテンポで研ぎ澄まされたグルーヴ感を出す方がよっぽど難しいのでしょうね。
LOUDNESS / MILKY WAY
1984年リリースの LOUDNESS 4枚目のアルバム「DISILLUSION(邦題:撃剣霊化)」に収録。
ドラムは樋口宗孝ですね。
昭和の昔に「クイズ ドレミファ ドン!」というTV番組がありましたが、この曲のドラムイントロは一聴しただけで正解を答えられる独特のリズムです。
キャッチーな印象のドラミングながらこれまた相当の技量を要するドラマーとしての登竜門的な楽曲と言えるのではないでしょうか。
共に奮闘するリズム隊として山下昌良の奏でるバカテクのベースラインも聴きどころ。
私のようなど素人も、思わず適当に遊びで叩きたくなるキャッチーな楽曲の最高峰の位置付けです。
VAN HALEN / DREAMS
1986年リリースの VAN HALEN 7枚目のアルバム「5150」に収録。
ドラムはアレックス・ヴァン・ヘイレンですね。
VAN HALENと言えども、今回はギターに関しては一切封印、語りません…。
我慢、我慢…。
それにしても、「兄貴」のドラムはデビュー作の時から一貫してスッコーン、スッコーンと実に独特の跳躍力がありますよね~。
そう、このスネアの抜けの良いサウンドこそが「兄貴」のドラミングの最大の魅力です。
全身運動神経のようなバネ感が凄いというか、聴いてて本当に気持ちよくなれます。
当時物議を醸したキーボード不要論者を黙らせるイントロからぶちかます爽快感と、デイヴ絶対論者を沈黙させたサミー・ヘイガーの突き抜け感。
それらを隙間なく継ぎ合わせて楽曲としての推進力、跳躍力を最大限に引き出している「兄貴のドラミング」はやはりVAN HALENというバンドにとっては欠かせないものですね。
CHEAP TRICK / THE FLAME
1988年リリースの CHEAP TRICK 10枚目のアルバム「LAP OF LUXURY」に収録。
ドラムはバン・E・カルロスですね。
以前にこの曲のドラミングについてTwitterでつぶやいたところ、フォロワーさんから「バン・E・カルロス」が叩いているのはドラムではなく「太鼓(良い意味で)」だというリプを頂きました。
まさに腹落ち納得のご意見でした。
そう、見た目の風貌通り飄々として一切派手なプレイはしませんが、ドラムとは何たるかを聴く者に教示してくれているかのような「太鼓のリズム」。
本曲においてもその究極の太鼓表現とも言いたいくらいに、タメにタメた一発一発のスネアが心に沁みてきます。
これ以上タメると単なる下手くそポンコツドラマーと言われかねない、まさに紙一重、土俵際の徳俵に足が掛かった状態で放たれるスネアのショットは「太鼓師」ならではですね。
(別にピンチの状態じゃないんですが…。)
そして、その音色もまた余計な調味料など使用せずに素材本来の持つ旨味を十分に味わえるシンプルながら奥が深い「音抜け」の良さ。
何とも言えない後引く美味さと言いましょうか、ずー---っと聴いていたくなるドラミングです。
RIOT / MARYANNE
1990年リリースの RIOT 7枚目のアルバム「THE PRIVILEGE OF POWER」に収録。
ドラムはボビー・ジャーゾンベクですね。
1988年の起死回生の最高傑作「THUNDERSTEEL」から加入の「職人」ドラマーであるボビー。
前作に続き、RIOTに劇的な変貌を産み出した貢献度は大きいですね。
ホーンセクションや長めのSEなど大胆不敵な新しい試みには賛否両論ありましたが、ボビーの職人芸ドラミングには満場一致の大拍手となったのではないでしょうか。
特に個人的には本曲におけるタメ感と粘り気を感じつつも抜けの良いスネアの音色が悶絶級に琴線を刺激してきます。
素人風情の生意気な私見で恐縮ですが、あんまり難しいテクニックとかスピードとか追求する前に、基本となる一発一発のスネアの音にもっと拘った方が良いのではと思ってしまうアマチュアのバンドを良く見かけます。
特にライブハウス等での狭い空間でひたすら我が物顔で引っ叩いている人がいますが、完全にバンドとしての音のバランスが崩れていて、なおかつその音色は大抵ブラスバンドのパーカス隊のような安っぽい似通った感じの音になっていて残念…。
HELLOWEEN / SOLE SURVIVOR
1994年リリースの HELLOWEEN 6枚目のアルバム「MASTER OF THE RINGS」に収録。
ドラムはウリ・カッシュですね。
80年代リリースのアルバム「守護神伝」の2枚で絶頂を極めたHELLOWEENも、その後シーンの潮流変化に飲み込まれて迷走。
当時、その後の迷盤への投資で痛い目を喰らい期待値ダダ下がりの状態の中で購入した本作でしたが、これが想定以上に素晴らしく見事にやられました。
本来の方向性を取り戻した楽曲としてのクオリティもさることながら、最も衝撃を受けたのが新加入のドラマー「ウリ・カッシュ」の本曲におけるドラミング。
叩いてみたいなどとは口が裂けてもほざけない程の超絶の乱れ打ち状態は、まるで我が家の周囲に次々に雷が落っこちてきて、とうとう次は我が家なのか…と最後の生存者となったような感覚に。
そしてダイナミックな緩急のメリハリは、まるでマニュアル車のギアチェンジのようにスコンスコンとシフトチェンジされていき、ダブルクラッチのようなシャレオツなおかずにも思わずニヤリとしてしまいます。
AXENSTAR / THE FALLEN ONE
2005年リリースの AXENSTAR 3枚目のアルバム「THE INQUISITION」に収録。
ドラムはポンタス・ヤンソンですね。
本記事での最後のご紹介曲となります。
時系列で最後が2005年とは…。
如何に頭の中がアップデートされていないかが露呈してしまいますね。
シーンの変化に嫌気がさして、途中約10年くらいブランクと言うかあんまり新譜を聴いていなかった時期があったのも大きいですが…。
でも年齢とともに感覚が鈍ってきたのか、80~90年代のような「心に突き刺さる」ような衝撃曲に最近でもあまり出会えていません…。
ということで今回のラストを飾るAXENSTARの本曲ですが、これはもう笑っちゃうくらいに凄い2バスの刻みが選択ポイントですね。
ドットコ、ドットコとまるで暴れん将軍が馬に乗ってやってきたかのようなバスドラには本当に驚きました。
しかもそれを極自然にイキらずにやってのけているのが凄いです。
思わずずーっとバスドラの音だけ追っかけながら聴いてしまう自分がいます。
このバンドの最大の魅力である昔ながらのコテコテのクサいリフメロと、これまでに耳にしたことが無かったような(個人的には)新感覚なドラミングという、新旧の要素がマッチして放たれるアクセン臭に一発でやられてしまったのでした~。
まとめ
今回は(いつも?)自身の好みだけをひたすら前面に押し出させて頂きまして、「思わずドラムが叩いてみたくなる」「ドラムにひたすら心奪われた」楽曲15選をご紹介させて頂きました。
記事中にも記しましたが、ギターがチョーキングだけで聴く人の心を鷲掴みするように、ドラムもスネア一発の音色だけで琴線を揺さぶることができるのではと個人的には思っています。
限られた狭い範囲での個人的主観によるチョイスですので異論は当然多々あろうかと思いますが、少しでもお楽しみ頂けましたなら嬉しいです。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。