DEF LEPPARD / PYROMANIA レビュー
NWOBHMバンドの中での異質な存在感
1983年リリースの DEF LEPPARD3枚目アルバム「Pyromania(邦題:炎のターゲット)」。
1970年代末~80年代初頭におけるNWOBHMムーブメントの範疇で語られることが多いDEF LEPPARD。
個人的には時期こそ同じくして台頭してきたものの、IRON MAIDENやSAXON代表される同ムーブメントのバンド群とは少し異質な存在感を感じるバンドでした。
どのように形容表現すれば良いのか難しいですが、当時のNWOBHMムーブメントのバンド群が持っていた(良い意味での)湿気、泥臭さ、アンダーグラウンド感が一切感じられなったのです。
他のバンドと違って、DEF LEPPARDだけは楽曲、サウンド、ルックスどれをとっても、どこか垢ぬけている印象。
ジメジメとした湿り気を感じさせないカラっと乾いたイメージ、そして何よりも「オシャレ」な感覚を常に醸し出していたように思います。
かといって、後に勢いづいてくるLAメタル(ヘアメタル)のようなチャラチャラ感やわざとらしさは無く。
何とも形容しがたい「常に洗練されたスマートな雰囲気」とでも言うのでしょうか、そんな不思議な印象のバンドでした。
IRON MAIDENやSAXONを聴きながら熱く拳を突き上げる最早信仰にも近いトランス感覚。
パンキッシュで下品と言われても仕方のない歪みまくりのギターサウンド。
それらとは一味違う異質な存在…。
ふと我に返ると、DEF LEPPARDは川の向こう岸で涼し気な顔でミドルテンポ中心の楽曲を余裕をかまして奏でているといった感じ…。
エフェクトかけまくりのギターサウンド、クセの強いヴォーカルの声質。
「テクとか興味ないんで…」と憎らしいほど冷静に言いそうです。
この時代に流行した造語「新人類」というイメージがぴったりなバンド。
そんな感じがしたのです…。
「売れるHR/HMアルバムとは」を解く方程式のような作品
今想えば、前述の「不思議な感覚」は偶然の産物などでは決してなく。
アメリカのマーケットでの成功を意識して計算しつくされたマーチャンダイジングによる必然だったように思います。
そしてその計算高い戦略は本作3枚目で集大成のように見事に具現化。
DEF LEPPARDというバンドを他のNWOBHMバンドとは明確に差別化させ、オリジナリティを顕在化させることに成功しました。
まさに「売れるHR/HMアルバム」を計算通りに作り出すことに成功したという感じですかね。
憂いを含ませた哀愁のメロディラインを、必要以上に湿気を帯びさせずサラリとお洒落に仕上げていく楽曲作り。
カリスマ化させたギターヒーローを看板とするようなテクニカル路線とは無縁。
最大公約数ウケするメロディの冷静な落ち着いた演奏。
アルバム全曲がシングルカット可能な位に驚異的に練り上げられた完成度とサウンドプロダクションが光ります。
それらは唯一無二のDEF LEPPARD固有のアイデンティティーとなって確立されていきました。
スコアチャート
バンドメンバー・収録曲
【メンバー】
- ヴォーカル: ジョー・エリオット
- ギター : スティーブ・クラーク
- ギター : フィル・コリン
- ベース : リック・サベージ
- ドラムス : リック・アレン
【収録曲】
- Rock rock(till you drop) – 3:52
- Photograph – 4:12
- Stagefright – 3:46
- Too late for love – 4:30
- Die hard the hunter – 6:17
- Foolin’ – 4:32
- Rock of ages – 4:09
- Comin’ under fire – 4:20
- Action! not words – 3:52
- Billy’s got a gun – 5:27
おすすめ楽曲
Photograph
Foolin’
哀愁MAX状態から始まるヴォーカルメロディは、サビメロに到達する遥か手前の地点で完全に泣きのタコメーターが振り切られてしまいます。
涙腺決壊警報~避難勧告が出されるレベルですのでホント要注意です。
Comin’ under fire
まとめ
1980年代のNWOBHMムーブメントの中の1バンドという「10羽一からげ」のように括られがちなDEF LEPPARD。
しかし彼らの奏でる叙情性や泣きメロに富んだ楽曲と緻密に計算されつくしたマーケティング戦略は他の同世代のバンドは明確に異質なものでした。
NWOBHMにおいて語られることの多かった「泥臭さ」「正統派」「パンキッシュ」などといったキーワードとは無縁。
どこか垢ぬけていてオシャレな感覚(ルックスはもちろん楽曲としても)を見事にブランディングさせることに成功した周囲のマネジメント手腕も流石ですね。
そして、最後に忘れてはならない点は、ドラムのリック・アレンの不幸な事故を、バンドとして一丸となって乗り越えていった彼らの結束力、男気。
キャリア絶頂期というタイミングにドラムがよりによって片腕を失うというアクシデント…。
活動不能状態に陥ってもひたすら仲間の復帰を信じて待つという、何とも泣けてくる友情、心意気。
まさに英国紳士達の真髄をみた感じですね。
DEF LEPPARDファンのバンドに対する思い入れ、忠誠心もより一層高まりました。
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